ヲタッカーズ20 虹幸鳥、飛べ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
時空海賊、ギャング、宇宙人の聖都侵略が始まった!
聖都の危機にアキバのCharlie's angels
"ヲタッカーズ"が立ち上がる!
オトナのジュブナイル第20話です。
今回は、史上初の宇宙往還機の公開フライトで事故が発生、ヲタッカーズの活躍により、秋葉原は大惨事を免れます。
しかし、裏にはマッドサイエンティストや秘密科学結社の陰謀が渦巻き、さらに闇の世界に生きる女傭兵が現れて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 星空の落とし物
美少女の頃、私の次元が消滅した。私は生き延びテリィ様を求めて秋葉原へ。でも、私が秋葉原に着いた時、私はメイドのママだったけど、テリィ様は成長され、ヲタクになっていた。能力を隠してた私は、秋葉原を救うためテリィ様に正体を明かした。その日から、私はムーンライトセレナーダー。
今は、テリィ様や秋葉原防衛秘密組織と共に異次元人や悪党の脅威から秋葉原を守っている。私には、友達も仲間もいる。そして家族も。長年1人だった私にやっと居場所が出来た…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今宵の御屋敷は"ミユリたん"!
ミユリさんのお誕生日イベントw
「3!2!1…乾杯!僕達のメイド長、ミユリさんに!」
「待って。ヲタクに。アキバでつながってる」
「ヲタクに乾杯!」
で、御屋敷は高層タワーの最上階にあるンだけど…眼下を何と真っ赤な彗星が通過スルw
「きゃあ!」
「何なの、アレ?!」
「UFO?」
そのママ、中央通りのビルの谷間へ消えるw
「嫌な予感w」
「とにかく、止めなきゃ!大惨事になるわ!」
「私達に任せて、ミユリ姉様!」
飛ぶ系ヒロインのエアリとマリレが文字通り窓から飛び出し紅い彗星?を一直線に追う!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜遅く。パーツ通りのとあるゲーセン地下深く秘密裡につくられたジャドー司令部。
「結局、お騒がせな"紅い彗星"は、蔵前橋通りの手前に墜落したのだけど…カプセルだったのょ。中に誰か乗ってるカモ?」
「気を付けて!アキバ侵略の先兵では?」
「良い?じゃカプセルを開けるわょ?」
ヲタッカーズ立会いでジャドー隊員が謎だが黄金と逝うムダにハデなカプセルを開ける…
「ウッソォー!」
「何てコト?」
「オーマイガッ!」
お姫様だっ!セーラー系ミニスカコスチューム?スーパーヒロインか?
金髪、巨乳…コレで床上手だとミユリさんの天敵要因を全て満足だがw
「バイタル安定。呼吸も正常。それ以外は不明です」
「星空からアキバに落ちて来たお姫様?」
「んー。でも、池袋から流れて来たメイドの線もあるわね」
無遠慮な感想を述べ合うヲタッカーズ。
ドクターが注射を打つと…針が折れるw
「強靭な皮膚…やはり地球外生命だわ。人間じゃないコトは確かね」
「彼女?が乗って来たカプセルを分析する必要があります」
「あ、僕は古代宇宙人語が読めます!退屈しのぎにオカルト雑誌"ラー"で勉強したから。因みに"ラー"は創刊号から読んでるし」
名乗り出たのは、今や"国民的ヲタク"のダマヤで、彼はヲタッカーズのマリレのTOだ。
かく逝う僕はヲタッカーズのリーダー、ムーンライトセレナーダーことミユリさんのTOで。
共にジャドー司令部の出入り許可をもらってるw
「おお。何が役に立つかわからないモンだねぇ」
「では、ソレを証明して。ジャドーの優秀なスタッフ以上の活躍を期待スルわ」
「お任せを。レイカ司令官。必ず"姫"の正体を突き止めます」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局"姫"も眠ったママで、未明に解散となったが、その日、アキバは朝から大騒ぎだ。
「いよいよ、レインボーラッキーバードの打ち上げね!ミユリ姉様、せっかくだから見に行く?」
