分離錬成
「分離錬成か?」
「うむ、それじゃ。竜魂もまた魂なのじゃ。何も変わらん……」
「いや、アレは失敗したじゃないか!?」
無双の長剣はただのインゴットとなってしまった。もしも、失敗してしまえば、ソラがどうなってしまうのか分からない。
「此度は妾も協力してやる。婿殿は別に純粋なアークエンジェルではなくても構わんのじゃろ? 聖域で聞いた神の未来視と同じになれば……」
どうやらリナンシーは聖域でのことまで知っているらしい。プライバシーも何もあったものではないけれど、正直に助かっている。
「ああ、アークエンジェルであればいい。中身が変態でも弱体化していても構わない」
「通常の進化であれば魂は溶け合って一つになる。しかし、錬成によって産み出されたエンジェルの魂では混ざり合えなかったようじゃな。よって婿殿はアークエンジェルの魂だけを抜き出せば良い。ただし、痛めつけて動かぬようにせんと、分離に失敗して双方が失われるじゃろう」
「今のソラはレベル1だぞ!? 瀕死とか一番難しいやつじゃねぇか……」
諒太はレベル147である。よって加減が分からない。Sランクとはいえフレアと変わらぬ強さであれば、軽く殴っただけで死んでしまうような気がした。
「まあでも、やるっきゃねぇな……」
今もまだ葛藤しているようなソラ。恐らくはリナンシーが話す二つの人格がせめぎ合っているのだろう。
「マスター! 遠慮なくワタシを斬り裂いてください! もう抑えきれません!」
不意に届く声に諒太は頷いている。諒太がソラと名を呼んだことで、内なる人格の一つである彼女が表にでられたのかもしれない。
しかし、次の瞬間、
「ホーリーウェイブ!!」
ソラが魔法を放つ。それはソラがレベル120の折りに習得した攻撃魔法。大司教クラスが持つ聖属性の中級魔法であった。だが、それは本当に威力を感じない。信仰値に左右される攻撃威力は盾スキルを使用する必要などなかった。
「まあ、元がセイレーンだしな……」
正直に負けようがない。諒太もさることながら、指輪を装備したロークアットはレベル260相当なのだ。如何にSランクの魔物とはいえ、二人に敵うはずがない。
「カウンター判定に注意して……」
駆け出した諒太は全力ダッシュのあと、ソラの手前で立ち止まる。そのまま攻撃することなく、話しかけていた。
「ソラ、お仕置きしてやる。こういうの好きだろ?」
言って諒太は張り手を一発。いわゆる平手打ちをソラの頬へと放つ。ちゃんと彼女が攻撃を認識していることを確認してから……。
軽く張っただけであったものの、ソラは勢いに負けて倒れ込む。荒い息を吐いていることから、かなりのダメージを負ったのは間違いないだろう。
「おのれ……」
右頬に手を添えながら、アークエンジェルらしき人格が諒太を見ている。どうあっても敵う相手ではないのだが、依然として敵意を露わにしていた。
「リナンシー、拘束はどうやってすればいい?」
もうこの戦闘は終わりだ。俊敏値でも圧倒する諒太はアークエンジェルが逃げることさえ許さない。彼女の命運は諒太が握っているといえた。
「任せろ。ツルツル伸びよ!!」
よく分からない話をしたリナンシー。しかしながら、任せろといった言葉に嘘はない。地面から、するすると蔓が伸びて、瞬く間にアークエンジェルを拘束している。何やらいかがわしい本で見るような特殊な緊縛にて……。
「おい、これ……」
「完全に自由を奪ったのじゃ! 異論はあるまい?」
「ふぐっ、ふごっ!?」
アークエンジェルはもがいている。堅い実を口に咥えさせられ、言葉を発することさえできなくなっていた。完全にアレな見た目ではあったけれど、リナンシーが話すように自由を奪ったのだから、問題がないと言えば問題はない。顔を赤らめて視線を逸らすロークアットを除けば……。
