ボス、襲来
ユートが地上へ向かっている一方、村付近にて。
「! な、なんだあのバカでかいの!?」
冒険者の一人が、森の方角を指さす。
木々をなぎ倒しながら、巨大な影が近づいてきた。
「ふぇえええ! フィオナさんやばいですよぉう! ボスですよぉ!」
鳥瞰できるエルフのえるるが、出現した化け物の正体を口にする。
山のように巨大なアリだ。
体は鋼鉄でできてることから、鋼鉄アリの仲間だと思われる。
フィオナは混乱した。思い当たることがひとつだけある。だがそれはあり得ないことだから。
「GISHAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
大アリが口を開くと、そこから何かを吐き出す。
瞬時にやばいと悟ったフィオナだけが対応できた。
彼女は高速で走り、勢いのまま剣を投げつける。
放射閃。剣を投擲し、遠くの敵を打倒す技能だ。
投げた剣が大アリの吐き出した何かとぶつかる。
大きな音ともに、剣が溶けてしまっていた。
「酸か! くそ!」
フィオナが投げたのは勇者パーティ時代に使っていた、名刀。
それをやすやすと溶かしてみせた。かなりの強酸であるといえる。
この威圧感、そして、強さ。フィオナだけが正確に、敵の正体を見抜いていた。
「えるる! 伝令だ! ボスモンスターが地上に出てきたぞ!」




