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水曜日

 起きると彼はいない、サンドイッチが置いてあり、いつも通りの朝。食べながら昨晩の録画をチェックする、これはもうスカート中をのぞく人達と一緒なのでは? もうやってしまったものはしょうがない。

 まず五分ほどで私は寝たようで、早送りでみるとかなりの寝返りをしている、そのたびに画像がゆれる。そして数分後、布団を投げ出し、大の字に……一時停止! もう二度と服を着ないで寝るような馬鹿げた行いはしません、お願い彼が振り返る前に布団をかけて、お願い過去の私! 

 過去の私への思いが届くはずもなく、彼がベッドへと歩いてくる、うーん今体をこわばらせても意味はないのだが、体中にへんな力はいる。停止! とりあえず深呼吸、なんども一時停止していては、時間がすぎていくだけで、体も持たないもう停止はなし。

「ちょっと!」

 おもわずスマホに怒りをぶつけてしまう、何故なら動画の彼は、私に布団をかけて机へもどっていく。なんでよ、いくら可愛くなくても、全裸で女の子が寝ているのに何もしないって! なんなのよ! もう! と枕を投げたが、ガラスケースで守られたラックにダメージはない。

 まくらを戻して、ベッドに座る。とりあえず今彼がいなくてよかった、とんでもなく理不尽な理由で罵倒してしまうところだった。冷静にならなくては、とりあえずまだ動画は残っている、全部確認しよう。

 止めておけばよかった、人間知らなくていいことがいっぱいある、いっぱいあるんだよ! いかん、状況は悪くなるばかりだ。動画によると、三回の大の字からのベッドメイクの後、スマホに裏拳が飛んできて、一分ほど画面がシーツのアップになったあと、彼の驚いた顔に変わる、その後カメラは同じ位置を撮影し始める。これはもう間違いなく彼にばれた、スマホの画面の前に本を置いて隠していたが、裏拳で倒れたのだ。これはまずい、どうしよう! 何も無かった上に盗撮発覚とか、追い出されるぐらいじゃすまないかも。

 頭痛い、考えすぎもあるが、悩みのあまり床を転がって頭を打ったことは、彼には内緒だ。とりあえず、先をみてしまおう。それから二度ほど大の字を披露した私は、やっと落ち着いたらしく静かに寝ている。彼は静止画のように、机に向かっている、時計が正確ならば朝の五時ちかくに部屋から出ていく、一時間ほどして戻ってきて、シャツやスラックスなど着替えをもって出ていき、三十分ほどして着替えてもどってきて、鞄を持って出ていく。

 とりあえず全部みたので、動画を消去して整理してみよう。朝まで仕事、いやバイトして、一時間ほどいなくなったが、シャワーを浴びて、サンドイッチを作って、そのまま昼の仕事に? 寝ないでいいタイプの人なのだろうか? そもそも人ではなくて、アンドロイドとか? 未来の私が送ってくれた青い猫の新しいタイプのやつとか? そうそう、そういう事にしよう、だったら手を出さないのも説明つくし。あーよかった、よかった。

 だめだ、へんな妄想で逃げている場合ではない。ちゃんと考えなければ、問題の一つ目は、彼に盗撮がばれたことだ、これは土下座して謝って、最低でも追い出されるぐらいで許してもらえるように頑張るしかない。そして二つ目は、彼が泊めてくれた理由がさっぱり分からなくなってしまったという事。下心が無いとすると、男性が好きなタイプの人とか? さっぱりそんな様には見えないが、知り合いがいるわけではないので、分からない。もしそうだったとしたら、他人を泊めたりするだろうか? 分からない、もう答えがでる気もしなくなってきた、誰かたすけて。おぉー、相談できる人を思い出した。

「してない!」

 ミキさんは要件を言う前に電話先でズバッと言い切った。

「まだなにも聞いてないです!」

「日曜に話した時から気にしてたんでしょ?」

「してましたけど、なんで分かってたなら言ってくれなかったんですか?」

「言わないほうが、押し倒しやすいかなぁと思ったんだけど、だめだったみたいだね。」

「うぅ、だめでした。どのへんでしてないと?」

「そうだねぇ、いくら眠くても初めてで起きないってことはないだろうし。貴方たち目線の合わせ方が、もう初恋中の中学生みたいで、見てるこっちが恥ずかしくなるぐらいだったし。」