「分離したあとが問題じゃ。生きた魂を分離するのは世の理に反する。従って入れ物を用意しなくてはならん。分離をして更に入れ込む。そのあとで討伐すれば神の意に背くことはない」
「入れ物? 弱い魔物に人格を移すのか?」
方法は理解したのだが、今度は入れ物が問題となる。辺りを見渡して見るも、魔物はいない。面倒だが、憑依させる魔物を探すしかないようである。
「いや、別に何でも構わん。この口に咥えておる蔦の実でいいじゃろう」
「ええ? んなもんで収まるのか?」
「魂の格に耐えられんのなら、勝手に消失するだけじゃ。まあしかし、この蔦の実は妾が自然創造したものじゃからな。恐らく消滅するなんてことにはならん」
妙に頼もしく思えてしまう。基本は残念妖精であるというのに、この今に限って諒太は神に匹敵するほどの厚い信頼を寄せている。
「婿殿は分離に集中しろ。あやつの元の魂とアークエンジェルを分離するにはその区別を明確にせねばならぬ。これまでのあやつをイメージし、除外されるものがアークエンジェルじゃ。排除するのは婿殿が知らぬ成分だけで良い」
難しいことを軽く言う。リナンシーの話は今まで以上に難解な要求であった。
「今までのソラ?」
考えてみると、ろくなイメージが湧かない。
変態とか鬼畜とか。擁護するとして過度に懐いていたことくらいである。けれども、諒太はやるしかない。魂を分離し、蔦の実へとアークエンジェルを入れ込むだけだ。
諒太は亀甲縛りにされたソラに手をかざし、彼女のイメージを思い浮かべる。
「変態……鬼畜……どスケベ……」
「婿殿、いいぞ! 明確に分離されておるわ!」
どうやらソラを構築する成分の大部分をイメージできているらしい。排除したあとに不安を覚えるけれど、手をかざす諒太にも二つの魂が感じ取れている。
感覚として色が違った。どぎついピンク色をしたものと、真っ白なもの。エンジェルの上位種であるアークエンジェルは恐らく白い方だ。ソラは進化元のセイレーン成分をより多く残しているに違いない。
「錬成ッッ!!」
上手くいくかは分からない。けれど、魂の色を察知した諒太は分離錬成を試みる。明らかに異なる二つを認識できたのだからと。
「いい感じだ! 既に分離は成されておる! あとは蔦の実に集中し、排除したものを入れ込むのじゃ!」
どうしていいのか分からなかったけれど、リナンシーの話を聞くや、分離した白い魂が球状に見えていた。それは恐らくリナンシーの能力。手伝うといった彼女はその言葉通りにアシストしてくれているようだ。
「錬成! 入れぇぇっ!!」
何がどうなっているのか少しも理解できない。さりとて目に見える白い輝きは諒太の手の動きと同期している。ゆっくりと動かし、口元にある実と重なり合っていく。
刹那に、実が輝き出す。既に白く輝く魂はどこにもない。辿り着いた先は光を放つ蔦の実しか考えられなかった。
程なくリナンシーがソラを拘束している蔦を解く。恐らくは成功したのだろう。彼女が拘束を止める理由はそれしかない。
輝きが失われると、ソラは目を開く。諒太を見つめては一筋の涙を流した。
「ソラ……?」
諒太の問いかけには頷きが返されている。もう憎しみは感じない。ずっと向けられていた優しい眼差しがそこにあるだけだ。
「マスター、只今戻りました……」
ソラが口を開く。涙声の彼女はまるで旅立っていたかのような話をしている。
「ソラ……なんだな?」
一応は確認を済ませる。リナンシーのツッコミがない現状は失敗を否定していたというのに。
再び頷くソラ。やはりもうアークエンジェルの魂は排除されたらしい。
「ワタシは貴方様の卑しい奴隷。華麗なる貴方様を彩る穢れた一輪の薔薇にございます……」
幾つもの涙腺を頬に残しながら、ソラが言った。
もう確信している。彼女はソラであると。変態で鬼畜でどスケベ。身体に残した成分は明らかにソラであった。
