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お料理探偵、エミリカ!!  作者: コーノ・コーイチ
第二章 2皿目~いただきますの前に大切なこと~
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どうぞ、おあがりください



 日が傾き、西日が和室に強く注ぐ。雪は来客に気をつかい、障子を閉める。


 その背に宇野は声をかけた。


「しかし、あんたが風さんの妹で、月の姉とは信じられんな。三年生だったか?」

「そう、宝ノ殿中学三年の猿飛雪よ。姉や妹と違ってよく喋るでしょ?」


「ああ、実によく喋る。姉妹が寡黙な分、あんたが代わりに喋っているみたいだ」

「ははっ、忌憚なく言うね~、さすが何でも屋、その通りよ。しかし、かの何でも屋が料理部に入部なんて思いもしなかったよ~。事情は知らないけどね」

「そちらこそ、耳聡い。さすが情報屋」


 宇野は視線を送り、雪はそれを面白そうに受け止める。


「おやおや・・・情報屋?それはどこにいるのかな?」

「・・・違ったか?料理部に入部したことは公にしていないんだ。それに部員と顧問にも口止めしているしな・・・なのにあんたは知っている」


「へえ、そうなんだ?でも、障子に目ありって言うでしょ?どこかで誰かに見られて噂が広まった~、とかね?人の口にフタはできないものなんだよ?」

「だとして、情報が回るのが早すぎる。出所を疑うなら料理部の誰か・・・そして料理部と情報屋は繋がっている。であれば、あんたが情報屋である可能性が高い」


「ふ~ん。でも、それだけだと、根拠がないねぇ。それに、生徒会長だって怪しいでしょ?彼こそ、破天荒生徒四天王である、『何でも屋』と『テイストプルシュアー』それに『情報屋』と『ウルトラレッド』の束ね役だしね」

「いや、あいつは依頼以外の内容や私情を第三者に口外はしない。となれば、料理部の部員の関係者か近しい者、もしくは親族だろう」

「ん~、なるほどね。けど、もうひと押し、何かあるよね?」


 見透かすかのように言う雪の瞳が鋭くなる。今度は宇野が楽しそうに受け止める。


「ああ、ここに情報屋の秘密があると伺った」


 なるほど、と雪は視線をエミリカに向ける。エミリカは手の平を合わせ、テヘペロをしていた。


「人の口にフタはできないものだねぇ・・・」

「改めて、はじめましてだ、情報屋。先の弁当の件では色々と嗅ぎ回ってくれたらしいな?そして、色々と喋ってくれたとか?」


「おやおや、もしかしてわざわざお礼参りに来たの?」

「ふっ、ただの知識欲だ。他の破天荒生徒四天王とは不干渉でいるつもりだったが、身近で正体の分からないのが色々と跋扈されては居心地も良くないしな」


「な~る。やっぱ、釘を刺しにきたってわけね」

「さてな、見舞いだ」


「見舞い・・・ね、どの意味なのやら?」


 二人は怪しい笑顔を交わして見合う。ちなみに、見舞いとは、巡視や巡回という意味でも使われる。


 それはさておき、そんな二人の間にエミリカはつまらなそうに口を挟む。


「もう、宇野一弘とせっちゃんが何か分かり合った感じなのは十分なのよ!」

「おやおや、エミリカ?そんなにむくれてどうしちゃったのかなぁ?てか、そもそも私の正体が情報屋だってバレたのは誰のせい?」


「だって、フェアじゃないでしょ?お弁当の事件で『宇野一弘の情報を料理部が頂いた見返りに、宇野一弘の今後の行動を教える』だなんて、当の本人は気分がいいものではないと思うわ」

「はあ~、情報戦では秘密を握った方が有利なの。良心の呵責なんて足元すくわれるだけなのに・・・ま、エミリカは彼の前では淑女でいたいのかな?」


「ウチはウチの正しい道を行くだけよ。ごめんなさいね、宇野一弘、そういうことなの」

「ああ、なに、予測はしていたさ、気にするな。こうして情報屋と相見えることができた、それだけで収穫だ。色々とアドバンテージにもなるしな?」


 宇野は口角を上げて雪を見る。彼女は肩をすかす。


「おやおや、私の正体はくれぐれも内密でね~」

「それは都合が良すぎるな。人の情報を喋ったり聞いたりしておいて」


「情報の悪用はしないよ?良い結果を導くために動いているの。これが私の正義よ」

「個人のプライバシーを流し、情報操作で得た結果が正義か、欺瞞だな」


「そちらこそ、何でも屋の活動が偽善じゃないって、言い切れる?」

「さてな、食券のためだ」


「それが効率の悪い手段と分かっていてねぇ・・・それとも、今のあなたの現状に不満でもある?私の取った『何でも屋の情報を流す』という選択は、結果的に、あなたにとっても最善であったと思うのよ」

