地球で侵略宇宙生命体と戦う話
20XX年、地球は宇宙生命体からの侵略に曝されていた。
事の始まりは人類初の太陽系外探査基地と宇宙生命体との接触である。
接触というよりは衝突という方が適切とも言われるファーストコンタクトにより、地球人類は初の地球外生命体の存在を知り、そしてその脅威にさらされる事となった。
宇宙生命体は高度な軍事力を持ち、地球へと侵略を開始したのだ。
地球某所、宇宙生命体侵略軍対策本部。
「……本当かね、技術本部長。」
「はい、間違いありません。地球は太古の昔にも宇宙からの脅威にさらされてきました。そしてその度に撃退してきたのです。」
地球の技術力では太刀打ちできない侵略軍に対して、現在、有効な戦力はない。だが、かつてはあったのだとしたら……オカルト雑誌を読むのが趣味の技術本部長に胡乱な目で答えた対策本部長だが、可能性があるのならば試してみるべきだとかつての地球に存在していた対宇宙侵略用戦力の調査を指示した。
そして現在。
地球が太古の時代には兵器だったという事が判明したのだった。
地球に残る古代の遺跡は、地球のエネルギーを制御するための装置の名残だというのだ。宇宙からの侵略がある度に地球を制御するために当時の技術で作られ、そしてその存在を秘するために仮の歴史をかぶせられたのだ。
「地球内部の核と呼ばれる超高密度エネルギー炉心から地球外殻の制御プレートにより調整、集めたマントルエネルギーを一点から放出するフジヤマボルカノン砲……理論上は太陽系外に展開する侵略軍に対しても有効でしょう。」
「マントルエネルギーの調整は各遺跡で行えますが、なにぶん昔の物ですからな。どれほど信頼できるかは……」
だがそれでも、今は他に手段は無いのだ。
フジヤマボルカノン砲の制御施設は東京に置かれる事になった。衛星とリンクしている情報ネットワークであるスカイツリーと地球制御端末であるトーキョータワーが備わっていたこの地は、太古より日ノ本と呼ばれ、日の昇る所、つまりボルカノン砲を撃ち上げていた場所なのだ。
全ての準備を終え、今、地球の反攻作戦が始まる。
宇宙からの侵略に怯える人々に、そのアナウンスがあったのは突然の事だった。
『これより地球はフジヤマボルカノン砲発射体勢に入ります。全人類の皆さんは衝撃に備えてください。』
東京制御施設、フジヤマボルカノン砲制御指令室。
「各国より承認を確認しました。エネルギー充填を開始します。」
「了解。クフピラミッド・コンバーター起動、地球中心核炉心を稼働させる。」
「水冷式マリアナ・ラジエーター問題なし。エアーズ・ロック解除!」
「目標、太陽系外に展開する宇宙侵略軍! 地軸制御、公転・自転速度合わせ良し!」
「フジヤマボルカノン砲、発射――!!」
フジヤマ頂上の火口から全地球エネルギーを収束させたビームが撃ち放たれる。それは宇宙を裂き、侵略軍に突き立った。
「やったか……!?」
「いや、まだだ! 半数は撃墜したが、まだ残っている!」
「それなら続けて……なに!?」
制御室に警報が鳴り響く。数世紀にわたり放置されていたボルカノン砲は一度の発射で様々なエラーを発生させていた。
「地球内圧上昇、エネルギーラインに異常! このままでは……!」
「余剰エネルギーをキラウエア放出! 空冷式のバンリ・ラジエーターも起動だ!」
「ッ!? 侵略軍より攻撃!!」
「このままやられるものかよ! ムーンシールドを使え!!」
スカイツリーより放出されたトラクタービームが月を動かす。幾度となく地球を守ってきた防御機構・ムーンシールドが侵略軍が太陽系外から放つ亜空間攻撃を受け止めた。
「月は持つのか!?」
「裏側にクレーターが増えた程度だ!」
ムーンシールドが稼いだ時間でマントルエネルギーを制御し、再びボルカノン砲発射の準備が整う。
だが――。
「侵略軍、散開! このままでは一射で殲滅はできません!!」
「ボルカノン砲も限界が近い……クソッ!」
「私にいい考えがある。」
地軸制御担当からの提案。それならばたしかに、散開した侵略軍を殲滅も出来よう。
しかしそれは地球に多大な負荷を強いる方法であった。
「もう、これしか方法が無いのか……」
「やるしかない……やるぞ、皆!」
「了解! フジヤマボルカノン砲、発射準備開始!」
「いくぞ! これが最後の一射だ、フジヤマボルカノン砲、発射ーーッ!!」
再び天を貫くボルカノン砲。エネルギー放出をする地球がぐるりと回転し、ボルカノン砲がなぎ払い。
「うおおッ、フジヤマボルカノン・ソードッ!!」
加速する公転と自転、そして縦横無尽に傾く地軸が太陽系外を焼き尽くす。
その日、天の川銀河を照らした輝きはその一部を消滅させ、後に地球防衛宇宙戦争と呼ばれる騒乱は幕を閉じるのだった。