『ソラがテイム状態に戻りました――――』
不意に告げられたのは一時的に解除されたテイムについて。リナンシーが話す通りにアークエンジェルの魂を排除するだけで、元の状態へと戻っていた。
「マスター、申し訳ございませんでした。ワタシはいつも貴方様の奴隷であります」
「ああ、それは構わない。俺が進化させたんだし。ソラに罪がないことは分かっている」
「いいえ! 先ほどのようにぶってくださいまし! さあ、縛り上げて踏みつけてください!」
やはり残念な成分しか残っていないようだ。完全に元のソラに戻ったと分かる反応であった。
「リョウ様、とても信じられませんが……」
「いやぁ、上手くいったみたいだ。今回ばかりはリナンシー様々だよ」
「いや婿殿、まだ問題が残っておる……」
丸く収まったと思われたのだが、リナンシーが口を挟んでいる。何事かと思うけれど、諒太にもその原因が理解できた。
「問題ってのは先ほどの実か?」
「蔦は消したのじゃが、実だけ残ってしもうた。しかも、アークエンジェルの魂がしっかりと錬成されておる……」
地面には蔦の実が転がっていた。見たところ問題はなさそうだが、実から芽が出ているのが分かる。
「これ放っておくとヤバいのか?」
「うむ。何しろ依り代は妾が創造しておるし、中身はSランクの魔物じゃ。災厄に発展する恐れがある……」
どうにも不可解だが、確かに人外のリナンシーによる自然創造である。しかも、アークエンジェルが乗り移っているのだから、ただの植物に育つとは思えない。
「マスター、踏み潰してしまいましょう! マスターに仇なす邪悪な植物など踏み潰して、やきとりに与えてはどうでしょうか?」
珍しくソラと同意見である。後の災いとなるのならば、今この場で踏み潰してしまうべきだ。中身がアークエンジェルかどうかなど知ったことではない。
「婿殿、そうはいうが、この実のステータスを見てみろ?」
何てことはないと思うも、諒太は言われた通りにステータスを見てみることに。
【終末の実】
【肉食植物・Lv100α】
【ランク】★★★★★
【物理】無効
【火】強
【水】無効(回復)
【風】無効(回復)
【土】無効(回復)
【雷】無効
【氷】無効
【スキル】スプラウト
「マジか……?」
諒太は息を呑む。ただの実でしかないというのに、Sランクモンスターであった。不穏な名前からも、その実力を窺えるというものだ。
「完全にしくったようじゃ。適当な魔物を捕まえて錬成すべきじゃったな。正直に妾では手に負えん……」
本体である蔦と同時に消え去らなかったこと。全てはリナンシーの力を受け継いでしまったからのようだ。
「これはお前のせいか……?」
「…………」
明らかである。実であるというのにレベル100。この耐性もあり得ないものだ。依り代としたものがリナンシーの創造物であったことは明確に強化へ繋がっているはず。
「あれ? 敵のスキルが確認できるぞ? スプラウトって?」
仲間以外の魔物はスキルが確認できない。加えて諒太は魔物のランクまで分かるようになっていた。
「それは鑑定眼のレベルが上がったのじゃろう。してスプラウトじゃが、単純に芽が出て進化することじゃろうな……」
「やべぇな……。αってなってるし、完全に亜種だろう? こんなのが進化すれば凶悪な魔物になってしまう……」
「じゃから、問題だといったのじゃ……」
「お前のせいでな?」
嘆息する諒太だが、勝機はある。まだ芽が出たところであるし、進化の過程に違いない。
何しろ火属性攻撃のみがダメージを与えられる。諒太が最も得意とする属性が通るのであれば問題はない。
「奈落に燻る不浄なる炎よ……幾重にも重なり烈火となれ……」
最大魔法にて終末の実を焼き尽くすのみ。リナンシーが回復し、魔力回復ポーションも十二分にある現状において諒太の敵ではなかった。
「妾も加勢するぞ!」
