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08.勇者、商人を雇う




 ベッドを作ってから1週間後、昼前のできごとだ。


 あれからそこそこ日が経ったが、人の入りはぼちぼち。


 食事とベッドを改善したからといって、急に客が増えるわけではない。


 ここはダンジョンのすぐそばにある村だ。理屈で言えば、冒険者がたくさんここを訪れるはずで。


 ダンジョンへ行く前に装備を調えたり、それこそ【若き暴牛】のメンツやソフィの両親のように、ここを拠点にダンジョンに入れば良い。


 だがそうはならないのだ。とある理由でな。


 それはさておき。


 俺はその日、食料の調達にダンジョンへ行って、村に帰ってきた。


 この村はダンジョンの真横に立っている。ダンジョン自体は深い森の中にあるため、四方を森で囲まれていた。


 村は人の身長ほどある木の杭で柵を作り、それをぐるりと一周するようにして建てられている。


 門番には村でヒマしている若者が立っている。俺は軽くあいさつをして入る。


 村は木造の平屋がいくつか建っている。村の子供たちが走り回っている。老人が家の前でひなたぼっこしている。


 通りを歩く人間は少ない。というか村の人間しかみかけない。まあ宿以外に何の見所もない辺境村だ。よそ者が足を運ぶ場所でない。


 ……まあもっとも、他にここをよそ者が訪れない理由はあるんだけど。


 宿に向かって歩いていた、そのときだった。


「どうしてここで店を開いちゃいけないんですかっ!!!」


 少女のような高い声が、どこからか響いてきた。


「とても良い立地ではないですか!! アイテムショップ、武器屋……それらを置けばすごく儲かります! なのにどうして……!!!」


 大声は村長の村から聞こえてくるようだ。


「よそものはだめとはどいうことですか……きちんと土地代も払いますし……そういうことじゃない!? じゃあどういうことなんですか!?」


 俺は気になって村長宅へ向かって歩く。


 この村にして珍しい石造りの家から、きゃんきゃんと子犬のような声がきこえて来るではないか。


「もういいですこの分からず屋!!」


 そう言って、村長のドアが開く。


 そこから出てきたのは……小さな女の子だった。


 子供の俺と同じくらい、下手したら俺よりも小さな女の子である。


 短い水色の髪に、まぶかに帽子を被って、マントを羽織っている。


 手脚は細く、栄養状態が心配される。顔色も少し青白かった。


「まったくわからずや……ここに店を開けば大もうけできるでしょうに……まったくもうっ、まったくもうっ!」


 怒り心頭の少女はずんずん、と村長の家から出てくる。


「ワタシがこの程度で諦めると思ったら大間違いですからね! また来ますからね!」


 村長の家に向かって少女が吠えると、またずんずんと歩いて行く。と、そのときだった。


 ふら……と少女の体が、傾いたのだ。


「おい!」


 倒れそうになる少女の体を、俺がとっさに支える。羽のように少女は軽かった。


 顔色もよく見るととても悪い。頬はこけていた。


「うぅ……」


「おいあんた、だいじょうぶか!」


 するとーー……


 ぐぅううう~~~~~~~………………………………。


 と、少女の腹から、とんでもなく大きな腹の虫の音が聞こえてくるではないか。


「おまえ腹減ってるのか?」


「うう…………めし…………でもお金…………」


 少女がうわごとのようにつぶやく。どうやら腹減って動けないみたいだ。


「…………」


 村の人間は、倒れている水色髪の少女を見ても、誰も心配して声をかけてこない。


 村人は全員この少女に関わろうとしていなかった。


「……しょうがない」


 俺は少女をひょいっと背負う。勇者の身体能力パラメーターを引き継いでるため、子供の体であっても、容易くひとひとりをおんぶすることができる。


 俺は少女を連れて、宿屋【はなまる亭】へと向かう。


 ドアを開けると、正面のフロントにて、母さんが受け付けテーブルを雑巾がけしていた。


「ユートくん~? あれ、その子は~?」


「……お腹空かせて倒れたみたい」


「あらたいへん~。すぐにご飯の支度しないと~」


 このお人好し母さんは、困っている人を見捨てておけないのだ。


「じゃあ俺はこの子を空いてる部屋に寝かせてくるね」


「そうね~。おきたらごはんにしましょうか~」


 母さんは食堂へ行く。たぶんフィオナが食堂にいるだろうから、メシのことは心配しないで良いだろう。


 俺は水色髪の少女をよいしょ、と背負いなおす。


 そのときだ。


 ふぁさ……っと、少女が被っていた帽子が、落ちたのだ。


「おっと」


 俺は帽子を拾って、背中の少女の頭に乗せる。そのときに気がついた。


「この子……耳が……」


 俺は少女の耳が人間のものでない事に気がついた。


 少しばかり尖っている。エルフの耳にしては短いが。とにかく人間のものではないみたいだ。


「……本人に聞くしかないな」


 俺は少女を背負うと、そのまま1階西側の、1人部屋の空き部屋へと向かうのだった。



    ☆



 空腹で倒れてた少女が目覚めたのは、1時間後くらいだ。


 ガバッ……!!


 とベッドに寝ていた少女が、勢いよく体を起こす。


「だいじょうぶか?」


 俺はちょうど、この子の様子を見に来てるところだった。


「…………なんですか、このベッド」


「え、なんだ?」


 ぐいっ、と少女が俺の服の襟元を掴んでぐいと引き寄せる。


「なんですかこのベッドはと聞いたのですよ!」


 鬼気迫る表情で、少女が俺に問うてくる。

「超ぐっすり眠れました! 10時間くらい寝たかと思いました。今何時ですか? 1時間くらいしか経ってませんよね!?」


 少女が部屋に設えてある時計を指さして言う。


「あ、うん……」


「スゴいベッドです……どこで購入したのですか!? 購入先を教えてください!」


 血走った目で俺を見上げてくる。


「ええっと……別に買ったわけじゃない。ウチの従業員が作ったんだよ、このベッド」


「従業員……?」


 少女はどうやら、今置かれている状況がわからないみたいだ。まあ倒れて起きたらここだもんな。無理もない。


 俺は軽くこの子を拾ってからここへ来るまでの経緯を話す。ウチが宿屋であることも告げる。


「宿屋……。なるほど……」


 するとぐぐ、と少女が口惜しそうに歯がみする。


「ワタシ、宿はあまり使いません。お金がもったいないので普段は野宿なんです。……ですが、ここは、しょうがない」


 少女は懐から革袋を取り出す。


 中から銀貨を1枚取り出して、俺に手渡してくる。


「これは宿泊費です。1泊ここに泊まります。ご迷惑をさっきかけたぶんちょっと色をつけておきましたが、これくらいが適正価格ですよね?」


 その言葉に、俺は「いや……」と言って首を振るう。


「まさか金貨1枚ですか? 確かにそれくらいここのベッドの寝心地は良いですが、アメニティが不足してることや設備の状態から、銅貨50枚。迷惑料込みで銀貨1枚が妥当かと思うのですが」