「見ない。コレからテリィ様とデートなの。"姫"騒ぎも気になるけど…久しぶりに楽しもうと思って。テリィ様と2人きりで普通のデートをしたいワケ」
「おぉリア充!」
レインボーラッキーバード"虹幸鳥"はアキバのスタートアップが開発した宇宙往還機。
軌道高度まで達する弾道飛行を行う旅客機で秋葉原〜地球裏側の各都市を数時間で結ぶ。
で、今日は乗客を乗せた初フライトだ。
「あらぁ…でも?」
「な、何ょ?」
「姉様のそのおっしゃりようは…納得してナイでしょ?内心、デートに乗り気じゃナイのね?自分に言い聞かせてるわ」
「え…違うわ!本当に楽しみにしてるし」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ワラッタ・ワールドワイド・メディアHQタワーのサリアCEOルーム。
「…レインボーラッキーバードの打ち上げまで、ついに数時間を切りました!初の商用宇宙往還機"虹幸鳥A3000"です…」
CEOルームには大小様々なモニター画面が無数にあるが、今日は全画面ニュースショー。
「あのね。私も虹幸鳥の初フライトに招待されてたけど断ったの。馬鹿な連中と搭乗したくない。無意味な人生に答えを求める人達で一杯でしょ?で、貴方は答えを出したの?」
「はい?何の答え?」
「貴方の天職ょ!」
世紀の瞬間を見ようと集まる社員を前に、今日もパワフルなサリアCEOが吠える。
相手は"国民的ヲタク"のダマヤでヒョンなコトからワラッタに腰掛け入社中だ。
…僕の元カノ、ヒカリの紹介だけど←
「あ、俺のやりたい仕事ですか?未だ決めてません」
「え?何で?」
「だって!サリアさんから聞かれて、未だ12時間ですょ?しかも、その間大半は寝てたので」
「私は貴方に王国を築くチャンスを与えたのょ?なのに寝てたワケ?」
「夜なので」
「私の昨夜の睡眠時間を知ってる?2時間ょ?私は、人生を最大限に生きたいの。毎日少しでも何か学びたい。貴方も怠けないで!」
「…実は、昨夜ネット診断をヤリました。スキルを入力するとピッタリの仕事を見つけてくれるンです!その結果は…八百屋!」
「えっ?」
「当社のマーケティングでも、八百屋は将来性もアリ、私生活の時間が取りやすいとアリます。どうでしょう?」
「トンでもなくバカバカしいわね」
「はい?」
「あのね。天職はね、ネットじゃ見つからないの!天職は自分の中にある。ヲタッカーズはスーパーパワーがアルからヒロインなの?違うでしょ?必要性があるからょ。秋葉原を守るというね」
「は、はぁ」
「自分を見つめるの。人生で何をすべきか見つけ出しなさい。あと48時間あげるわ。くだらないネット診断はもうヤメて!」
「わ、わかりました…」
「必ず答えを見つけて来なさい。ソレまで…get out!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷の裏を潜り酒場風にしたら、スッカリ居心地が良くなっちゃって、すっかりヲタッカーズの秘密基地になっちゃったンだけど…
今朝はミユリさんとデートに使うw
僕は働き方改革で無理矢理の休暇←
「うわっ!素敵なメイド服だっ!」
「え?やはりテリィとのデートはメイド服かなって。ジャドーから戻って、急いで"胸の谷間"をつくってお待ちしてました」
「…外出スルかわからなかったから、コレ持ってきた。新々秋楼の鉄板焼き棒餃子と玉子炒飯」
「わ、私の大好物なのれすwうるっ」
「知ってる。で、虹幸鳥の打ち上げの実況放送は?」
「ソンなの見なくても平気です」
「宇宙大好きのミユリさん。テレビつけても良いと思うょ」
「そーですか?!じゃミュートで」
そして、僕達はソファに寝転びながら、画面の中で虹幸鳥が無音で飛び立つのを見送る…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
中継は、厳冬の蒼穹の中へ点となって消えて逝く虹幸鳥を追って終わるのだが…
だが!その数分後、成層圏の果てに到達した虹幸鳥のエンジンが突如火を噴く!
ツインエンジンのNo.2が宇宙空間の中で無音の爆発!虹幸鳥は操縦不能に陥るw
衛星軌道を離脱、エンジンから長い焔を噴き出しながら大気圏再突入を試みる!
