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再び交差する過去と現在

 回復ポーションを飲み終えた諒太。とりあえず金策を中断し、ダンジョンを出ようと思う。流石に疲れ果てていたから、ベッドで休みたくなっていた。

 またMP回復ポーションの購入も済ませておかねばならない。金欠ではあったけれど、ドラゴンゾンビとエンカウントする確率があると知っては準備を怠るなんてできなかった。


「ああ、そうだ。ミスリルの採掘効率がいい場所を聞いておかないと……」

 確か夏美もジャスミス大鉱山に潜っていると聞いた。であれば、如何に記憶力のない夏美であろうと、高効率な場所を思い出しているはずだ。


 直ぐさまスナイパーメッセージを起動しコールする。しかし、夏美はなかなか応答に出ない。いつもなら数コールで間違いなく通話となるはずなのに。

『もしもし?』

「戦闘中だったか? 別にあとでも構わんのだが……」

 ようやく接続となったものの、諒太は気を利かせている。集中しなければならない場面でのコールが非常に厄介であるのは諒太も経験済みなのだ。


『リョウちん……』

 激怒するかと思いきや、夏美の声はか細いものであった。この声色が怒気を含んでいるはずもない。


『助けて――――――』


 諒太は絶句していた。かすれるほどに小さな声。けれども、間違いなく諒太は聞いたのだ。

 助けてくれと……。


「ナツ、どうした? 何があった?」

 ここは状況を整理してもらうしかない。助けを求められるだけでは何もできないのだ。

 しばらく待っていると、夏美が返答し始める。しかしながら、落ち着いたとはいえない感じだ。


『イロハちゃんがボス部屋で猛毒にやられたの! 時間がないのよ!』

 まるで意味不明な話だが、諒太には心当たりがあった。

 同じジャスミス大鉱山で戦っていたのだ。ボス部屋での猛毒は記憶に新しい。けれど、それは都市伝説並にあり得ないことである。今の今までちゃんとした出現報告がない魔物であったからだ。


 ならば諒太は問うしかない。思い当たる事象と同じなのかと。

「もしかしてドラゴンゾンビか……?」

 たった今、倒したばかりだ。もしもアルカナの世界にもドラゴンゾンビが現れていたとすれば……。

 夏美は脳筋戦士であったし、彩葉は死に戻っている。有効な攻撃手段がない二人には強敵であったに違いない。


『ネクロマンサーがドラゴンゾンビを召喚したの……』

 やはり危惧したままであった。レベル120の夏美は諒太よりも早く半分を削り取ったはず。そこで彩葉が猛毒を受けたと考えるべきだろう。


「残りの回復ポーションは?」

『あたしは三個。イロハちゃんもあまり残ってないと思う……』

 負けず嫌いの夏美が助けを求めている時点で危機的状況だと分かる。恐らくは一刻を争う事態だ。

 諒太は頭を悩ませるも、生憎と夏美たちはゲーム世界にいる。直結にて応援に行くような時間は残されていない。


 救援は不可能かと思われたが、諒太は閃いていた。次の瞬間には行動を起こし、夏美には討伐の手順を話し始める。

「ナツ、大扉前の土を掘り起こしてくれ……」

 夏美たちを救う術はそれしかなかった。かつてはそれでミノタウロスの石ころを彼女に送ったのだ。今回も上手くいくと諒太は信じている。


『え……? 掘り起こす?』

「早くしろ。王者の盾と無双の長剣を埋めた。無双の長剣には200%の竜種特効が付与されている。王者の盾はお前が使ったままだ。ドラゴンゾンビなんかロックブラスターで撃ち抜いてやれ」

 先ほど温存したロックブラスター。累積ダメージは解放していない。きっと前回と変わらぬ威力を発揮するだろう。

『ロックブラスターって、ボス部屋破壊しちゃうじゃん!?』

 せっかくの提案であったものの、夏美は二の足を踏む。ロックブラスターの威力を知る彼女は最終的な手段だと考えているらしい。


「ロックブラスターは剣技でも魔法でもない盾スキルだぞ? 地形変化を起こす技に含まれていない。スキルランクすら設定されていないんだ。そもそも単体攻撃だし、確実に命中させることができれば地形変化は起きないはず。だから遠慮なくぶっ放してやれ。ドラゴンゾンビが咆哮し始める前に……」

 地形変化はBランク以上の剣技と魔法に設定されていた。如何に高威力を溜め込もうと、その中に盾スキルは含まれていない。

 従って諒太は問題ないと夏美の背中を押す。本心では五分五分だと考えていたのだが、たとえ予想が外れたとしても、ここはロックブラスターを撃つべきだと思う。


『構わないの?』

「遠慮するなといっただろ? さっさと掘り起こせ……」

 責任は持てなかったけれど、諒太としては勇者ナツの生存こそが重要だった。だからこそ、諒太は言い切るだけだ。彼女が不安を覚えないように。


『リョウちん……。恩に着る!』

「急に侍になんなよ……」

 心なし夏美の声に精気が戻っていた。夏美にも分かったことだろう。200%という竜種特効やロックブラスターが付与された王者の盾。その二つを使って死に戻るなんてゲーマーとして許されない。完全なチート装備を送付されては倒すしかなかった。


『リョウちん、少し待ってて! 必ずいい報告をするから!』

「ああ、そうしてくれ。俺も時間がないんだから手短に頼むぞ?」

 最後は冗談にも似たエールを。このあとは夏美の戦闘勘に任せるしかない。

 二人いる状況で猛毒の連発を食らっては一溜まりもないはずだ。だからこそ撃たれる前にとどめを刺す。討伐後に爆発などしないドラゴンゾンビならば、そうやって倒すべきだろうと。


 二人を待つ諒太は笑みを浮かべている。夏美から届く戦闘結果に期待をして。

 最高の結果が出ることを諒太は信じている……。

応援よろしくお願い致しますm(_ _)m


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