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お料理探偵、エミリカ!!  作者: コーノ・コーイチ
第一章 4皿目~それは思い出の唐揚げ~
17/55

~戦闘開始~



 文化祭は時間通りに始まった。



 学校は普段の装いを変え、バルーンで飾られた校門。中庭には様々な露店のテントが並び、鼻腔に食欲をそそる香りが立つ。


 校内には様々な音楽や歓声が飛び交い、まるで学業とは似つかわしくないほどにお祭りの賑やかさとなった。


 麗華たち料理部は中庭にて屋台を行っていた。

『唐揚げとおにぎり屋』シンプルだが分かりやすい。ナスビの案である。


 ここで料理部は様々な役割を分担していた。

 まず、エミリカとさとりんが調理室で唐揚げを揚げる。

 それをナスビが露店へ運び、プラスチックの容器に半分乗せ、バランを敷く。

 その半分の空間に風がおヒツのお米でおにぎりを丸め、乗せる。

 最後に麗華が客に味付けを聞き、トッピングして売りに出す。といった感じであった。時折、持ち場の交代は行われるが、エミリカは調理に固定である。


 唐揚げの調理が露店のテントではなく調理室なのは、油の温度を一定にしたいのと、生肉を外に置いておくのは衛生上危険であるがためである。

 だが、お米は露店で客に見えるよう握る。その理由は、


「風姉やさと姉、麗華姉が米を握れば、男どもは群がるようにやってくるで~」


 というナスビの判断であった。ただハーフ特有の美貌を持つナスビがおにぎりを握る方が客足は多くなることに本人は気付いていない。



 午後の13時。料理部の麗華が客引き、ナスビが露店のカウンターにておにぎりを握っていた。そこに風が揚げたての唐揚げを運んでくる。


「・・・どう?売り上げの方は?」


 頭にバンダナを巻いた風が唐揚げを容器に入れ、カウンターに並べつつ、麗華に聞く。


「そうね、さっきのお客で80人目よ。一日の目標まであと20人」

「・・・お昼の書き入れ時も過ぎたし・・・少し厳しい?」


「とはいえ、小さな唐揚げ3個とおにぎりで250円なのに、ここまで売れたのは上々よ。いいバランスだと思う」

「・・・単純な粗利益は1万円といったところ。他の店はどう?」


「どうったって、ここで売り子をしてたら他を見る余裕なんてないわよ~。隣のハンバーガー屋は60人、ホットドッグ屋は70人、ケバブは50人かしら?」

「よう見てますやん、麗華姉。それより、さっき自分、調理室に炊けたお米取りに行ってきたんすけど、その時にえらい男前がさと姉に会いに来とりましたわ。たぶんあれが生徒会長ちゃいますやろか?」