「そ、そんなにですか?」

「そうそう、それに貴方が下向いていた時、貴方の腰に触ろうとして止めたのよ。一回でもした相手を触らないって、無いと思うんだけどなぁ。」

「そうなんですね、勉強になります。」

「それで、どうするの?どうするの?」

 ミキさんの声はすこぶるうれしそうだ。

「彼って、もしかしたら男の人が好きとか?」

「無いと思うなぁ、私そっち系の知り合い数人いるから、判別できると思う。それに、貴方を見る時に、すっごいラブラブなビーム出てた気がしたんだけどなぁ。同じ部屋にいても我慢できるって彼ってはすごい精神力なのかも?」

「精神力というか、徹夜で仕事してるみたいで、そっちが忙しいというか、気を紛らわしているというか。」

「それって、もしかしてあの夜持って帰ったやつじゃないの?」

「たぶんそうみたいです、ずっとキーボードを叩いてます」

「ふーん、それってさぁ、貴方の為に受けた仕事みたいよ。」

「えぇ! どういうことですか。」

「詳しくはわからないけど、貴方が見えた時に、彼がそんな事言ってた、服やネックレスの為なんじゃないのかなぁ?」

「服……実は、あの日着ていた物以外にも数十着と、靴と鞄もかなりの数を彼買っていたみたいで、もうクローゼットが凄いことに。」

「それは凄いね、良かったじゃない?嬉しいでしょ? 困るけど。」

「うん、とっても困っていますけど、嬉しいです。」

「なんかあるのかもしれないけど、貴方を大事に思ってくれているから手を出さないんだと思うよ。服ありがとうって抱きついてあげたら? もし、今のまま離れてしまったら後悔するでしょ?」

「うん、それはあるかも。」

「じゃがんばって、また電話してね。」

 そう言ってミキさんは電話を切った。ちょっと抱き着くくらいなら、出来るかもしれない。しかし、その前に土下座しなければ、そんなセットおかしいし! 抱き着いてしまって、その後は、流れでしてしまって、その後に謝るとか。無理か、先に土下座が必要だ、あぁーバカな事する前にミキさんに電話するのだった。


 私はおかしな人だ、バイトが終わって帰る前に必死にメイクしている、先輩が不思議そうに見て帰っていく。

「今日もやってるわね」そう言ってチーフが横に座る。

「はい、チーフ、先輩達帰るときに三回ノックしますけど、あれってなにかおまじないですか?」

「おぉー気が付いたのね、あのスタッフ用の出入り口の上に彫ってある文字見える」

「イタリア語ですか?」

「そう、ちょっと日本人には発音しずらくてね『人が成長する場所であれ』って書いてあるの」

「お店のスローガンみたいのですか?」

「そんなに堅苦しいものじゃないわ、みんなそれぞれ解釈は違うだろうけど、忘れてないよってお店に伝えるためにノックして帰るのよ。分かってる、なんで教えないのって思っているのでしょ、でも自分で見つけたら忘れないでしょう。」

「なんか海外の学校みたいでかっこいいですね、私もノックしますね、自分が成長できるように」

「三回ノックするのは、自分と、仲間と、お客様よ。みんなが成長しないと良い場所にはならいのよ」

「だからみんな、私が失敗しても、大丈夫って……。」 

 私は自分しか見てなかった、失敗してはずかしくて、逃げ出したいっていつも思っていた。だけどみんなは、ちゃんと仲間だって思ってくれていたのだ。なんで私はこんなわがままなんだろう。そう思うと泣けてきた。

「ほんとに貴方は可愛い人ね」

 そう言ってチーフは抱きしめてくれた。可愛くなんかない。

 彼の事だってひどい事する人じゃないって、何処かで分かってたのに疑って、勝手に答えだして、満足していた。こんな私は嫌いだ。彼は優しいから泊めてくれてるだけで、こんな私には触りたくないんだ。昨日の事、今までの事、全部謝って出て行こう、あんないい人のそばに、嫌な女がいるのは耐えられない、それが自分ならなおさらだ。


 決心が鈍るのが早すぎる、私はさっきから鍵を握りしめて、鍵穴を見ている。もし彼が帰って来ていたら、謝って、それでおしまい。もしいなかったら、手紙を置いて、出ていく。そうしようって決めたのに、ほんと意気地なし。

「大丈夫?」

 ふいに彼の声がして、びっくりする。

「あ、あの! えっと。」

「とりあえず、入ろう、ね?」

「はい。」

 彼の背中をついていく、だめだ、やっぱりここにいたい。彼、ゆるしてくれるかな? 不安で息がくるしい、あとちょっとしかいれないのかな。

 彼が机の前で立ち止まる、あと五分ぐらいかな、怒られて、荷物まとめて。どうしよう泣きそう、なんで今日はこんな簡単に泣きそうになっちゃうのだろう。

「あの、夜に録画してた件……なんだけど」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 背中を向けたまま話し出した彼を止めるように、床に手をついて謝る。私はずるいやつだ。

