物語の目的(2)読み手
物語の書き手の目的が「メッセージを伝えること」だとすれば、読み手の目的は「メッセージを受け取ること」であろうか。しかし、そうでないことにはすぐにお気づきになるだろう。
例えば今、ある読み手の趣味が釣りだったとする。そして、この人が今、釣りの情報誌を読むとしよう。
読み手は、書かれた記事などを読んだ後、いつ、どこに釣りに行くか、何の魚を狙うか、仕掛けはどうするのか、広告欄の最新型の釣り具を購入するかしないか、などと考える。もちろん、情報誌を読むこと自体が楽しみだ、という読者もいるが、関心のある釣りの情報誌であるから楽しいのであって、関心のない分野の情報誌を読んだとしても、釣りの情報誌よりは楽しいとは感じないだろう。読書が趣味と言っても、純粋にメッセージを受け取ることだけを目的としているわけではない。
以上のように、読み手がメッセージを受け取ることは、物事の第一歩であり、手段に過ぎない。読み手の目的や最大の関心事は、メッセージを受け取った後、それをどうするのか(あるいは、何もしないのか)という、次のステップにある。そしてさらにその先には、伝えられたメッセージと自分の人生の関係性という、高次のステップもあるだろう。
要約すれば、読み手にとっての物語の目的とは、人生を楽しんで生きる手段を得ることで、人の数だけ目的もあるといえるだろう。