「・・・カインドマンが愛にきた」

「愛にきたのね」


「?・・・まぁ、そん時にさと姉と他の店の売り上げの話をしとりましてね。どうにも自分らは三位らしいですわ」

「へぇ、他はどうなの?」

「二位は陸上部のスムージー店で、多種多様なジュースが人気を博しとるみたいです」

「・・・ジュースは初夏の今頃にちょうど良いし、回転率も速い。良い着眼点」

「そんで、一位がどうにも家庭科部らしいんですよ」

「なんですって!」


 麗華が目を張って言う。もともと鋭い眼光の彼女だが、今はなお鋭く、店に近付こうとしていたお客が怯えて他店に流れてしまった。


「あら・・・オホン、聞かせてもらおうかしら」


 麗華はショートに整えた髪を払い、平静を装う。


「は、はい。なんや家庭科部は焼きそばと春巻きのセットで自分らと対抗しとるらしいんですわ」

「・・・そういえば隣で焼きそば焼いてた・・・けど春巻き?」


 調理室は仕切りを設けているとはいえ、見える部分は見えるもので、お互いに様子は盗み見で伺えていた。しかし風は一つ疑問があった。


「・・・春巻きなんて作ってた?調理室で」

「ん~?後で敵情視察かねてエミリンと調理部の店を覗くつもりですけど、店やと販売だけしかやっとらんかった思いますわ」

「まぁ、別の場所で作ってるんじゃない?それで、どれだけ離されているの?」

「売り上げ的には3000円くらいらしいんですわ・・・ただ恐らくここから自分ら料理部が巻き返せるやろ、ってカインドマンいう生徒会長が言うとりました」


「その根拠はどこから?」

「はい、どうにも家庭科部、この売り上げに達するために、なんや妙な策を打ってたみたいで」


「妙な策?」

「というのも家庭科部の『焼きそばと春巻きの中華セット』を頼むと特定の他の店で割引になる券がついてくるらしんですわ」


「むぅ、考えたわね、梅子。そこで差を付けようって寸法ね」

「ただそれ、他の店と同条件で締結するんが筋なんやろうけど、どうにも家庭科部だけは割引には応じないそうで」


「はっ?何それ?他はそれで納得したの?」

「いや、それが『家庭科部の売り上げは約束されたものだから、そのおこぼれに預からせてあげる』とか言うて押し切ったらしいですわ」


「あぁ、あいつなら容易に想像できるわ。やりおるわね、梅子」

「・・・それで実質一位なのは間違いないし」


「けど、やっぱり他店から不満があったそうで、今『何でも屋』が調査しとるらしいんですわ。家庭科部の売り上げとその割引による他店の売り上げ効果を」

「え?ええと、なんだか難しい話ね?」

「・・・ようするに、家庭科部が配布する割引券が、他店にとって売り上げが得であるかどうかの調査ってこと」

「そういうことですわ。この文化祭規模でそんなサービスしたところで、今一つ変わらんやろ、言うのが生徒会長の考えですねん」


「・・・つまり、他店は梅子の口車に乗せられただけ」

「あいつ、そういうの本当に得意だからねぇ」

「大した影響がないと分かれば割引券の配布を終了させるらしいんですわ。そもそもそんなん教師や実行委員に届け出なしで勝手にやってるらしいですし」

「梅子お得意の好き勝手だわ。でも、家庭科部一人勝ちの策もここまでってことね。まったく、どこまでいっても独占的な女なんだから」


 話に一区切りついたところで麗華はパンッと自分で両頬を叩く。


「とは言え、ウチらが負けているのは事実よ。うかうかしてたら足元をすくわれかねないわ。模擬店の出店時間は16時まで、これから一気に巻き返すわよ!」


『おお~』


 気合を入れ直し、三人は客引きに勤しむ。


 料理部はその後、唐揚げとおにぎりのセットを目標の一歩手前、95食を売り上げた。




 文化祭一日目。模擬店の売り上げランキング。

一位、陸上部のスムージー店。

二位、料理部の唐揚げとおにぎり屋。

三位が家庭科部の焼きそばと春巻きの中華セットとなった。



 こうして、文化祭一日目が終わる。



※さとりんです。本名は佐藤鈴(さとうりん)なの。

 料理部副部長と生徒会の会計を兼任しているの、

 よろしくね。

 

 みなさんは文化祭とかで食べ物の出店はしたことある?

 飲食の出店には色々と検査が必要なの。知ってたかな?

 そうねぇ、保菌検査よね。いわゆる検便よ。

 検査に異常がなければ証明書を生徒たちの出店届けと

 一緒に保健所に持っていくの。

 ただ、これらは教師たちの仕事ね。私たち生徒会は

 提出者のチェックを入れるお手伝いをしているわ。

 出店する部やクラスの数や名前が記載されたリストを

 もとに人数や名前が揃っているか、確認していくの。

 これが数多いとそれはもう大変なのよねぇ・・・

 でも、大事な仕事よね。

 他にも色々と仕事はあるけど、それはまた別の機会にね。

 

 文化祭は表でも裏でも色々な人が動いているの。

 それは皆、文化祭を安全に正しく楽しく成功させようと

 努力しているからなのよね。

 

 さ、私も皆に負けないようにがんばるわよ~。


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