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この同棲がバレたら(社会的に)死ぬ  作者: 平光翠
お坊ちゃまとの邂逅編
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【おでかけ】声フェチ同士の明るい密会!?【夏休み/JK】

「おそくなってごめん~!!」

「あ、ほのかさん、全然大丈夫ですよ。待ち合わせ時間の前ですし」


 夏休みということで、今日は優里ちゃんとデートだ。前に真琴が案件配信で潰れそうになっていた時に、アドバイスをくれたお礼も兼ねているけど、純粋に私が遊びたかったという理由の方が大きい。


「暑いね~!! どっか涼しいところ入ろうか?」

「そうしましょうか」


 チェックのスカートを翻しながら、私の後ろを着いてくる。お昼の時間からは少し外れているためか、近くのファミレスには人が少なかった。

 私はパスタとケーキとドリンクバー。優里ちゃんは小さいパンとドリンクバーを注文した。


「優里ちゃんは、夏休み何してた?」

「まだ始まったばかりなので、特に何も。あ、課題はもうすぐ終わりますね」

「え、早くない!? 私、全然やってないよ~」


「アハハ。マコトくんの雑談配信見ながらだと、スイスイ進むんですよ。とくに、一昨日はらんちゃんとマコトくんのホラゲーコラボのおかげで、めちゃくちゃ進みました!!」


 私はまだ見れていないが、その配信については知っている。今日、帰ったら、マコトと一緒に見る予定である。


 ……ホラーは一人では見れないからしょうがないよね。


「あ、そういえば、マコトくん5万人超えましたよね」

「うん。記念配信やるって言ってたね」


 具体的にいつ頃とまでは話してなかったが、配信者友達のヴォイドさんやらんさん、レナちゃんとのスケジュール調整に難航しているらしい。とくに、プロゲーマーのヴォイドさんは、あまり時間が取れないので、どうしても都合が合わないと言っていた。


「らんちゃんもそうですけど、個人だと全部一人でやらないといけないから、大変ですよね」

「……私はよく分からないんだけど、やっぱりそうなの?」


「らんちゃんの場合は、切り抜きと動画編集は別な人に任せているらしいですよ。グッズの販売も年に1回ぐらいしかやらないですし」

「マコトって全部一人でやってるの?」


「多分、そうだと思います。昨日の話し方だとそんな感じでしたね。配信者って、切り抜きとかは人任せなこと多いと思うんですけど、こだわりが強いんでしょうか?」


 切り抜き――配信の面白いシーンを切り取って、動画としてアップロードしていることは知っていた。いつもその作業が大変だと愚痴をこぼしていたし。でも、不思議と嫌そうではない。

 ……真琴に限って、こだわりが強いようにも思えないんだけど?


「マコトって、どうして、切り抜きを人に任せないのかな?」

「こだわりのある配信者とかは、全部自分でやってますよ。でも多分、マコトくんの場合は、人に任せられるコミュ力が無いんだと思います」


 パンをちぎりながら、軽い感じで言う。けっして馬鹿にしているわけでは無く、むしろ共感するかのようにしみじみといった雰囲気だ。まぁ、少し納得した。


「動画も切り抜きも全部自分でやってると、長い配信が出来ないですからね。らんちゃんみたいに耐久配信とかが出来ると、もっと視聴者増えると思うんですよね~」

「え、そうなの? 短い方が見やすくない?」


「配信時間が長いってことは、純粋に露出の時間が長くなりますからね。特に今は、流し見とか他のことをやりながらって人が多いと思うので。私も課題やりながらですし」


 優里ちゃんが言うのは、短い配信や短い切り抜きが多いと、スマホを触る時間が長くなってしまって、ながら見している層から倦厭されてしまうらしい。


 倍速勢やスキップ勢など派閥があることも教えてもらった。

 私には分からない世界だが、帰ったら真琴にアドバイスしてあげよう。


「まぁ、でも、推しがやりたいように配信してくれるのが一番ですけどね」

「その気持ちは分かるな~。少し前まで、辛そうに配信してたし。昨日とかはすごく楽しそうで良かった」


「やっぱり、イケボは健康な状態を聞くのが一番ですね。……弱ってる姿はそれはそれで萌えるんですけど」

「ごめん、それはちょっとわからない」


 どうやら優里ちゃんは、私よりも先を進んでいるらしい。


「あ、そういえば、イケボで思い出したんですけど」


 優里ちゃんがグラスを置いてスマホを操作する。傾けて見せられた画面には見覚えのあるキャラクターが表示されていた。たしか、Vtuber(?)の『レウス』という人だ。


 画面越しなのにまっすぐ見つめられているかのような力強い瞳と自信に満ち溢れた笑みを浮かべている金髪オールバックの青年。その特徴的な外見は一度見れば忘れられない。……あとは真琴と一緒に見てたから覚えていたって言う理由もある。むしろそっちの方が大きい。


「この人がどうかしたの?」

「私の新しい推しで、ほのかさんにおススメしたいと思ってたんです」

「一応見たことあるよ。初配信だけ」


 私が言うと、彼女は目をキラキラと輝かせる。興奮した様子で配信を見た感想を求められるが、正直、インパクトの強い人だなぁとしか思わなかった。あとは、配信中のマコトと同じで声がカッコイイ人だなぁとしか……。


「そうですよね!! すっごくかっこいい声ですよね!!」

「そ、そうだね……?」


「優里ちゃんってマコトのことが好きなんじゃないの?」

「声は好きですよ。でも、レウスくんの方が面白いじゃないですか。とくに使用人のセバスチャンとの辛みがすっごく面白くって……」


 私にはよく分からない感覚だった。

 最初に好きになったのはマコトなのに、それ以外を好きになるなんて。浮気だというなら、少しは気持ちが分からなくもないが、曰く、そうではないらしい。


 ……余計に分からない。やっぱり、私は普通になれないのだろうか。


 私が、あまりレウスに興味無さそうな反応を繰り返していると、次第に話題は移っていく。課題で難しかった問題や、夏休み明けのテストが憂鬱だという話。あとはマコトがより有名になるためにはどうすればいいかという話。

 久しぶりに会ったということもあって、かなり長い時間話し込んでしまった。


「優里ちゃん、今日はありがとうね!! 夏休み中、もう一回遊べたらいいな」

「もちろんです。ほのかさんに刺さるようなイケボ配信者見つけておきますね!!」


 張り切った様子で言い残していったが、私は真琴以外を好きにならない気がする。……マコトより面白いからレウスが好き。だけどマコトの配信も見る? うん、やっぱり分からない。

 スキに好き以外の理由なんてあるだろうか。面白いとか、声が良いとか、そんな理由が無いと人を好きになっちゃいけないのだろうか?


「……考えても分かんないし、真琴に教えてもらおうかな。早く帰ろ~っと」


 心に穴の開いた感覚。人との違いに懊悩しながら、愛する真琴の待つ家に帰った。

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