「いや、そうじゃなくって。うち、1泊銅貨10枚だから」


 ちなみに、銅貨1枚で安いパンが1つ買える。水入りの革袋が1つ買える。


 知り合いの異世界人は前に銅貨1枚あたり100円とか言っていた。円は異世界の貨幣単位なんだそうだ。


 1泊銅貨10枚。それが、昔から父さんが設定していた、宿泊にかかる値段だ。


 ちなみに銅貨10枚あればランチ1食が食べられる。宿泊に食費込みで銅貨20枚だ。


 さらに言うと銀貨1枚=銅貨100枚分である。だから銀貨1枚はもらいすぎなのだ。


「…………」


 ぽかーん、と水色髪の少女が、口と目を大きく開けている。


 唇が震えていた。


「うそでしょう……? 1泊銅貨10枚ですって……?」


 信じられない、とばかりに、少女の顔が次第に憤怒に変わる。


「こんな心地よい眠りを提供できるのに、銅貨10枚? あなたたち商売する気あるんですか!」


 かーっ! と歯を剥く少女。


「いやうん。そうだよな。俺もそう思う」


 前ならいざしらず、今はベッドが改善されたのだ。もう少し値段を上げて良いと思うのだが、子供の俺は経営に口出せない。


 フィオナに言わせようとするが、あいにく彼女は剣に生きる少女なため、口でオーナーを説得させることができない。


 よって1泊の値段は手つかずのままだったのだ。


 さておき。


 俺が同意を示すと、


「でしょう!? まったくここのオーナーは」


 と怒り心頭の水髪少女。


「あのお客様……」


「ルーシーです。ルーシー・ペンディラム。まだ宿泊費を払ってないのでお客様なんてへりくだった言い方しなくて良いです」


「あ、うん。わかった……」


 ルーシーは「一言言ってやらないと」とぶつくさ文句を言っている。


「ワタシがここの経営者なら、1泊銅貨

20枚……いや、村がダンジョンに近いことを考えれば、50枚は妥当ですね」


「あんまりいきなり高くすると客が来てくれないんじゃないか?」


「逆ですよ」


 と吐息を吐くルーシー。


「ここサービスの割に安すぎです。それだと逆に客が不安になります。なにかわけありの物件なのではとか、あるいはあとから追加でサービス料として追加で金を取られるんじゃないかと不安になるのです」


 やけに物知りだな、この子。


「安いことは長所でありますが、安すぎると宿に対する信頼が落ちて不信感が募ります。だから宿側は適正価格を見極める必要があり、だからこそ優秀な経営者がいるんです。違いますか?」