「可否は問わず……ただ要求に応えよ……」
リナンシーがまたも干からびるのは勘弁して欲しいが、相手は強大な魔物に違いないのだ。遠慮する場面ではない。
「獄炎よ……大地を溶かし天を焦がせ……天地万物一片も残すことなく灰燼と化すのみ」」
現在のインフェルノの熟練度は8である。今もスクロールを必要とし、詠唱がいるけれど、的が動かぬのであれば何の問題もなかった。
「インフェルノォォッ!!」
諒太は詠唱を済ませた。
対象が小さな実であるのには溜め息しかでないけれど、リナンシーが恐れるほどの存在なのは明らかだ。今ここで焼き切ってしまうべき魔物に違いない。
「地獄へ堕ちろ! アークエンジェル!!」
刹那に立ち上る炎の壁。クラフタットで見たものとはスケールが違ったけれど、やはりリナンシーが力を注いでくれたのだろう。いつもより派手な炎が立ち上っていた。
夜のダリア山脈を照らす一筋の炎柱はいつもよりも大きく高く燃え盛っている。しかし、火耐性は強であり、レベルも100αだ。一撃で屠れるはずもなかった。
透かさず諒太は次を詠唱する。魔力回復ポーションを飲んでから、再び撃ち放つ。
「インフェルノォォッ!!」
何度だって撃つつもりだ。成長した姿など見たくもない。今ここで絶対に焼き尽くすのだと諒太はインフェルノを唱え続ける。
一体何度撃ち放っただろう。何本のポーションを消費したことだろう。炎の中でも芽を伸ばす終末の実には辟易としていたけれど、二十発目を撃ち放ったそのとき、
『リョウはレベル149となりました』
レベルアップの通知があった。しかも二つも上がっている。冷静に考えれば、終末の実はレベル200相当であり、今し方ようやく滅したのだと分かった。
続いてロークアットとソラのレベルも上がっている。ソラに関しては一度に135まで上がり、ホーリーウェーブの上位魔法であるホーリーブラスターを習得していた。
「この実はクソ強ぇな……。もし、こいつが進化していたら、ルイナーよりも先に世界を滅ぼすんじゃね?」
ジロリとリナンシーを睨む。恐らくはアルカナ内にも終末の実は存在すると思われるが、亜種となってしまったのは全てリナンシーのせいだろう。
「ま、ま、婿殿! 倒せてレベルが上がったのじゃから良しとしようじゃないか!」
「お前、途中から援護してなかったよな?」
「ギクゥ!?」
途中から明らかにインフェルノの威力が落ちていた。リナンシーは昏倒するのを避けるために、意図的に魔力を惜しんだと思われる。
「ゆ、許すのじゃ! ほら、アークエンジェルもどきも無事なのじゃし!」
まあ今となってはだ。終末の実が攻撃してこないのを確認していたからだろう。リナンシーは余計な魔力を使用しないようにしていた。
「リョウ様、あの……」
諒太とリナンシーの遣り取りにロークアットが割り込んで来た。何の問題があるのか、申し訳なさそうに彼女は言う。
「宝箱が……」
「えっ?」
まるで考えていなかった。戦闘というより焼いただけなのだ。魔力回復ポーションを消費しただけの戦いに報酬があるなんて予想していない。
ロークアットが指さす方向に視線をやる。そこにはあり得ない宝箱が鎮座していた。
「また……金箱?」
それはレアアイテムの確定演出であった。もう二度と訪れないと考えていたそれが再び諒太の目に映っている。
緊張しながらも手で触れる。時間切れとなり、消失する前に中身を改めていた。
宝箱が開き、輝きと共に消失していく。代わりに露わとなるのは戦利品である。
【カタストロフィの欠片+91】
中からは素材らしきものが出てきた。終末の実は足で踏み潰せる大きさであったというのに、宝箱よりも大きな素材。鑑定してみても、終末の実のドロップ品であることが確定している。
「プラスが付いてるってことは、やっぱ装備品になるんだよな……」