「ちょっと、やめてよ」

 そうだよね、ゆるしてもらえないよね。

「すぐ、でてくね。」

「え! ちょとまって、いくとこ出来たの?」

「無いですけど! ここにはいられないし……」

 私は何を怒っているのだろう、もうわけがわからない。

「昨日の夜の事なら謝るよ、なるべく見ないようにはしたけど、布団かけるときに、その少しは見えてしまうから、その、ごめん。」

「え! もしかして初日の朝も、それで謝ったんですか?」

「えっと、そうだけど、何か別の事だった?」

「もう! 紛らわしすぎです!」

「えっと、別の事って?」

「いや、その……。」

 勢いで怒鳴ってしまったが、いつの間にか正座して正面に座る彼の目を見ることができない。たぶん何も無かったし、彼にでていく説明も出来ない。どうしよう。もういいか、聞いてしまおう。

「あの……私に……触りましたか?」

「いや、一度も触ってない」

 顔は見れないが、その言葉はいつもの優しい声とは違い、少し大きな声でちょっと怒っているようにも感じる。

「そんなに……そんなに、触りたくないほど、可愛くないですか? そんなに私のこと嫌いですか!」

「そんな事……。」

 彼の言葉が止まって、いつの間にか強くつぶっていた目を開けると、私は泣き出していた。

「ごめんなさい。」

 とっさに彼に背中を向ける。彼にこんな取り乱したところ見せたくないのに、涙が止まらない。最低だ、さっきから突然怒り出して、怒鳴ったり、泣き出したり、なんなのよ。

「すいません、ちょっと……落ち着きました。」

 どれくらい時間がたっただろう、彼の方に向き直ると、彼は正座したまま、そこに座ってまっていてくれた。下を向いて、ちょっと疲れた感じ、それはそうだ、こんな面倒な女が部屋にいれば、疲れる。

「私は、家事も出来ないし、お金もないし、泊めてもらうなら、そういう事されるのもしょうがないのかなって、覚悟して、その……。」

「……僕は、君に触らないんじゃなくて、触れないんだ。仕事のこととか、付き合っていた女性との事とか、色々あってかなり精神的に弱って、ここに逃げて来たんだ。今はすこしましになったけど、かなり危うい時期もあったんだ。ってちょっと!」

 泣き疲れて、ふわふわとして、なぜかうつむいて話す彼の頭をなでたくなって手を伸ばしたが、直前できずかれ素早く逃げられた、人って正座でもあんなに早く立ち上がれるれるものなのか。

「私が触るのは?」

「だめ……なんていうか、そうじゃなくて、僕はその、見た目ほど草食系じゃないし、二十歳の頃なら君を見た日に飲みに誘った思う、それぐらい魅力的だってことなんだけど……。」

 私が首をかしげると、彼はあきらめたように、大きなため息をついて話し出す。

「若い時に、風俗店に なんで僕はこんな話を……」

 私と目線が合うと、下を向いて、再度ため息をついて、話し出す。

「行く前はすごく楽しみで、ここはいらなかったかも、とりあえず、終わってから、すごく後悔して。自分を好きな人以外とは、やめようって、そう思ったんだ。だから、君とそういう事になったら、泊めた分を、そうやって払わせてるって感じるわけで、すごく落ち込むだろうから、今の自分じゃ立ち直れないと思う。だから、寝る時は、何か着て……。」

「それは! いちいち脱がすのめんどうかなと思ったらからで!……すいません。ちゃんと着ます。」

「いや、えっと、お願いします、さっきも言ったけど、君は魅力的だから、覚悟してるとか理性が飛ぶような事は言わないで。それと、お互い触るのはやめよう……。」

「はい、わかりました!」

「え、怒るとこなの?」

「いいえ!」

 気のせいだ、怒ってない。なんなのよこの展開は、とりあえず、もうベッドでは寝れない、自分のマットレスを出さねば。クローゼットから、出そうとすると。

「今日は、徹夜になるので、ベッド使ってください。」

 私の為に受けた仕事、問い詰めたいが。今は、もう、眠い! 

「では、お言葉に……。」

 ベッドに倒れる、あぁー吸い込まれていく。

「……他人に自分から声をかけられるところも、素敵ですよ。」

 なにそれ、すごいとりあえず言っとけな誉め言葉は、明日問い詰めてやる。


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