「いや……まったくもってその通りだと思う」


 拍手したいくらいだった。


 この子はどうやら、経営に知識があるみたいだった。


 ルーシーはしばらく考え込んだあと、


「坊や。ここのオーナーに会わせてくれませんか? ちょっとお話が……」


 と、そのときだった。


 ぐぅ~~~~~~~~~~……………………。


 とルーシーの腹が、またしても盛大になったのだった。


「くぅ……」


 とルーシーが顔を真っ赤にする。


「食堂で母さんが食事を用意してるよ。ここのオーナーは俺の母さんだ。話があるならそこですればいい」


 ルーシーはうなずくと、食堂に案内してくれるよう頼んでくる。


 俺はルーシーとともに客室を出て、1階東側、食堂へとやってくる。


 調理場には母さんとフィオナがいた。ソフィは2階でもう1人の【俺】と遊んでいるらしい。


「あら~。目が覚めたのね~。良かったわ~」


 ぽわぽわ笑いながら、母さんが調理場から出てくる。フィオナは料理を持ってルーシーの座る席へとやってくる。


「あなたがここのオーナーですか?」


 ルーシーがイスから降りて、母さんを見上げて言う。


「はい~♡ 【はなまる亭】でオーナーやってます、ナナミと申します~」


「ナナミさん、実は折り入ってお話が……」


 と話を切り出す前に、ルーシーがぴたり、と止まる。テーブルの上に乗っているポトフとパン、そして手ごねハンバーグを見て、

「……話は、食事のあとでいいでしょうか?」


 とイスにすとんと座る。じゅる……とヨダレを口の端から垂らしていて、子供みたいだなと思った。


「……こんな美味しそうな食事、結構高いですよね。けど……我慢の限界です。食べましょう」


 ルーシーがぶつくさそう言った後、


「いただきます」


「はい~。めしあがれ~」


 ルーシーは最初にポトフに手をつける。


 ジャガイモとにんじんがごろごろっと入っており、新鮮なキャベツはスープをすってしんなりしてる。


 中には大きめのソーセージが入っており、それを1度焼いたものが投入されている。


 野菜は世界樹の実から栽培、ソーセージはダンジョンのモンスターからドロップした肉を【食神の鉢巻き】でプロ級料理人になった俺が加工したものだ。


 ルーシーはソーセージをスプーンで掬って、かぶりつく。パリッ……! と皮がはじける。


「…………」


 咀嚼したあとごくりと飲み込み。ポトフを凝視する。


「…………!」


 次の瞬間には、ルーシーの手はとまることなく動いていた。


「がふがふ! がつがつ! ががっ、がががっ!!」


 野菜やソーセージと一緒にスープを飲み干し。その後、パンにかぶりついてまた目を大きく見開く。


 ジャムの瓶からたっぷりとイチゴジャムを取り出して、白パンに塗りたくり、またもがふがふと勢いよく食べる。


 ちなみにジャムは実からイチゴとサトウキビを栽培。サトウキビを【創造の絨毯】で加工して【砂糖】にかえたあと、鍋でじっくり1時間煮込んで作ったものだ。


 口周りにジャムがついてることにも気づかずに、ルーシーは次にメインディッシュ、ハンバーグに着手。


 これはダンジョンで取ってきた肉を挽肉に加工して、手ごねして作ったものだ。


 隠し味として森呪術師からもらってアイテムボックスに入っていた、【チカラの落花生】を砕いて入れてある。


【チカラの落花生】とは、眠りの花と同じで特別な植物だ。食べると力のステータスが一定時間上昇する。いわゆるバフの効果があるのだ。


 スープに入っている世界樹の雫でHPMPが完全に回復。さらにハンバーグを食ってステータス一時的に上昇。