御成街道架道橋脇の雑居ビルに設置されてる大型ビジョンが臨時ニュースに切り替わる。
「…虹幸鳥を光学追跡していた外神田天文台によりますと、衛星軌道に達した同機のエンジンが爆発した模様です!」
「ええっ?何だって?」
「詳細は、分かり次第お伝えします…ヲタッカーズがこの放送を見てるコトを祈ります」
大スクリーンを見上げて、ヲタク達がザワめく。
「見てるわ!」
その中からロケット兵装備のマリレが飛び立つ。
「…レインボーラッキーバードの初フライトには、ハンナ機長以下、招待された乗客も含めて22名が搭乗しています!…この放送を、お願い、ヲタッカーズは見た?」
すぐさまインターネットにUPされたニュース動画に向けて次々と声援の弾幕が張られる。
「ヲタッカーズ、GO!」
「頼むょ!ヲタッカーズ!」
「見たから!」
妖精のエアリが決意の眼差し。
小声で"飛行呪文"を唱える。
第2章 レインボーラッキーバードA3000
「メイデー!メイデー!こちらレインボーラッキーバードA3000!メインエンジンNo.2に故障発生。操縦システムがダウン。本機は自由落下状態に…いえ、墜落するわ!」
「レインボーラッキーバードA3000。こちらアキバコントロール。緊急事態を宣言スルか?」
「宣言するわ!ギブアップ!ゲームセットよっ!」
コクピットでは宇宙服を着たハンナ機長が萌える機体を巧みに操り突入角を探る。
右のエンジンから火を噴く虹幸鳥は熱圏に侵入、雲海を突き破って降下を続ける。
「あ、アレは?」
「えっ?」
「ヲタッカーズ?助かったわ!」
虹幸鳥の最先端に取り付いたのはマリレだ。
ロケット兵装備の脚部を宙に向けて逆制動。
「手伝う?」
「エアリ、遅い!」
「ごめんね、渋滞でw」
続いて現れたのはエアリで、虹幸鳥の機尾に回るや、消火呪文でエンジンの火を消す。
しかし、アキバの高層ビル街は目前に迫り…このママ墜落すれば、大惨事は免れないw
「マリレ、神田川に不時着水させるわよっ!」
「ええっ?どーしたら、その(おバカなw)発想が…了解!」
「御搭乗の皆様、本機は間もなく着水致しますのでベルトをお締めくださーい!」
川の両岸に派手に水飛沫を飛び散らかせながら虹幸鳥の機体を滑り込ませるw
ハンナ機長の卓越した操縦手腕が横風を制しアレだけの事故でも軽傷者のみ!
「最高!最低な事故だったのに最高の気分ょ。ありがと、ヲタッカーズ!」
「私達、最高のチームでした!コチラこそ御一緒出来て光栄でした、ハンナ機長!」
「…でも、貴女達とチームを組むのは、コレで最後にしたいわ」
ハンナ機長がヘルメットのバイザーを上げたら…金髪美女がカメラ目線でウィンク!
俺か?…とニュース視聴中の男性全員が誤解する中、現場に家族連れが通りかかるw
「モノホンのヲタッカーズだっ!」
「挨拶しなきゃ、マリレ」
「そうねw」
驚く両親をさて置いて、子供達がワラワラと駆け寄って来てエアリとマリレを取り囲む。
「わーい!ヲタッカーズだ!」
「はい。こんにちわ、ヲタッカーズょ。でね、エアリって地球が冷え固まってからズッと生きてるの。だから、ホントはスンゴイお婆ちゃんなのょ?」
「ええっ?トリビア!知らなかったょ僕!」
「ねぇマリレ。ソレって言う必要アルのかしら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
虹幸鳥のハンナ機長は、ジャドーのレイカ司令官とは、宇宙作戦群で同期だったらしい。
エンジン爆発と"リアルの裂け目"の影響についての事情聴取で機長はジャドーを訪問。
卓越した操縦手腕によりアキバを大惨事から救ったヒロインとして全員から歓迎される。
「みなさん!"神田川の奇跡"ハンナ機長がお見えです!」
「ジャドー、全員整列!」
「ようこそいらっしゃいました!ハンナ機長!」
「こんにちわ、みなさん。いつも秋葉原を守ってくださってありがと!」
「"神田川の英雄"に敬礼!」
「あら」
「はじめまして」
「どうも」
「光栄だわ」
ていねいに1人1人と握手し声をかけて回るハンナ機長にレイカ司令官は…ん?渋い顔だw
「彼女が来るって知ってた?」
「いいえ。でも問題ナイのでは?今をときめく"神田川の英雄"ですょ?」
「こっちに来るわw」
レイカ司令官は、ますます顔を曇らせる。
「ハンナ」
「レイカ、また会ったわね?」
「長居はしないわ」
「その謎の"姫"ってのに会わせてょ?」
ハデな彗星騒ぎにはなったが、一応機密事項のハズなのに、ハンナ機長は平然と訊ねる。
「こっちょ」
レイカ司令官の顔は、ますます渋く…傍らにいるミユリさんが少し面白そうに僕に訊く。
「ちょっち険悪な雰囲気ですね。2人は何かあったのでしょうか?」
「さぁ?…でも、ハンナ機長って良い匂いがスル」
「バカ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドーメディカルセンター。
"姫"を見下ろすハンナ機長。
「昨夜、カプセルで秋葉原へ飛来しました。正体は不明です」
「量子スキャンは?」
