勇者降臨
俺、ユートは地上へと脱出した。
そして急ぎ女王アリのもとへ向かう。
恋人のフィオナが襲われているところに、間一髪、間に合ったのだった。
「よく耐えてくれた。ありがとう、フィオナ。それに……えるる、冒険者のみんなも」
ふと、そこにキリコがいることに気づく。
……どうして?
いや、言うまでもない。
加勢してくれたんだ。
村人達とともに、この村を守るために。
「ありがとう、キリコ」
だから自然と感謝の言葉が出た。
キリコはにこりと笑ってうなずいてくれた。
村とよそ者を隔てる壁はもうない。
共通の敵を得たことで、和解をするきっかけとなったのだ。
「ありがとな、女王アリさんよ」
「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
アリが部下に命令を下す。
大量のアリたちが一斉に俺に襲いかかってきた。
「あぶねえ!」「逃げろ、ディアブロさん!」
慌てる冒険者達。
だがフィオナは余裕の笑みを浮かべて、俺を見てくる。
「焦る必要ない。なぜなら……」
ざんっ……!
俺の一振りが、周りに居たすべてのアリたちを消し飛ばした。
もう、敵の強さは見切っている。
俺の手にある聖剣、そして聖剣を握る手の紋章が、強く輝いている。
勇者の紋章。
それは、大切な人を守ろうとという気持ちに応じて、強い力を勇者に与える。
「勇者が、ここに再臨したからだ」
俺は勇者としての力を最大に発揮する。
これを使うのは2度目だ。
一度目は、魔王を倒したとき。
そのときと同じ力を使うのだ。
……ボスごときには、負けない。
「ありがとうな女王アリ。せめてもの御礼として……一撃で葬ってやる」
アリが俺に気圧されて一瞬ひるむ。
そのすきに、俺は女王の背中に生えている卵、そして女王の四肢を一瞬で切り刻む。
「は、はええ!」「なんだありゃ!」「なんつー早業……人間か?」
いいや、俺は人間じゃあない。
ただの、勇者だ。
「ぎ、ぎ、ギシャァアアアアアアアアアアアアアアアア!」
女王アリが体を縮めて、飛び上がる。
その巨体で押しつぶそうって腹だろう。
俺は剣を構える。
かつて、九頭バジリスクを吹き飛ばした、あの技を使う。
「聖剣技……【流星散華】!」
俺の体が銀色に輝く。
一直線に、上空へと飛び出す。
それは空から振る流星のごとく、超スピードでアリめがけて飛ぶ。
高速の刺突。
空に逃げたのは悪手だったな。
どこから攻撃が来るのか、確定してしまう。
聖剣技。聖剣の勇者に与えられる、強力無比な剣技だ。
その中の一つ、流星散華。
一直線にしか進めないが、その突撃力は岩をも貫通する。
「でやぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
剣先が女王アリの土手っ腹に突き刺さる。
そのまま、硬い外殻をぶち抜き、肉を、内臓をえぐって……。
そのまま、俺は女王アリの腹をぶち抜いた。
貫かれたアリはそのまま空中で霧散する。
アリの体内にあった迷宮核も破壊し……。
ボスを倒して、ダンジョン……クリアしたのだった。
【★☆新連載スタート!】
先日の短編が好評のため、新連載はじめました!
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
ページ下部↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
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