「フッ、口が減らない相手というのは敵に回すと厄介なもんだ」


「それはお互いさまじゃない?あなたもなんだか図太そうだし?」

「はっ、お互いどこか近い部分があるのかもな」


「確かに、あなたと私、思考のスタイルが似ているかもね」

「ああ・・・じゃあな。そろそろ、おいとまするとしよう」


 言いながら宇野が腰を上げた時、


「いや、変態!お見舞いに来たんでしょうがッ!月のッ!」

 ユキユキが正座からのローキックで宇野の足を払い、再び彼の腰を畳に着かせる。

 宇野は尻もちをつき、「グゥッ」と、喉から声が漏れる。


「あいたた、忘れてた・・・」

「ウチも忘れかけていたわ・・・」

「お姉さままで・・・それにしても遅いですねぇ、何かあったのでしょうかぁ?」


 ユキユキが小首を傾げると同時に、どこからか風の声がした。


『・・・今、ちょっと月の体拭いているの・・・人前に出るには汗とか・・・その・・・色々と気になるみたいで』


 言うや否や、『ザザッ』と雑音がし、次に『・・・黙れ』と月の声が響くと、無音になる。


 そして、客間は水を打ったかのように静まり返る。


 女子の中で男子一人の宇野はいたたまれなくなり、「ゴホン」と咳払いをして、雪に尋ねる。


「あの、なんだ、今の声はどこから聞こえたんだ?また部屋になにか、からくりでもあるのか?」

「えと、ただのAIスピーカー。和室の景観を損なわないように、生け花の裏に隠しているだけなの」

「あ、そう・・・」


 普通の現代技術で宇野はガックリと肩を落とす。そして、沈黙。やはり耐えられない。宇野はこの場から去る口実を探ってみる。


「その、気を使わせたんじゃないか?やっぱり、ここはおいとました方が・・・」

「けど、月が準備してるのに帰るのは失礼じゃないのかしら?」

「そ、そうか?」

「乙女の準備を待てないなんて、男失格ですぅ~。まったく、だから変態なの!」

「・・・・・・」


 ぐうの音も出ない宇野。代わりにエミリカが話す。


「けど、待つだけというのもアレね。何かできることはないかしら?」


 すると雪は、待ってましたと言わんばかりに指を鳴らす。


「じゃあ、ごはんを作ってよ!本当は今日ね、月が食事当番だったのだけれど、体調を崩しているからね~。それに久々にエミリカのごはんも食べたいな?」


 とくればエミリカも、待ってましたと言わんばかりに柏手を打つ。


「まかせて、せっちゃん!それならウチの得意なものよ!」


 胸を張る彼女のその姿に、宇野は難しい顔をする。早く帰って、夕食の支度をしたいからだ。といっても、部活で作ったチンジャオロースを皿に盛り付けて、朝に予約炊きをしたごはんと、インスタントの味噌汁を作るだけなのだが・・・


 そんな彼に気付いたエミリカは宇野の耳元で小さく呟く。


「ちょっとだけ付き合いなさいな。これは部活の延長と思って、ね?それに今から作るのは療養食にもなるの。覚えておいて損はないわ」


 それを聞き、宇野は少し興味を持つ。

 療養食・・・母親と二人暮らしである彼はその食事を必要とする可能性が大いにある。医療の従事者である母親なら特にだ。


「ああ、分かった」


 頷く宇野。それを見てユキユキはジト~っとした目でエミリカに囁く。

「お姉さま、随分と変態の扱いがうまいですねぇ~」


 宇野のことをよく見てる、という含みを持たせたユキユキに対しエミリカは、

「そう?だといいのだけれどね」


 何食わぬといった感じで言う。

 だが、彼女は遠い目をしていた。



※ユキユキですぅ~


 なんだか、破天荒四天王の名前が出揃いましたねえ~、

 ええと、変態こと『何でも屋』にぃ~

 お姉さまこと『テイストプルシュアー』

 それに雪さんこと『情報屋』と

 あとは謎の『ウルトラレッド』ですねぇ~。


 ん~、やっぱり、二つ名に統一性がないでぅ~

 そこんとこどうなんですぅ~、生徒会長さん?


『え?ああ、まぁ、最初はね、○○屋って

 ことで統一してたんだけどね・・・』


 あぁ~、変えられちゃった、とかですぅ?


『ま、まあ、そんなところだよ・・・

 兄さんならうまく統一できたんだろうけどね』


 お姉さまのお姉さま・・・江見麗華お姉さまの

 手綱を握っていたという、あの前生徒会長ですねぇ?

 

『うむ、麗華さんは当時、将軍と恐れられていたんだけども

 そこで兄さんが・・・おっと誰か来たみたいだ?』


『あ、麗華さん!?何故ここに!?』


 少し雲行きが怪しくなってきたので

 ここまでですぅ~。

 次回もお楽しみにぃ~。


『アッー!』


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