「モチロン、やったわ」
「X線ビジョンでデータの確認も?」
「うっ。も、もちろんw」
「レイカ。直ぐにやらなきゃ!全くジャドーも大したコトないのね。情報はナシ?」
文字通り、苦虫を噛み潰したような渋い顔のサリア司令官。
屈辱的な窮地を救うのは…オカルト雑誌"ラー"愛読者だ。
「ジャドー分析官のダマヤです。カプセルのデータログが解読出来ました。母星Xを出た後、カプセルはダマラ・ヤマラを通過してる」
「カレーの香辛料?」
「星の泉のコトで宇宙の観光地らしい。ソコでは時計が止まっている。だから、"姫"は若いママなんです。実は、エアリと同じスーパーお婆ちゃん…わ、わ、萌える!服が!」
突如ダマヤの服が軽く炎上スルw物陰ではエアリがコッソリ"引火呪文"を唱えている…
「ソモソモね。地球では生命の老化は遅くなるのょ」
「イケてる話だ。で…そろそろ大事な話を」
「何?」
「虹幸鳥だけど…機体が低軌道に達してから爆発が起きたらしいの」
「ソレが?」
「宇宙関係のトラブルって、通常は打ち上げ直後に起きるモノだから」
「なるほど。虹幸鳥は、アキバのスタートアップで作られた宇宙往還機だ。ウチで調べよう」
「ウチ?」
「ワラッタ・ワールドワイド・メディアだょ。僕は一応ワラッタの社員ナンだぜ」
「あのね。この件は機密事項なの。ジャドーが調査します」
「じゃ一緒に調査しょうょ。ワラッタのオフィスにも来てょハンナ機長。"神田川の英雄"にコネがアルのをみんなに見せつけてやる!あ、でもサリアCEOにだけは気をつけてw」
「サリア?あのメディア界の女王様?なら、心配ナイわ。彼女は私にメロメロだから」
「え?彼女との間に何かアルの?」
「何もナイわ」
「なるほど!ところで、ハンナ機長とレイカ司令官は何で…あら?会話は終わり?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ワラッタ・ワールドワイド・メディア。
入って来るハンナ機長を見て、サリアCEOは慌てフタメキ口だけ動かしてダマヤを呼ぶ。
「ど、どうかしました?"神田川の英雄"ハンナ機長ですょ?」
「貴女、機長とお知り合いなの?」
「やれやれ。ボスもですか?」
「何が?ソンなコトより、私、何か歯に挟まってない?」
「いいえ。大丈夫です」
ドレスを引っ張り直しつつ出ていくサリア。
「機長さん!まさかモノホンと会えるなんて!いつ見てもホント空の女って感じね」
「どうも久しぶりね、サリアCEO」
「私のせいじゃないわ。未だ彼女とは続いてるの?私は別れる方に1万かけたけど」
「お生憎様。順調ょ」
「残念。じゃオフィスを案内するわ。ところで…ねぇ危ないパイロット商売ナンカやめてウチに来ない?年収は倍額を出すけど」
ジャドーに引き続き、傍らにいるムーンライトセレナーダーことミユリさんが僕に囁く。
「サリアさん、圧倒的に変ですね」
「うーん。前から制服系に弱いとは思ってたけど、これホドとは。前に地底超特急の運転士に酔って甘いメールを送ったコトもあるらしい」
「おぉ制服フェチさんでしたか…ところで、この前は私達のデートが中断してしまって」
「仕方ないよ。大惨事の一歩手前だったンだから」
「いいえ。あんなの絶対ダメです。必ず埋め合わせをします。ねぇ一緒にデートの緻密なタイムスケジュールを組んで実行して逝くのは如何でしょう?」
「そ、それは…ロマンチックだねぇ」
「テリィ様とは上手くやってきたいのです」
「僕もさ」
…ってキス的タイミングの盛り上がりが勃発したンだけど、ミユリさんのスマホが鳴動w
キスの前は、スマホの電源は切るか、マナーモードにしてから御主人様に迫りましょう←
「ハイ…ハイ。わかりました。向かいます」
「何?」
「レイカ司令官からでした。情報が入りました。虹幸鳥に土壇場で搭乗しなかった乗客がいるそぅです。名前はルナレ・ラズゥ」
「もしかして…"人類補強計画"で有名なマッドサイエンティストのラズゥ博士、の妹さん?」
「でも、今回の爆発事故は、いかにマッドサイエンティストのラズゥ博士でも無関係です。だって、服役中でしたから。今は、代わりに妹さんが博士のスタートアップを経営してるそうです」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田川沿いにある廃倉庫群のひとつ。
エンジニアが暗闇に向かって熱弁中。
「コレは、立派な無人の戦術戦闘機です。航続距離160キロ。人間を狙うには最適の暗殺ドローンです」
「操縦は?」
「飛行機と同様のコックピットで行います。今宵はコチラに御用意しました。御着席ください。一応、ベルトも締めて…」
「目標指示システムは?」
「ココを押すと照準が定まり、30ミリ機関砲弾が発射されます」
暗殺ドローンに赤いランプが灯り、音もなくローターが高速回転して闇の中を飛び回る。
「御苦労さま。報酬は上海のオフショア口座に約束した額の倍を…」
「そりゃどーも!」
「振り込まズにすみそーだわ」
