ボスの罠
俺たちは村近くのダンジョンにもぐっていた。ボスの部屋に突入する。
そこは、薄暗い、そして広い広い部屋だった。
部屋がドーム状になっていて、奥には祭壇のようなものがある。
そこには人の大きさくらいのクリスタルが置いてある。
「あれが迷宮核。ボスを倒し、あれを破壊すればクリアだ」
迷宮にとってコアは心臓。心臓を壊されては困る。ゆえに、守護者たるボスが配置されている……はずなのだが。
「おかしいぜリーダー。ボスが出てこねえ」
たしかにおかしい。ボス部屋に入ったらすぐに、ボスが出現する。それが定石のはずなのだが……。
いや、待て。
「どうした、ディアブロ?」
リーダーのナハティガルが俺を呼ぶ。
「嫌な予感がする」
……前にフィオナが言っていた。俺の予感はあたると。……勇者としての力か、あるいは、勇者として戦ってきた経験が、俺に予感を与えるのか。
……いずれにしろ、当たってほしくない。
俺は迷宮核のそばに寄る。そこには……大穴が開いていた。
「! いかん! 罠だ! 周囲を警戒しろぉ!」
その瞬間、迷宮の壁から、ぞろぞろと何かが大量に出てきた。
くそ! なんてことだ。地上に敵がいた時点で想定しておくべきだった!
「こ、鋼鉄アリだ! 壁の穴にひそんでいやがった!」
「……これが罠でごじゃるか、ディアヴロ?」
忍びのアサノに問われて、俺は首を振る。
「そうじゃない! 敵は……ボスは、部屋からすでに脱出してる!」
「「「なっ!?」」」
この大穴は、おそらくボスが掘ったもの。すでにボスはこの部屋からいなくなっているのだ。
そして、それを知らない俺たちがのこのこと中に入ったところで、待ち構えていた自分の子であるアリたちに、敵を掃除させる。
ボスは、迷宮核を破壊されれば死ぬはず。なのになぜ迷宮の外に?
……わからん。ただ、一つ言えるのは、俺たちはまんまと罠にはめられたってことだ。
「とにかく、壁から出てきた大量のアリに、まずは耐えるんだ」
リーダーに俺がアドバイスすると、彼女はうなずいて命じる。
「総員密集陣形!」




