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製作依頼

明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。


坂森大我

 血の気が引く話を最後に聞かされた諒太。寒気を覚えながらもクラフタットに戻っていた。


「ヤンデレなのか? 運営はとんでもない怪物を生み出しやがったな……」

 兎にも角にも諒太はウルムの工房へと駆け込んでいる。早く製作を依頼しなければ学校に遅刻してしまう。

「おお、リョウじゃないか。俺は今起きたところだ……」

 ドワーフはあまり眠らない種族かもしれない。最後に会ったのは二時を過ぎていた。彼は四時間も寝ていないはずである。


「とりあえずフェアリーティアを三つ手に入れてきました。それで錬成も同時に依頼できるのでしょうか?」

「んん? 三つも手に入れたのか? フェアリーティアなんて滅多に市場へ出回らないんだぞ?」

 諒太はウルムにフェアリーティアを見せた。ヤンデレ妖精に粘着されるという危険を冒してまで手に入れたそれを。


「これは凄い純度だ! こんなものどこで手に入れた?」

「エンシェントドラゴンを討伐したお礼に妖精女王から頂いたのです」

「なるほど、妖精女王に会ったのか……。妖精とは異なり、彼女はなかなか姿を見せないらしいが。まあでもそれなら納得の純度だ。きっと最高の防具ができるはず。錬成は得意としているから任せとけ。下手な生産職に依頼していたら無駄になるところだったぞ?」

 どうやらウルムは有能みたいだ。流石はプレイヤーの血を引く者である。しかし、店の規模が小さいのは少しばかり気になるところだ。


「腕があるのにどうしてお店を拡張しないのですか?」

「ああ、革防具はあまり売れなくてね。鞄とか実用品しか人気がない。素材さえ手に入れば金属にも負けない防具が作れるんだが、そのハードルは高いからな。冒険者は手軽な鉄製の防具を好むし、魔法職はローブを着る。正直に革防具を好む冒険者は少ない」

 世知辛い話である。革防具は軽いというメリットがあるけれど、低級素材では同じ低級金属の防具に性能が劣るのだろう。


「ああ、そうだ! ウルムさんの鑑定眼でこれを見てもらえませんか? ドロップしたアイテムなんですけど……」

 ついでとばかりに諒太は【消化不良品+100】と【石ころ???】を鑑定してもらうことにした。高額の依頼をする代わりにサービスしてもらおうと。


 突然の依頼であったがウルムは快く引き受けてくれた。しかし、彼はどうしてか眉間にしわを寄せている。

「こんなものまで手に入れてしまうなんて、君は凄い冒険者だな?」

 レアリティに関しては保証できる。恐らくセイクリッド世界であのレベルの魔物を狩る冒険者はいないはず。


「一つはオリハルコンというらしい……」

 眉根を寄せる諒太。恐らくそれは伝説的な金属だと思う。けれど、アルカナの攻略ページにも見た記憶がない。

「鑑定眼レベルが足りず申し訳ないが、結果は幻金属とでた。長きに亘って鍛錬されたとある。良い意味で変質しているみたいだ……」

「それなら加工は可能でしょうか? お金は持ってます!」

「俺には無理だが、金属加工に長けた知り合いに頼んどいてやるよ。悪徳商会という工房なんだが……」

 話に出てきたのは夏美のフレンドである越後屋の工房だ。確かに金属加工なら越後屋だと聞いていた。だとしたら加工はそこで構わないだろう。


「よろしくお願いします。明日どうしても必要なんです。特急仕事でお願いできますか?」

 二人のイベントに間に合わなければ意味がない。無理を承知で諒太は依頼するだけだ。二つの防具を製作できたならば夏美が使用できる可能性も高まるはずと。


「それは無茶だなぁ。これだけの素材なんだ。職人としてはじっくりと作りたいところだね?」

「無理は分かっています。とりあえず使えるようにしてもらえれば結構です。大きな戦いに参加しなくてはなりません。そのあとでしたら気が済むまで加工して頂いて構いませんので……」

 妥協点はそこしかない。とりあえず防具として成立するのなら未完成品であっても構わない。強力な防具が二人には必要だった。


「よし分かった。それなら両方とも盾になる。構わないな?」

「よろしくお願いします。明日引き取らせてもらいますので……」

 依頼費として白金貨十枚を手渡す。ロークアットからの借金は無駄になったようで、その実は必要な経費となっていた。消化不良品の加工分まで必要になるとは考えていなかったし、再び頼み込むという手間をかけずに済んだのだ。


「ああ、それで【石ころ???】の方は俺の鑑定眼レベルでは不可能だ。専門の人間に依頼して欲しい」

 オリハルコンは何とか鑑定できたウルムだが、石ころは彼の鑑定眼レベルでは何も分からないらしい。

「了解です。それでしたら製作の方をお願いしますね。フェアリーティアは両方の盾に錬成してもらえれば助かります」

 言って諒太は店をあとにする。早くログアウトしなければならない。現実では目覚まし時計が鳴っている頃だ。停止しないことには両親が心配して部屋に入って来てしまうはず。


 仕事をやり終えた諒太は小さく息を吐きながら現実へと戻っていく……。

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