 冒険者向けに俺が考案した料理を、ルーシーが実に美味そうに食べていた。


 残さず全部食べたあと、スープをもういっぱいお代わりする。


 皿はきれいにからになっていた。ルーシーは子供のような小さなお腹をぽんぽんとおさえ、恍惚の表情を浮かべる。


「素晴らしい……」


 ルーシーはイスに座った状態で、オーナーである母さんを見る。


 母さんはニコニコしながら、ルーシーの食いっぷりを見ていた。ナナミさんは人が美味しそうにご飯を食っている姿を見るのが好きなのである。


「オーナー。とても良い料理でした。心も体も満足する、そんな料理です」


 うっとり、とルーシーがとろんとした表情を浮かべる。


「ワタシ、あまり食事や睡眠に金を落とさない主義なのです。寝る場所なんて屋根さえあれば良い。食事なんて腹がふくれればそれでいい。そう思ってました」


 ですが……とルーシー。


「ここのベッド、そして食事は、とても……とてつもなく高品質なものでした。文句の付け所のないものです。しかも……」


 と言ってルーシーがステータスを開く。


「ああ、やはりですか。食べる前に【鑑定】してたからわかってましたが」


 ルーシーは得心顔でそう言う。


 どうやらこの子、鑑定を使えるみたいだ。


「オーナー。この食事には【HP回復】【MP回復】【疲労回復】効果、そして【攻撃力+20%】の効果が付与されてます」


 母さんがまぁ、と驚いている。


「すごいわ~。フィオナちゃんの料理、まさかそんな効果があるなんて~」


 調理場の向こうに立っていたフィオナに、母さんが言う。ルーシーは立ちあがると、フィオナの前まで移動。


 す……っと手を出す。


「なんだ?」


「あなたに敬意を。まさかこのような辺境の村で、味、実用性を兼ねたハイクオリティな食事を提供できるなんて。さぞ高名な料理人かと存じます」


 ルーシーがフィオナをべた褒めしていた。


「しかも客層が冒険者であることを考慮の上、客の需要にあった効果の料理を出す。思いついたとしても実際に作るのはとても難しいことです。誰にでもできることではありません」


 するとフィオナが、「そうだろうそうだろう」と自慢げにうなずく。


「これを作ったヤツはスゴいヤツなのだ。もっと褒めてやってくれ」


「は、はぁ……? あなたが作ったのに、まるで誰か他の人が作ったみたいな言い方をするのですね」


 ルーシーが困惑していた。彼女はフィオナが料理を作っていると思い込んでいるため、赤髪少女の発言に疑問を持ったのだ。


「まあな。事実」「フィオナ」


 俺は元女騎士がボロを出す前にストップをかける。


「あなたでないとしたら……オーナーが? 【鑑定】」


 と言って、ルーシーがスキルを発動させる。


 鑑定を使えば、相手のステータスを見ることができる。……って、まずくないか?


「失礼ですがオーナー。あなたの料理スキルの数値は、この料理を作れるほどに高くありません」


「そうなの~?」


「はい。フィオナさんでないとすればあとは……」


 そう言って、ルーシーが俺を見やる。


 まずい。彼女は今、鑑定スキルを使っている最中だ。


 つまり……。


「な、なんですかこのとんでもない数字は!?」


 やはりか。しまった。


 鑑定スキルを使って、ルーシーは俺のステータスとレベルを見てしまったのだ。


「物理攻撃力……9680? バグですか? しかし鑑定は絶対……。こんな数値……」


 とルーシーが俺への疑念を深めていたので、俺は彼女の手を取って「ちょっときてくれ」


 ルーシーを客室へと連れて行った。



     ☆


 