標的ロックオン。高速チェーンガンがエンジニアをズタボロの射殺死体に変えてしまうw
「残念だけど宇宙往還機の方はヲタッカーズの邪魔が入って失敗だわ。今からプランBね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
デビルコープHQタワービルの最上階。
僕とミユリさんはルナレCEOを訪問。
「私がレインボーラッキーバードA3000の搭乗をキャンセルしたコトには、正当な理由がアリます」
「伺いましょう」
「明日の式典の件で問題が発生した。急遽社名を変えるコトになったの」
「運が良い話ね。まぁ仮に搭乗してもヲタッカーズに救われたけど」
「ラズゥ姉妹は、ヲタッカーズは嫌いだったょね?」
「あ、一応、機長のハンナも大活躍したンだけど」
「貴女は誰?」
「えっと、通りすがりのスーパーヒロインです。平時は"ヲタポケ"のアキバ特派員をやってて…」
「え?硬派な記事も描くの?"ヲタポケ"ってサブカル雑誌ょね?」
「あ、私は同行しただけなので…」
「何が聞きたいの?私が宇宙往還機の爆破に関わっているとでも?」
「そうです」
「あら。名字で判断して来るのね。私がヤマダでも同じ質問を?」
「でも、ラズゥですから」
「見た目と違って攻撃的なのね。私は4歳の時にラズゥ家の養子になったの。確かに、姉が1番優しかった。養子の私に自信を与えてくれた。でも、その後彼女は、アキバ支配を夢見てヲタッカーズに宣戦を布告、数々の罪も犯したわ。姉が重警備刑務所に入って、私は誓ったの。社名をデビルコープからヘヴンコープに変えて立て直すって。ラズゥの家名に頼らずに成功したい。わかる?」
「あんまり」←
「傘下のスタートアップが虹幸鳥の爆発を起こした部品を制作してる。このUSBメモリに部品の情報が入ってる。調査に役立てて」
「そりゃどうも」
「チャンスを頂戴。やり直したいの」
「…わかりました。失礼します」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
デビルコープを後にしてから、僕とミユリさんは中央通りを歩きながら話す。
ミユリさんは、僕にチラシを手渡す若いメイドに no thank you の微笑み返しw
「特に怪しい感じはしなかったな、ルナレさんって」
「そうですね…ちょっち!貴女!…テリィ様はどう思われます?」
「ただなぁ。ラズゥ家の人って、何かみんな変だょね」
「確かにそうですが…彼女のコトは信用出来そうです」
「そっか。やっぱりミユリさんって優しいンだね」
「…ねぇテリィ様。一体どうやってるの?テリィ様は、サラリーマンで、素晴らしい御主人様で、ミュージシャンで。私は、ムーンライトセレナーダーになれただけで嬉しい。でも、ソレが精一杯のギリギリです。その他はとても…」
「おいおい。ミユリさんらしくないな」
「スーパーパワーを隠してた時は、人生がシンプルだった。でも、突然選択肢が出来たのです。素敵な御主人様が現れ、仕事も選べる。そしたら急に行き詰まった感が…」
「僕も仕事とアキバの両立には苦労してる」
「とても、そうは見えませんが…」
「いや。今だって苦労の連続だょ。ムーンライトセレナーダーもミユリさんも、両方大事にしなきゃ」
「いつも優し過ぐるのです、テリィ様」
「自分を信じなきゃ。僕とのコトも、自分の心に聞けばわかるコトさ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部。
"にわか"ジャドー分析官となったダマヤがアーカイブを漁っていると興味深い事実が…
「あ!そーゆーコトだったのか!」
「どうしたの?」
「レイカ司令官とハンナ機長との不仲の原因が分かりました。エメラルド作戦ですね?」
「なぜソレを?」
「ファイルを相互参照してたら出て来て…」
遂に観念したのかレイカ司令官が話し出す。
「私とハンナは、ジャドーの前身の組織で一緒だった。隕石の情報が入り、ハンナと墜落現場へ出動した時のコトょ。夜で暗かったけど、クレーターで何かが光った。緑色の何かがね。私は、平気だったけど…ハンナは苦しみ出して失神したの」
「え?まさか"不機嫌ニウム"?」
「私が命名したの。彼女は、破壊しろと主張して譲らなかった」
「長官は反対を?」
「当時、秋葉原には危険なスーパーヒロインも多かった。邪悪な彼女達のパワーから街を守る術が必要だと思ったまで」
「もしかして、ハンナ機長もスーパーパワーの持ち主なのですか?」
「機密事項で答えられない…ところで、ルナレからもらったデータによると、虹幸鳥のエンジンを爆発させた部品は、客室の下に設置されていたわ。具体的には、座席23Bの下」
「ソレが何か?」
「乗客名簿では、23Bに誰が座る予定だったと思う?」
「さぁ?」
「ラズゥ博士の妹、ルナレょ」
「とゆーコトは…彼女は、黒幕ではなかった?」
「とゆーコトは、彼女は…標的だった?」←
第3章 バトル of アキバ
デビルコープHQタワーの屋上ヘリポート。
CEO専用ヘリにルナレが乗り込みtakeoff!
