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この同棲がバレたら(社会的に)死ぬ  作者: 平光翠
お坊ちゃまとの邂逅編
44/58

【まったり打ち上げ】色々大変だったけどお肉食べて忘れよう!!【焼肉/百合デート】

「これにて配信を終了とする。この配信は『あなたのための神天皇グループ』の提供でお送りした!!」


 Twitterで話題になっていた男性Vtuber『レウス』の初配信を見ていたが、とても初めてとは思えないほど面白かった。イヤホンを外して思わず拍手をしてしまう。

 声色や喋り方も印象深く、内容もキャラクター性とマッチしていて、引き込まれる魅力があった。


 比べる間でもないが、私の初配信より断然面白い。


「今の人、面白かったね?」

「うん、声も少しマコトに似てたし、なんか色々とすごい人だったね」


 そこまで低い声じゃない。と否定しようとしたが、配信をしている時の私の話をしていると気づいて、少し納得した。さすがにレウスほど声が大きいわけでは無いし、話し方や声圧は似ていないけれど。


 かっこいい声という意味では似ているかもしれない。


「ねぇ、それより、もう予約の時間なんじゃない?」

「うっそ、あ、ヤバい時間!! なんでもっと早く言ってくれなかったの?」

「だって、時間大丈夫? って聞いたら、配信見終わってからって言ったじゃん」


「……悪いの私か?」

「うん、そう。あと、本当に早くして。時間遅れちゃう」


 案件も(一応)終わって、最初に提示された金額は予定通り振り込まれることになった。と言っても、掛けた労力と比べると釣り合っていないような金額だ。

 まぁともかく、多少なりともお金がもらえるとなったことでお祝いに焼肉屋に行こうという話になったのだ。


 よほど楽しみなのか、口調は怒っている風だが笑みが隠しきれていない。その様子があまりにも可愛らしくて、思わず抱きしめてしまう。けれど怒られることも無く、むしろ、よりうれしそうな声音で「だから早くしてってば~」と零す。


「あーあ、頑張ってよかったな~」

「……いや、あんまり良いとは言えないと思う」


 たった数日とは言え、忙しさにかまけてほのかと話せていなかった分、取り戻すように彼女を強く抱きしめる。思い返してみれば、配信を始めてからは、お互いに色々と環境が変わって、きちんと話す機会が無かったような気もする。


 ほのかとぶらぶらとイチャつきながら焼肉屋まで向かった。


「お肉楽しみだね~。いっぱい食べよ!!」


 何も言うことなく、隣に座るとメニューを見せてくる。目をキラキラと輝かせながらそれぞれのお肉を指さして、はしゃいでいた。2人きりで焼肉に来るのは初めてかもしれない。


「ほのかって、友達と焼肉とか来るの?」

「うーん、行かないかな~。カラオケとか、サイゼとかなら行くけど」


 私が高校生の時、クラスメイトの陽キャ男子たちは、何かにつけて焼肉に行きたがっていた。おそらく誰とでも仲いいであろうほのかも、それに合わせているのかと思ったら、そうでもないらしい。


 私? そもそも友達と食事に行くことが無かったよ!!


「真琴は、誰かと焼肉きたことあるの?」

「家族とお祝いの時……ぐらいかなぁ。あ、一回だけ……いや、何でもない」

「元カノと来たって? ふ~ん。どの時の彼女かな~」


 濁した言葉の先を捉えられてしまう。何も言うことが出来ないでいると、クスクスとからかうような笑みを浮かべて、お肉を注文し始めた。


「真琴もカルビ食べる?」

「……脂っこいのはちょっと。タンが食べたい」

「ハラミとか柔らかくていいんじゃない?」

「私のことお婆ちゃんだと思ってる!? そこまで硬いものに配慮しなくていいよ!!」


 固いお肉が苦手ということを知っているので、頑張って柔らかそうなお肉を探してくれているが、そこまで食べれないわけでもない。さすがに肉の筋ぐらいは噛み切れる力はある。


「ほのか~、お肉焼いて~」

「OK、任せて!! ……なんで野菜を別な皿に入れたの?」

「焼肉屋なんだから、肉だけ食べればよくない? 野菜が食べたかったら焼野菜屋に行けばいいし」


「焼野菜屋って何!? あと、バランスよく食べようよ!!」


 トングをカチカチ鳴らしながら、呆れた様子で私の口にキャベツを突っ込む。肉と味の濃いタレの絡んだキャベツはとても美味しかった。


「ほのかがあ~んしてくれるなら野菜も食べるよ」

「今日はわがままだね!? あと、いつもより甘えん坊だ」


 なんだかんだ、私もテンションが上がっているらしい。ただ残念なことに、店員さんが新しいお肉を持ってくるたびに、陰キャが発動して委縮してしまうけれど。ほのかと一緒じゃなかったら、絶対に来れなかったと思う。


「なんかアレだね。付き合う前に戻ったみたい」

「……私達が付き合う前ってこんな感じだった?」


「ほら、ほのかのカッコつけも、今よりは酷くない感じだったじゃん? 今はちょっと無理してる感が出てるけど、付き合う前はふとした瞬間にカッコよかったっていうか……」


 わたわたと可愛らしい身振り手振りで説明してくれるが、私のメンタルをグサグサ刺していることには気づいていない。むしろ、昔の私のダメっぷりが酷いことこの上ない。


「覚えてる? お酒得意じゃないのに酔っぱらった真琴が私の服にゲロ吐いて」

「よし、ほのか。私が悪かったからゲロの話はやめよう……。本当にごめん」

「今は、アレだよね。めっちゃ演技が下手な恋愛ドラマの男の子って感じがする」


「私やめてって言わなかった!? ずっと刺してくるじゃん!?」


「だってさ」


 何か言いたげに言葉を区切って、箸をおいた。なんとなく彼女の言いたいことが伝わってきて、とっさに否定の理由を考えて並べようとしてしまう。きっと、強く言われてしまえば、私は彼女を拒むことが出来ないだろう。


「真琴が悪いんだよ?」

「ずっと一人で頑張っててさ。私が手伝いたいって言っても無視して。私、ちょっと怒ってるもん。真琴の悪口、いっぱい言っちゃう。……バカ、アホ、イケボ、変態。あと、目つきがやらしい」


 ……イケボは悪口じゃないし、後半2つはほぼ意味一緒でしょ。


 さすがにそんなことを言う余裕はなかったが、潤んだ彼女の瞳は真剣だった。


「私、もっとマコトのこと手伝いたい。今日見てた人だって、メイドさんに手伝ってもらってたじゃん」


 御曹司系Vtuberのレウスを言っているのだろう。焼肉屋に来る前に一緒に見ていたし、彼をサポートしていた使用人だという女性についても知っている。それだけでなく、例えばレナとオタクのような関係を求めているのだ。


 恋人という立場だけでは足りないと。


「か、考えておくよ」


 そんな曖昧な言葉を返して、私はほのかの顔から眼をそむけた。

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