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ステータス強化

 諒太は店じまいをし、再び素材の買い付けをしている。ロークアットが聖王城に戻ったあとも、彼はアトリエに残っていた。


 明日に備えて十分な在庫を作ろうとしている。だが、数時間が過ぎていたから、リナンシーの回復具合を不安に思う。


「また店舗を改装してみっか……」

『や、やめるのじゃ、婿殿!』

 即座に反応してくるところをみると、やはり回復しているのだろう。


「なら何とかしろ。俺はお前のせいで普通の錬成ができないんだぞ?」

『そう言われてものぉ。そこは慣れの問題じゃろ? 熟練度を上げていくしかないの』

 他人事のように話すリナンシーに諒太は決断する。再び彼女が昏倒しようと知ったことではないと。


「じゃあ、目一杯に錬成してやんよ。錬成は俺の自然回復MPより、どうしてかお前の魔力が優先されるみたいだしな。千個から作る予定だし、高級品を錬成し直していたら、五千回は錬成することになるだろう……」

『鬼畜じゃ! ど畜生がここにおる!』

 邪魔くさくなった諒太は返答しなかった。素材をテーブルへと並べ、一度に錬成していく。


 脳裏に届く悲痛な声を無視し、出来上がった高級品を錬成し直す。これを何度も繰り返していけば、熟練度は上がるだろうし、いずれはリナンシーの魔力も尽きるはずだ。


 しかし、何度錬成しようと高級品が出来上がってしまう。鉄はシルバーやゴールドとなり、ガラス玉は宝石と化した。


『リョウは【鑑定眼Lv1】を習得しました』


「えっ……?」

 ここで通知があった。そういえばアイテムを見るだけで詳細が分かっている。先ほどまでロークアットに聞くまで分からなかったというのに。


「ロークアットの鑑定眼を見ていたからか……?」

 パーティーを組んだわけではなかったが、彼女の奴隷であったこと。それが影響しているとしか思えない。


「まあ、ないよりはあった方が捗るな……」

 このあとも錬成を繰り返している。その度に確認しているけれど、出来上がる商品は全て上位変換されたものだった。


「やっぱリングを作るだけじゃ、残念妖精の魔力を削ぎ落とせんか……」

『ふはは! ざま見ろなのじゃ! そのようなゴミ錬成屁でもないわ! ステータス強化が付加されない安物ではの!』

 腹の立つ念話が送られている。しかし、それは足がかりでもあった。

 即座に諒太は問いを返している。


「ステータス強化って何だよ?」

『ギクゥッ!!』

 そういえば諒太が製作したアイテムには何の効果もない。DEF+1くらい付与されていてもいいはずなのに。


「ステータス強化付与について教えろ……」

『い、嫌じゃ! また昏倒させられては堪ったものではない!』

 やはり抵抗を見せるリナンシー。けれど、彼女は残念妖精である。思わずヒントまで口にしてしまう。


『装備品と念じて作ることは秘密じゃ!!』

 脅しをかけようかというところで自爆。諒太は労せずしてやり方を聞いてしまう。


「ほう、なら鎧や盾も作れるってことか?」

『し、し、し、しまったぁぁっ!』

 手始めに諒太は鎧を製作することに。インゴットは大量に仕入れているのだ。夏美の鎧をイメージし、諒太はそれを錬成していく。


 目映い光が満ちたあと、例によって例のごとくインゴットはイメージ通りの形へと変化していた。


【銀の鎧】

【レアリティ】★

【DEF】+5


 しかし、完成した鎧は使い道がないほどに弱かった。材質は銀であったけれど、考えていたような鎧は出来上がっていない。


「おいリナンシー、こんなゴミしか作れんのか?」

『ぜぇ、はぁ……。馬鹿言うな、婿殿……。錬金術で製作できる装備などせいぜいアクセサリーくらいじゃ……』

「でもナツの鎧はエルフが錬成して作ったって説明書きがあったぞ?」

『あれは失われた技術じゃ……。古代エルフの錬成技法はもう失われておる。ないものは作れん。それが世界の理じゃからな……』

 確かに古代エルフの秘術だと見たような気がする。ジョブではない錬金術で最高の鎧が製作できるのなら、越後屋やココといった生産職は必要ない。ゲーム内設定が反映されているのだから、恐らく錬金術では+5程度までしか付加できないのだろう。


「じゃあ、やっぱ錬金術はアクセサリー専門ってことか……」

『婿殿、もう止めてくれ! もう限界じゃて!』

 リナンシーに構うことなく諒太は錬成を始める。今度はリングに挑戦するつもり。微々たるものとはいえ、少しでも強くなれるように。諒太自身が使う指輪を錬成していく。


「属性効果とかいけるか? 火をイメージして……」

 あわよくば火属性効果まで付与してやろうと、諒太はイメージを明確にする。燃えたぎる炎とそこから生み出される赤いリング。それを装備し戦っている場面を想像していた。


『や、やめ……ろ……』

 リングに反映されるかどうかは分からなかったけれど、リナンシーがダメージを受けているようなのでやり方は間違っていないはずだ。

 ならばと諒太はありったけの魔力を注いでいく。


「錬成!!」

『ぎゃああああっっ!!』

 既視感を覚えるような絶叫が轟き、周囲はソラを錬成したときのような輝きに包まれた。

 この反応だけでやってしまった感がある。

 生み出されるそれは間違いなくロークアットを怒らせてしまうだろうと。とはいえ自分で使用するつもりなのだからと、諒太は言い訳を呟いている。


『リョウは錬金術がLv22となりました』


「えっ……?」

 驚いたのは熟練度アップの通知ではなく、輝きの中から現れたリングが理由だ。

 黒い下地に上部が赤く煌めくリング。それはまさにイメージ通りであったけれど、リングの性能は諒太の予想とまるで異なっていた。


【焔のリング】

【レアリティ】★★★★★

【効果】

・DEF+10

・火属性攻撃+30%

【付与スキル】

『精霊王の加護』イフリート召喚(使用不可)


 息を呑むしかない。想像以上の性能に諒太は首を何度も振るだけだ。

「イフリートの召喚って……」

 付与スキルにある『精霊王の加護』。それは明らかにイフリートを召喚するスキルであるが、どうしてか使用不可となっている。


「どういうことだ? 今はまだ俺のステータスが足りない?」

 使用不可について考えられることはステータス不足が主な原因だろう。アルカナの世界を引き継ぐセイクリッド世界はゲームの理に縛られているけれど、仮に実装前であろうと使用には問題がない。考えられる原因が多くあるとは思えなかった。


 リナンシーは沈黙している。恐らくは、この錬成で尽き果てたのだろう。聞きたいこともあったのだが、とりあえず諒太はアトリエに並べる商品を作っていく。


 もうすぐ日が沈む。黄昏時の空は鮮やかなグラデーションを映し出していた。赤から闇へと。

 それはまるで諒太が錬成したリングのようであった……。

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