「今日は、さほど揺れないでしょう」
「ヘリは嫌いょ。統計的には安全だとわかってはいるけど。あら?アレは?」
「鳥?いや、飛行機か?」
いや!暗殺ドローンだw
2機編隊が急接近スル!
一方、神田川の廃倉庫の中ではコクピットにいる女が照準モード。
スコープに映るヘリをロックオンするや、容赦なく引き金を引く…
「ヤレヤレ。やっぱり現れたわね?楽しみが台無しだわ」
次の瞬間スコープにはヲタッカーズのマリレが映り弾丸を装甲で弾く。
さらに、暗殺ドローンを指差し何事か叫ぶ。女が音声をオンにすると…
「もっと強力な暗殺ドローンを寄越すべきだったわね!」
「あのね。私もバカじゃないわ。秋葉原の街中に暗殺ドローンを飛ばしてヲタクを狙ってるの。どうする?ヲタクか、ヘリか?どっちを守る?」
「マリレ、任せて!」
スコープの隅をメイド女子が横切る。
ヲタッカーズの妖精担当のエアリだ。
地下アイドル通りの雑居ビルの谷間を飛ぶ暗殺ドローンを発見。飛行呪文を唱え追う!
タッチの差で射撃を始めた暗殺ドローンの弾道に割り込み、防弾呪文で弾を跳ね返すw
「マリレ、ソッチは大丈夫?」
大丈夫じゃナイw
編隊を解いた暗殺ドローンは1機はヘリを、1機はマリレを狙いAAMを発射!
マリレもロケット兵装備のCIWSを起動、辛くもAAMを撃墜スルが爆風で…
「ぎゃう!」
叩きつけられるようにヘリポートにメリ込み失神wロケット兵装備も破損スル。
その間も自動で暗殺ドローンを追うCIWSが2機とも撃墜wマリレも意識が戻る。
「危ないっ!」
ローターを損傷したヘリが、クルクルと回転しながらヘリポートに降りて来る。
飛行不能の身だがマリレが駆け寄り、墜落寸前だったヘリを安全に着地させる。
「ありがと、ヲタッカーズ!もぉゴッサムに帰ろうかと思ったわ」
「もう大丈夫ょ。ルナレCEO」
「何なの?さっきのドローンは?」
マリレは告げる。
「貴女は、命を狙われています」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速ジャドーの特殊部隊が出動し、マリレ達が撃墜した暗殺ドローンの残骸を回収スル。
「このドローンは…超最新式だ。殺人鬼モードの時の俺の親父とかが作り出しそうだょ。でも、間違いなく人間のつくったシロモノだ。ソレは間違いナイ」
「なるほど。だから、ドローンの残骸から指紋が取れたワケだ」
「指紋が?誰の?」
「通称、ゴル子13。腕利きの女傭兵でインターギャング、テロリストとも関連が深い。誰かが大物を消したいと思うと、必ず姿を現わす女だ」
「やはり、誰かがルナレを狙ってる?」
「恐らく。ん?ムーンライトセレナーダーは?姿が見えないけど」
「ルナレCEOに式典を中止するように説得中です」
「CEOも姉さん同様ガンコだから」
「式典会場の警備にジャドーの特殊部隊を派遣しましょう。ゴル子13による暗殺を何としても阻止しなくては」
「そうね。私も行くわ」
腰を浮かすのは居合わせたハンナ機長だ。
渋い顔のレイカ司令官にダマヤが耳打ち。
「ハンナ機長とキチンと話をしてください」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ダマヤに諭された?レイカ司令官が、出撃前のハンナ機長に通路で恐る恐る声をかける。
「あのぉ」
「何ょ?レイカ。私に命令スル気?」
「いや。貴女と話せと…」
「誰が?ソレに"不機嫌ニウム"を隠し持ってる貴女と何を話すの?」
「貴女には、絶対に使わないわ」
