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起死回生

「婿殿……」

 リナンシーもある意味において世界の管理者である。よって彼女としては諒太が戦ってくれるという話は有り難いことだ。暗黒竜ルイナーは明確な脅威であり、諒太を除いて誰にも対抗できないのだから。


 少しばかり考えるようなリナンシー。けれど、時間はかからなかった。彼女は小さく頷いて、諒太の決意に答えている。

「分かった……。言う通りにするのじゃ……」

 ようやくとリナンシーは諒太の覚悟を汲み取っていた。

 彼女曰く、魔魂錬成は既存の武器に馴染ませるだけだという。鋼材自体を強化するフェアリーティアとは難易度がまるで異なるらしい。


「二つを重ね合わせ、魔魂が溶けるようなイメージをする。それが全体に拡がるよう思考するのじゃ……」

 フェアリーティアであれば均一さも求められるけれど、属性特効付与にはその工程が含まれていない。馴染みさえすればそれで良かった。


「あとは魔法を発動するときと変わらん。練った魔力を手の平に回し、イメージと共に魔魂へと注ぎ込め……」

 ドラゴンゾンビを目で追いながらも、諒太は言われた通りにイメージしていく。氷が溶けるように。水に落ちた油が薄く拡がるようにと……。


「婿殿、骨は拾ってやるのじゃ。約束通りに其方の魂は妾が食らおう……」

 不吉な話が続けられたが、諒太は集中を高めている。


 イメージをし、魔力を注ぎ込む……。

「っ――――」

 やはり万全ではない。急激に失われる魔力は再び諒太に目眩を覚えさせていた。しかし、諒太は錬成を続ける。絶対に成功させるのだと……。


 今もまだ手の平に魔魂の感触がある。全てが溶け出さないことには成功などあり得ない。ならばと諒太は魔力を振り絞る。ない袖は振れぬというにもかかわらず。


 どうしてか視界が悪くなったように思う。確かに目眩を覚えていたけれど、今までは視界が失われることなどなかったはず。けれども、この今は明確にリナンシーの姿が薄く消えかかって見えていた。

「婿殿、妾はここまでじゃ……。必ず勝つのじゃぞ……」

 どうやら目の錯覚ではなかった。また視力が失われようとしていたのでもない。

 リナンシー自体が薄く消えかかっているのだ。彼女は残る魔力を全て諒太に注いでしまったらしい。


「勇者リョウ、勝つのじゃ――――」


 言って小さな妖精は完全に姿を消してしまう。諒太の無茶に付き合ったばかりに失われてしまった……。


 刹那に無双の長剣が光を帯びる。と同時に手の平にあった竜魂の感触も雪が溶けるようにして消失していた。

 次の瞬間には脳裏に通知音が響く。何から何まで戸惑うばかりだが、諒太は通知メッセージを確認する。


『リョウはスキル【錬金術】を習得しました――――』


 もう諒太は成功を疑わない。失敗したとすれば、習得できるはずがないのだ。だとすれば確認するだけである。狙い通りになっているのかを。


【無双の長剣】【ATK+40】

【レアリティ】★★★★

【固有スキル】竜種特効(与ダメージ200%増)

【特殊錬成】★★★★★


「マジかよ……」

 初めての錬成であったけれど、特殊錬成のレベルはマックスであるらしい。自然創造というリナンシーの力が働いたのか、与ダメージは200%増と表示されている。


「いける!」

 最後に全魔力をリナンシーが注入してくれたおかげか、今のところ体調不良には陥っていない。諒太は剣を握る手に力を込めていた。


「助かったぜ、残念妖精……」

 リナンシーのためにも絶対に負けられない。諒太は再びドラゴンゾンビへと斬り掛かっている。完全なるお膳立てをしてもらった彼は決意を新たにしていた。


「ぜってぇ、討伐してやる!――――」

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