勇者のパーティとして
ユートの村に鋼鉄アリのボス……女王アリが出現した。
女王は見上げるほどの巨躯に加えて、フィオナの名刀を溶かすほどの強酸を吐き出す。
「なんだよあれ……!」「地下の奴らはなにやってんだよ!」「ボスが来るなんて聞いてないぞ!」
地上の守りを任されてる冒険者達が怯えた様子で、女王を見やる。
地下の部隊と比べ彼らの冒険者ランクは低い。
迷宮主との戦いの経験は少ない、もしくは無い連中ばかりだ。怯えるのも無理は無い。
フィオナは背負っていた予備の剣を手に持つ。
周りの様子を見て、フィオナは次の手を打つ。
「えるる! 私とおまえでこいつを押さえるぞ!」
この場にいる冒険者達はボスとの戦い方を心得ていない。いきなりやれと言われても無理だろう。また、完全に萎縮してしまっていることから、この場にいても、邪魔になるだけ。
「地上部隊は村に待避! 中に入ってきた鋼鉄アリを、避難民のところへ近づけさせるな! いいな! 死守だ!」
彼らは怯えながらも、うなずいて村へと戻っていく。入れ替わるように、元勇者パーティの弓手えるるが村の外へやってきた。
「うう~……まさか2周目の世界でも、ボスと戦う羽目になるなんてぇ」
えるるが青い顔をしながら女王アリを見上げている。だがフィオナは知ってる。彼女も、まあ普段の態度はアレだが、自分の使命を理解してる。
力あるものは、弱きものを助けるという、勇者のパーティの一員としての自覚がきちんとあるのだ。
「それでも逃げないのだなおまえは」
「ううー……だって、逃げたらソフィちゃんやナナミさんに危険が及ぶじゃあないですかぁ」
そうだ。ここで逃げたら、恋人の大事な人たちが死んでしまう。そんなことは、させない。
「えるる。倒すことは考えるな。時間を稼ぐんだ。ユートが……必ず来る」
それは希望的観測では無い。勇者とは、ピンチに必ず駆けつけてくる。フィオナは長く勇者とともにいたから理解してる。
彼は来ると、信じてる。だからそれまで、自分たちはできることをする。
「いくぞ!」「はいぃい!」