「でも、レイカが長官を辞めたら?次の長官は使うでしょ?ソレに首相官邸から使えと言われたら貴女は?やはりレイカとは話し合えないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
電気街口から出た旧家電店が並ぶ界隈は"アキバのタイムズスクエア"と呼ばれている。
僕達が昔、ストリートファッションショーとかを仕掛けた場所が今回の式典会場らしい。
ルナレCEOは既に現場入りしている。
「姉は、32連続終身刑を受けてる。出席者は少ないハズょ。でも、式典を挙行するコトに意味があるの」
「命を狙われているのに挙行スルのは、余りに危険過ぎるわ」
「ムーンライトセレナーダー。私は、会社のイメージを変えたいの。姉の悪夢をアキバから払拭したい。だから…力を貸して」
既にタイムズスクエアには、完全武装の特殊部隊が配置され、ビル屋上にはスナイパーがスタンバイ。ルナレには専属ボディガード。
さらにヲタッカーズが見守る中、式典は始まり、冒頭ルナレCEOのキーノートスピーチ。
「私の姉は、大勢を傷つけました。秋葉原にもヲタクのみなさんにも借りがある。今回、社名を変更して、その借りを返したい。共に新しい時代を築きましょう。明るい秋葉原のために…」
その瞬間、大爆発!
タイムズスクエアの彼方此方で爆発が起こり詰め掛けていたヲタクが吹っ飛ぶ。
たちまち爆炎と爆煙が巻き起こり、火の手が上がってステージも焔に包まれる。
さらに…
バブルの頃に建ち、コロナの煽りで年末から全館閉鎖となってた家電ビルが…傾く?
何と!駅前の好立地物件が、まるで足元を払われたように傾斜を始めるではないか!
「ビルの弱点を爆破されたわ!南西の柱だけが木っ端微塵になってるっ!デス・スターを狙う光魚雷みたいなピンポイント攻撃だわ!」
「スター・ウォーズネタより、何とかならないの?!」
「南西の柱を補修しなきゃ!」
いち早くビルに飛び込み的確な指示を出すのはハンナ機長だ。
マリレは、応急修理のロケット兵装備で傾くビルを押し戻すw
「エアリ!私は手を離せないわ!ソッチで何とかなる?」
「えっ?でも。どうやって?」
「ハンナ機長の指示に従って!」
ハンナ機長がエアリに指差す先に改修用の鉄板が平積みされている。
エアリは頷き、精神を集中してクレーン呪文で鉄板を重ね柱を補強。
さらに、奥の手の溶接魔法で鉄板を溶接!
ビルの外でマリレが恐る恐る手を離すと…
ビルは倒れない!
「やったね、エアリ!」
「間に合った?マリレ?」
「お手柄よっ!私達、またまた最高のチームだったわね!」
一方、ムーンライトセレナーダーことミユリさんは、焔と煙が吹き荒れる式典会場だ。
挙動不審な特殊部隊員に声をかけたらビンゴでゴル子13、双方ホボ同時に拳銃を抜くw
「アンタがムーンライトセレナーダーだね?電撃系だっけ?あいにく絶縁下着をつけてるからアンタなんかヘッチャラさ!」
「ソレが貴女の勝負下着なの?誰も見ない下着にお金かけるなんて可哀想過ぐる。痛いわ」
「な、何よっ!TOがいるからってデカいツラするな!リア充、死ね!」
リア充を憎むパワーに押されたか、不覚にもムーンライトセレナーダーはゴル子のリバースロメロスペシャルに捕まって苦悶の絶叫!
「ぎゃあああっ!」
「ラズゥ博士は、確かに蔵前橋の重刑務所に収監されたけど、彼女には金もコネもある。どの道ルナレは消される運命さ。だから、アンタを盾にトンズラさせてもらうよ。ヘイ!ギブアップ?」
「NO!」
銃声!