プラス値は意外にもマックスではなかった。今までで最強と思えるほどの強度があったけれど、実際はそれでも最大値ではなかったらしい。
「婿殿、ちょうど鎧が欲しかったんじゃろ? 妾のおかげでハイレアの素材をゲットできたんじゃぞ?」
「うるせぇ。ドロップはロークアットのおかげだ……」
ハイレアの素材は確かに嬉しい。だが、問題がないわけではない。恐らくこの素材は加工できないのだ。フェアリーティアがない現状でウルムに加工できるとは思えない。
「おいリナンシー、うちのメンバーでフェアリーティアを渡していないものはいるか?」
ここで諒太は聞いてみることに。プレイヤーの血を引くものであれば、フェアリーティアを授けられるのではないかと。まだ未入手であるのなら、加工分をもらえはしないかと。
「婿殿、娘らは全員がそれなりの立場なのじゃぞ? 生まれて直ぐ、報告に来よるからな。全員がその場で受け取っている」
加工さえできればプラスアルファは望まなかったというのに。全員がフェアリーティアを入手しているらしい。
「んん? 妖精の国に入るには資格がいるんだろ? 全員が弱い魔物を引いたのか?」
「なんじゃ、それは? まあしかし、妾の国は魔物が多い場所にあるからの。往々にして駆除してもらったお礼に手渡したりはするの。ロークアットの父いちご大福もまた魔物を倒してくれたのじゃ。よって妾はあの者の娘にも恩義を感じておる」
フェアリーティアについてリナンシーは世界の理と話していたけれど、入国の条件もまた世界の理であることを知らないようだ。恐らくは入国許可を受けたプレイヤーの子孫には入国イベントが発生しないのだと思われる。
「じゃあ、ソラには渡せないのか?」
「魔物は無理じゃの。まあしかし、この世にはまだ手渡していない者が大勢おるぞ?」
リナンシーの話を深読みするとプレイヤーの子孫でなくとももらえる感じだ。加えて大勢いるとの話はもちろん入国イベントが問題となっているはず。最低でもレベル50の魔物が湧くあのイベントをクリアできるNPCは少ないはずだ。
「フレアさんとアーシェならいけるか……」
「その者たちには渡しておらん。連れてくれば婿殿の顔を立てて特別に下賜してやろう」
完全に独り言だったのだが、リナンシーは返答し、意外にもすんなりと受諾している。
最悪を引いたとしてエンシェントドラゴンだ。今となっては苦労などしない。ならば彼女たち二人を引き連れて討伐に向かうべきだろう。
「リョウ様、それでこのまま悪魔王アスモデウスに挑むおつもりでしょうか? かなりポーションを消費されたようですけれど……」
「まあそれな。手持ちはあと20本だ。先ほどは完全にイレギュラーだし、問題はないだろう。恐らくあの実よりもずっと弱い」
諒太は確信している。悪魔王アスモデウスにはディバインパニッシャーが有効であり、デバフ効果のある魔法をリナンシーが唱えられるのだ。ロークアットはステータス二倍であるし、ソラもまたホーリーブラスターというAランク魔法を習得している。悪魔に対して隙のない陣容であった。
「ロークアットは防御に徹してくれ。アスモデウスは俺が倒す……」
「大丈夫でしょうか……?」
ロークアットは心配しているが、諒太はレベル上限に近い149なのだ。手持ちの魔法もチート級であるし、万が一にも負けるとは思えない。
「安心してくれ。君の英雄には俺も含まれているんだから……」
諒太はそういって不安がるロークアットを宥めている。負けるはずがない。そう願うだけで諒太は勝利できるはずだと信じていた。
セイクリッド神が語った全て。諒太が世界に愛されているはずと。
「さあ、行こうか……」
諒太たちは意気揚々と焔の祠へと入っていく。
望むべき世界を明確に脳裏へと描きながら――――。
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