前菜(プロローグ)
料理や食べ物の知識というのをどれだけ知っているだろうか?
料理の知識は生活の上で多少なりとも知っておく必要があるだろう。
しかし左右どこを見ても食べ物があふれる昨今、料理をする機会が少ない、又は料理をせずとも賄える人は多くいる。
例えばコンビニ弁当、出来合いのお惣菜、宅配料理、その他のお手頃なサービスは多くある。
ここまで揃っていては、料理の知識を深く掘り下げてまで必要とする人は数少ない。
それでは食べ物についての知識はどうだろう?
大豆は枝豆が熟成したものだとか、グリーンピースは未熟なえんどう豆であるとかの文字通りな豆知識。
こんな知識、殊更に要用とする人は少ない。
例えこの知識を保有していようと、食物に関わる一部の人を除けば、これらを披露、有用する機会の無いまま墓場へと持っていくに違いない。
今作の主人公である宇野一弘
彼にとっても今まで生きてきた中ではそうであった。
だが、まさかこれらの知識によって物事を引っ掻き回したり、とある事件を解決へと導かれたりする人物がいるなどとは思いもよらず・・・
それは彼女、エミリカとの出会いがきっかけであった。彼女が披露する料理と食べ物の知識によって紡ぎだす不思議な体験が大きく彼の観念を変えていく。
この物語は、そんな二人によって作り出される料理あり、推理あり、炊事あり、食事ありの事件簿である。