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永久不滅

僕はロミオ、毒は飲んでも短剣は持たせない



「坊ちゃん、お疲れ様でした」

「うん、まず僕に謝罪をしろ」

「おや坊ちゃん手首を少々擦りむいてしまったようですね、すぐに消毒致しましょう。化膿しては大変です」

「うん、謝罪が欲しいな」

「パーティーの方はご心配には及びません、坊ちゃん型アンドロイドに代行していただいております故」

「うん、謝罪って…ん?あのトンチキに代行させてるのか!?あのカタコトの瞳孔開きまくったロボットに!?」

「はい、つつがなく」

「うそじゃん…」


ハディの叫びが合図のように倉庫にいたものは皆一網打尽、無論口説かれていた女もハディを殴っていた男もとっ捕まった。ハディを縛っていた縄をほどき、手首と口内の応急処置を施すジークフリートの奇行により突撃のタイミングが掴めずまごついていたらしい我が社が雇った精鋭たち。もうこの男の酷い恋愛癖はどうしようもないのだからいい加減慣れてくれてもいいと思うのだが、部隊の指揮を取り仕切るガスに聞いたところジークフリートの恋の行く末が気になるらしい。いや思春期真っ盛りの男子か!犯罪者なんだから恋だのなんだの言ってる場合じゃないだろ、こっちは一歩間違えれば死だぞ。従者の恋のために死ぬとかそんなのごめんだ、美女犯罪者(主人を殺しかけた)とイケメン執事の禁断の恋の成熟のタイミンングで殺されるとかもし後世に語り継がれるとなったら絶対に誇張されるに違いない。有る事無い事言われてそのうちハディはヴィランになるだろう。

この男がどんな女とくっつこうと知ったことではないがこんな馬鹿げた色恋沙汰に巻き込まれてこの世を去るなんて誰がしてやるものか元気に寿命を全うしてやる、僕の決意はロンズデーライトよりも硬いのだらから。純愛という石っころなんぞに負けてなるものか。



「はぁもういい、すぐ会場に戻るぞ」

「坊ちゃん本日はもう屋敷に戻りましょう、体を休ませないと」

「体は問題ない、次期グレース家当主がアンドロイドにパーティー任せるトンチキ野郎と認識されたらどうする、主催者にも他の来賓者にまでうちの品位が疑われかねない」

「いいえ坊ちゃん、本日は連れて帰ります。怪我もそうですが疲れが後に響きやすいのですから休めるなら休んだことに越したことはないです」

「でも」

「奥様からも休むよう言付かっております、それに私が坊っちゃまに休んでいただきたいのです」

ハディのまだ小さな手を両手で包むように握り聞き分けのない子供を諭すように優しく語りかけるジークフリート。彼は出会った時からこうして仕事に忙しくしている両親に代わってハディのそばに居てくれる、きっと誰よりもハディのことを知っているのはジークフリートだ。

「…ジーク」

「はい」

「お前人妻には手を付けるなよ」

「言うに事を欠いてそれですか」

ハディは己の従者がいつ間男になりかねかいか気が気ではない。





「うぅ…ジーク、ジークゥ…」

「はい坊ちゃんジークはここにおりますよ。ですから大人しく横になっていてください」

「うそだ、そういって僕を置いていくんだろう、一人にするなよぉ…ぅぐっ」

「ああほら、言わんこっちゃない。フラフラなんですからベッドで寝てて、ほら肩までちゃんと布団かぶって」

「うぅ…」

昨夜の誘拐事件あと屋敷に戻りハディは熱を出した。気こそ強い性分のくせに繊細で幼い頃からよく熱を出す、身体が弱ると気も滅入るものでいつもの勝ち気な表情はなりを潜めデロデロの泣き上戸のようになる。

「坊ちゃん何か食べたいものはありますか?」

「ない…」

「食べないと元気になりませんよ」

「…みかんがいい」

「みかんゼリーですね、少々お待ちください」

「おい待て、どこ行くんだ、ここにいろ」

「ゼリー取って来るんですよ、いい子だから大人しく寝て待っててください」

「いやだぁ置いていくなぁじーくぅ」

「すぐ戻りますからねー」

「薄情者ー」

閉じた扉の向こうからも未だジークフリートを呼ぶ声を無視してキッチンへ足を向ける。熱を出すたびにフルーツゼリーをねだるハディのためにジークフリートは昨晩から作り置きしてしたみかんゼリーを持ってまた部屋に戻る。大人しく待っていろと言われたにも関わらず彼の主人は聞かん坊でジークフリートを探して部屋内を彷徨い挙げ句の果てに行き倒れていた。

「坊ちゃん、私はベッドで寝ているように言いましたよね?いくら絨毯が柔らかくたってそこで寝るには身体に負担がかかって辛いでしょうに」

「抱っこ、抱っこしろ」

「また今回は随分甘えたですね」

「いいから、ジーク」

「はいはい、仰せのままに」

行き倒れた主人を抱き上げ今日でもう何度目か布団の中に戻す。ゼリーを小さく掬ってハディの口元に寄せれば大人しく口内にスプーンを迎え入れるが三分の一も食べないうちに口を開けなくなり布団の中へと潜り出した。その行動が餌付けされる雛鳥から冬眠を始めるアナグマのように見え面白い、高熱にうなされているハディには口が裂けても言えないが。

「坊ちゃん、何かございましたらお呼びください」

頭から毛布を被りすっかり寝る体勢に落ち着いた主人に退出する旨を伝える。

「ジーク、」

「はい」

「寝るまででいい、ここにいろ」

「かしこまりました」

熱を出したハディは迷子のような目でジークフリートを見つめる。普段は人の気配が気になって寝れないと豪語するのだが、この時だけは人肌が恋しくてしょうがないらしい、手を繋ぐかと提案したことがあったがそれはすげなく拒否された。仕え始めたばかりの頃はこの小さな主人の微妙な境界ラインが掴めずまごついたものだ、ハディが向ける背の側に椅子を寄せ寝入るのを待ちつつ感傷に浸る。


「おやすみなさいませハディ様」

あっという間に寝入ってしまった主人からの返事はない、高熱によっていつもより荒くなった呼気だけが静かになった部屋を唯一響かせる。といってもその小さすぎる呼吸音は傍に座るジークフリートにしか届いていないだろうが。

結局ハディの目が覚めるまで傍に居続けるジークフリートなのだが気難しい主人にとってはこれが正解、初めて熱を出して目が覚めた時傍にいなかったせいで一週間は口をきくどころか目も合わせてくれなかった。



「んん…」

「おはようございますハディ坊ちゃん、よく眠れましたか?」

「…なんでまだいるんだ」

寝起きの悪い坊ちゃんは執事が居ないは居ないで機嫌を損ね、居たら居たで怪訝な顔をする。此奴はきっと酒で記憶を無くすタイプ、己の主人が酒などと言う小石で失敗せぬよう一生支えていこうと胡乱気な目をするハディのボサボサ頭を整えつつジークフリートは決意した。

私はジュリエット、愛しい貴女を一人にはさせない

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