 俺はある程度の事情をルーシーに話した。


 魔王と勇者のこと。俺は勇者だからステータスが異常に高いのだと。そして未来から願いの指輪を使ってきたこと。


 その動機が、過労で死んだ母さんの悲しい運命を変えるためであること。


 母さんに親孝行したいから、こうしてあれこれと頑張っていること……。


 全部を打ち明けた。そうでないと、辺境村のただの10歳の少年が、物理攻撃力9000オーバーの化け物であることに、整合性がとれないからな。


「なるほど……あなたの異常なステータスの値は、そういうことだったんですね」


 ベッドに腰を下ろすルーシー。


 部屋の中だというのに彼女は帽子を被ったままだった。


「勇者に魔王ですか……。確かに古代の文献には魔王という強大な魔の王がいて、それを勇者が倒したという文献があるにはあります」


 俺は左手を彼女に向ける。


 勇者を知っているなら、これも知っているだろう。


 俺は普段から、両手に指ぬきの手袋をはめている。10歳の男の子だ。こういうものをつけていても不審がられない。


 手袋を取って、左手の紋章を見せる。


「勇者の紋章……」


「知っていたか」


「ええ、まあ……。しかし本当にあるとは」


 うむむ、とルーシーが考え込む。


「では1周目の世界がって話も事実なのですね」


「ああ。勇者がいて、魔王がいた。勇者は魔王を倒して引退。今に至るってわけ」


「……母親の運命を変えるため、ですか」


 ふむ……とルーシーが考え込む。彼女は俺の動機と目的を知っている。


「ユートくん、さっきの食事はいくらで出しているものなのですか?」


 ルーシーがふと尋ねてくる。


「食事は銅貨10枚。食事付きで宿泊すると、2食つきで銅貨20枚」


「……安すぎです。ガバガバすぎでしょ、その値段設定」


 呆れたようにルーシーがため息をつく。


「まあ正直俺もそう思っている。なにせ母さんも俺も経営の素人だからな」


「……そうですか。わかりました」


 うん、とルーシーがうなずく。


「ユートくん、ワタシを雇いませんか?」


「おまえを?」


「ええ、ワタシはこう見えて優秀な商人です。まあ、駆け出しですが。それにワタシには鑑定スキルを持っています。利益計算の時に役に立ちます」


 物の価値・価格すらも鑑定できるらしい。


「それにいろいろと経営についてアドバイスできると思いますよ。ふたりでアイディアを出し合えばよりここを繁盛させられると思うのですがどうでしょうか?」


「そうだな……是非もない。ただ黙ってて欲しいんだけど」


 俺が未来から来たことは黙ってて欲しいとルーシーに伝える。


「かまいませんよ。ワタシがそれを公言したところでメリットはないですし。雇い主がそうしろというのなら素直に従います」


 給料については、あとで相談することにした。


「では……ユートくん。これからよろしく」


 す……とルーシーが手を伸ばしてくる。


「おまえって結構歳いっているのか? 俺のことくんってつけて呼ぶし」


 どうみてもルーシーの方が見た目は子供だ。


「ええ、まあ。まあ秘密を知ったよしみで教えてあげますが、ワタシはハーフエルフなのです」


 す……っとルーシーが帽子を取る。


 ちょっと尖った耳がそこにあった。


「エルフほどではありませんが、人間よりは長寿です」


「なるほど……みためは子供だけど、中身は結構いってるんだな」


「そういうことです。では、あらためて」


「ああ……よろしく、ルーシー」


 こうして、俺は経営者とアドバイザーを手に入れたのだった。


もしよろしければ下の評価ボタンを押していただけると嬉しです。とても励みになります。


また皆様のおかげで、昨日のお昼だけですが、日刊総合ランキングで5位になれました。皆さまが応援してくれたおかげです。本当にありがとうございました。


これからも頑張ってお話し書いていこうと思います。


次回もよろしくお願いします。

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[気になる点] 一つ疑問なのですが人に向けての鑑定ってこの世界だと無礼にならないんですかね? なにせ人の秘密まで調べられてしまうのですから 信用商売の商人ですし一言断ってから使用する様にした方が良いの…
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