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この同棲がバレたら(社会的に)死ぬ  作者: 平光翠
大忙し配信編
31/58

【コイバナ配信】イケボ陰キャとモデル陽キャがリスナーの恋愛を聞くよ!!【恋愛相談/レナチャンネル】

『大まかな流れは、今話した感じで大丈夫そうですかね?』

「そう、ですね。うん、大丈夫です。ありがとうございます」


 前々から企画していたレナチャンネルとのコラボ企画。配信の前にオタクさんと打ち合わせをしている最中だった。……と言っても、向こうのチャンネルで恒例となっている企画に私が乗っかる形であり、配信の流れもすでに決まっているので、そう長い打ち合わせを要するわけではない。


 ほとんどが確認作業だが、何もしないよりはマシだ。

 なにより、オタクさんは私にとって憧れである。高校生だというのに、私よりもよほどいろんなことを考えているし、レナさんのために全力で動く姿は、自分と重ねても数歩先を言っている気がするからだ。


 まぁ、恥ずかしいので、慕っていることは話してないけれど。


「オタクさんって、配信初めてどのぐらいですか?」

『敬語じゃなくていいですよ……? マコトさんの方が年上じゃないですか』

「いや、陰キャは敬語の方が話しやすいから……」


 尊敬しているから――とはいえずに、妙な言い訳をした。しかし、オタクさんはマイクの向こうで少し笑って『それ、めっちゃわかります』と同調してくれた。こういうところで似てるから、余計に憧れるんだろうなぁ。


『配信は、もうすぐ2年になりますね。レナの活動自体は、高校入る前からやってたらしいんで3年目超えてることになりますけど……』


 レナさんの活動というのはTikTokのことを指しているのだろう。たしか、彼らが言うには、元々レナさんは1人でやっていたらしい。


『まぁ、レナが1人でやってるときに色々あって……。最初はなし崩してきに手伝ってですけどね』

「すごく仲いいから、付き合ってるのかと思ったけど、そういう感じじゃないんだね」

『あはは、やめてくださいよ。アイツと俺とじゃ、全然釣り合わない。……すげぇ頑張ってるんで、応援したいんですよ。そんな時に、俺との色恋でファン減らしたら最悪じゃないですか」


 ――やはり、配信者に恋人が居るというのは、決していい方向には傾かないのだろう。もちろん、大多数のファンは彼女の恋路を応援するだろうし祝福するだろう。けれど、それを嫌がる人も一定数居るだろう。


 レナチャンネルだけじゃない、私もだ。


『一応、フォロー役が居るってのはリスナーも知ってますけど、男だとは話してないですし、話さないように言いつけてます。本人は納得いってないみたいですけどね』


 気のせいかもしれないが、少しうれしそうな声音で『困った物ですよ』と続けた。状況は違えど、危うい綱渡りという意味では、彼らは私とよく似ている。

 私も、リスナーたちにほのかのことを話すつもりはない。あの娘は、私だけが知っていればいい。


『長々と、どうでもいい話して、スイマセン。そろそろ寝ますね。俺、一応明日も学校あるんで』

「あ、引き留めちゃってごめんね。学校、頑張ってね」


 正しい応援なのかは分からないが、とりあえずそう言っておいた。一息ついてピンクのタンブラーに口をつけようようとして――通話に新しい参加者が来た。


『遅くなってごめーん!! お母さんに、テストの点悪くなったこと怒られちゃっててさ~!!』

『で、話、どこまで進んでる~?』


『……バカ、打ち合わせはもう終わってるよ。もう寝るところだ』


 遅れてやってきた話題の主、レナさんが元気よくやってくる。いきなりの襲来に思わずせき込んで、飲み物をタンブラーの中で逆流させた。


『えぇ、オタクごめん。怒ってるよね?』

『別に。来れないって連絡は来てるから、怒りはしない。……あ、やっぱ怒ってる』

「い、いや、僕は気にしてないから、怒らなくても大丈夫、ですよ?」


 私に気を使ったのかと思って、レナさんを庇うが、彼の怒りの沸点は違ったらしい。


『お前、テスト前に勉強教えてやったのに、それでもダメだったのか!? まさか、俺が出した課題サボったんじゃないだろうなぁ!!』

()()()サボってないよ!!』

『……()()()? ってことは』


「あ、あはは、その課題以外はサボったんだね」


 私の苦し紛れのフォローもむなしく、オタクさんは烈火のごとく怒り始めた。そのお説教は私との通話が終わった後も続いたらしい。


 さて、時間は翌日まで進んで、コラボ配信が始まろうとしていた。大した説教じゃなかったのか、怒られ慣れてしまっているのか、レナさんは特に引きずった様子もない。まぁ、多分、後者だろうなというのが私の見立てだ。


『じゃあ、配信始まったらレナの方からマコトさんを紹介します。いつもの挨拶しちゃってください。それと、画面操作は俺の方でやるんで、気負わずにお願いします』

『あ、昨日言うの忘れちゃったけど、マコトくん、誕生日おめでとうね』


「あ、ありがとう……?」


 完全に的外れなタイミングでのお祝いに、おもわず緊張がほぐれた。一瞬の間が空いて滝のようにコメント欄が流れ始めた。そのほとんどが知らない名前。


 それも当然、今回はレナチャンネルのみでの配信だ。

 告知はしてあるので、私のリスナーも何人か見えるが、やはり彼女のファンが多い。


口裂け女:始まった!!

悪天ちゃん:レナちゃんキタ!!


『こんちゃ!! レナチャンネルのレナです。今日は、人気企画、恋愛座談会をやっていこうと思うよ~。いつもと違ってゲストも呼んでるよ!!』

「初めましての人が多いかな? でも、来てくれた皆が大好きだよ。普段はゲーム配信メインにやってるマコトです」


スレイマンの星:マコくんきちゃ~

富士蓬:え、イケボの人が居る!?


『何回か遊んでるんだけど、私のチャンネルに遊びに来てくれたのは、初めてだよね?』

「そうだね。今日は精一杯リスナーのお悩みを解決していこうかなって思います」


『ええ、ちょっとイケボの恋愛遍歴とか聞きたい~』

「なんもないよ。って言うと嘘になるかな……。レナさんみたいな明るい娘がタイプだから、けっこう、そういう人と付き合ったりすることが多かったかも」

「わぁ、口説かれちゃった~!! マコくんならアリかも。っていうか、レナさんってタニンギョーギだからやめてよ。れなぴとか可愛く呼んで!!」


 ――他人行儀のイントネーションが明らかにおかしかった。リスナーには聞こえないが、イヤホンから微かにオタクさんのため息が聞こえる。うん、ちょっとだけ気持ちがわかる気がする。


「まぁ、れなぴとは恥ずかしくて呼べないけど、ちょっと頑張るね」

『うんうん。今後に期待ってことで、さっそく1つ目のお悩み行こうか!!』


【レナちゃん、マコトくん、初めまして。私の恋愛相談ですが、1年以上付き合ってる先輩が居ます。彼とは部活が同じで、私から告白しました。彼から好きと言われたことがないので、時々不安になってしまいます。デートは多い方ですし、浮気の心配などはしていませんが……】


『という感じで、お悩み頂きました!! 先輩と付き合うとか青春っぽくてエモい!!』


 レナさんが画面上に表示された悩み事を読み上げて、進行していく。

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