ゴル子が驚いたように目を見開き、やがて、ガックリと膝を折って崩れるように倒れる。
その背後で、震える両手でゴル子が落とした拳銃を構えて立っているのは…ルナレCEO。
「貫通してる。救急車!」
「直ぐに病院へ運んで!お見事ょ、CEO」
「…援軍がいたから」
上空でマリレがヒラヒラと手を振っている。
第4章 秘密科学結社の挑戦
「ありがと。こーゆー記事がデビルコープ改め新生ヘヴンコープには必要だった。私が撃ったコトも描いてくれたのね。姉への見せしめにもなった。良い記事ね、ダマヤさん」
「事実を淡々と描いたまでです。俺は、貴女を誤解していた」
「ソレなら、私にもまだ望みはあると言うワケね。あら、貴女の名前が記事にはなかったようだけど、ミユリさん」
「私は、記者ではないので」
「どうかしら…私の目は騙せないわょ?ではまたいつか」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中のパーツ通り。街灯の下の毎度お馴染みな厄介系のカップルはダマヤとマリレだ。
「ダマヤ!探してたのょ。暗殺ドローンと戦ってて大変で…ねぇ今度からはデートもちゃんとスルわ。イタリアンはどう?」
「いや。もぉいいよ。君は変わった」
「ダマヤ」
「俺の間違いでも思い込みでもない。コレを君は望んでたのか?」
「前までは」
「今は?」
「今は…確かにわからない」
「今宵の君は、少なくとも正直だ」
ダマヤは、暗闇に消え去る。
ソレを茫然と見送るマリレ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ワラッタ・ワールドワイド・メディアHQタワービルの最上階。CEO専用のバルコニー。
「私は、欲しいモノは全て手に入れて来た。今まさに絶好調。それよりも、ミユリさん。貴女こそ大丈夫なの?貴女は、未だ若くて賢い。恋も仕事も順調なのに、まるでライトに照らされた鹿みたいに固まっているわ」
「私は…そうです。おっしゃる通りです。スーパーヒロインと呼ばれて、確かに自分が強くなったと感じる時はあります。でも、ソコから離れると…仕事も恋愛もどうすれば良いのか、まるでわからない」
「簡単ょ。飛び込むの。ダイヴょ」
「飛び込む?プールに?」
「貴女は、新しい海を目の前にして、飛び込むコトを恐れてる。目の前の選択肢を眺めてるだけなの。アイスブルーの水。流れの速い川。荒波の海」
「うっ」
「ホントは、今にも飛び込みたいけど、水の冷たさを知っている。過酷な旅になるってワカってる。でも、向こう岸に渡った時には、貴女は絶対生まれ変わってる。その新しい自分に出会うコトを恐れてるだけなのょ。誰でも今までの自分でいたほうが楽だもの。快適な場所にいたい。でも信じて。生きるためには挑戦を続けなきゃ。常に飛び込むのょ」
「はい…いえ、ありがとうございます」
「残された時間は余りない。急ぎなさい」
「そうですね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部。
「ダマヤ分析官。ジャドーにようこそ。良く決心してくれたわ」
「はい。"ニワカ分析官"のニワカを取ってジャドーメンバーになる決心が、やっとつきました。レイカさん?レイカ司令官…かな?」
「司令官で良いわ」
「はい、レイカ」←
「と、とにかく、転職おめでと。ソレから、ハンナ機長も貴方と一緒にウチに来るコトになったから、念のため」
「えっ?僕は"神田川の英雄"と同期かぁ。ところで!無理なら良いですが、ワラッタで積み立てた年金だけど、コッチに移せますか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中の秋葉原を、黒いSUVの車列が、音も無く走り抜けて逝く。
どのSUVも濃いスモークガラスで中にいる者の姿は窺い知れない。
「ゴル子13。アンタは、ウチのニセ救急車で回収されて、今、ココにいる。だが、ココは病院じゃないんだ。ゴル子、アンタは病院に行っても死ぬだけ。でも、ココなら生き続けられる」
「…」
「この赤いボタンを押すと、アンタの呼吸は止まる。痛みは消えて、永遠の眠りにつく。でも、緑のボタンを押すと、アンタは永遠に生き続けるコトが出来る。もし生きたければ…1回まばたきを」
1回まばたく。
「賢明ね。秘密科学結社ガリレへようこそ。今、ゴル子13は死ぬ。メロロとして生まれ変わるの。貴方に科学の生命を授ける。そして、いつの日か、秋葉原を我々の手に」
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"未来の旅客機事故"を軸に、事故機の女機長、事故を仕掛ける女傭兵、事故のターゲットであるスタートアップCEO、マッドサイエンティストに秘密科学結社などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、第2次コロナ宣言延長下の秋葉原に当てはめて展開しています。
また"レインボーラッキーバード"は、息子が幼稚園時代に描いた想像の鳥の名前です。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。