地上
ユートがボスを追いかける一方。地上では、ユートの仲間フィオナが鋼鉄アリの大軍の相手をしていた。
ダンジョンから外に出たアリたちは、近くに食料の気配を感じとり、そこへ向かって進軍する。
食料、つまるところ人間のことだ。
ユートの村に向かってアリたちがすさまじい勢いで進んでくる。
濁流のごとく村へと流れていくアリたちの群れを……。
「せや! はぁあ!」
フィオナは次々と葬り去っていく。
彼女はユートに次ぐ実力者だ。
彼女の剣にも熱の魔法が付与されており、一振りするたびアリが真っ二つにされていく。
フィオナが暴れ、敵を引き付けてくれるおかげで、ほかの冒険者たちもやりやすくなっている。
そして、フィオナが打ち漏らしたアリは……。
「ひい! こっちくんなですぅ」
弓の名手、えるるが魔弓ホークアインを使って打ち抜いていく。
彼女が主に使うのは魔法の矢。魔力を使って矢を生成し、敵を攻撃するというもの。
炎の魔法を矢に変えて、えるるが正確に敵の頭を打ちぬいていく。
怠惰が原因で職を失っていたえるるだが、腐っても元勇者パーティ。
彼女の弓の腕はそうとうなものだった。
冒険者たちが村の外で戦闘を繰り広げる。そして村は、ユートが指示して作らせた防壁のおかげで無傷だ。
「やっぱりユートさんの勘はさえてますねぇ」
「ああ。準備ができていなかったら今頃被害は甚大だったろう。さすがユートだ」
勇者パーティのふたりには会話するほどの余裕があった。
冒険者たちはその余裕の態度を見て驚き、そして希望を見出す。
「あのふたりがいれば大丈夫だ!」「勝てる! おれたちは勝てるぞ!」
……だが、そこへ近づく巨大な影があった。




