ゴー
俺たちはダンジョンにもぐって、ボス……女王アリをたおしに来た。
長い道のりを経て、ついにボス部屋に到着したのだが……。
「リーダー! 大変でごじゃる!」
「どうした、アサノ?」
Sランクパーティ、黄昏の竜。忍びのアサノが、焦ったように言う。
「地上に鋼鉄アリが、あふれ出たそうでごじゃるよ!」
アサノは地上に分身を残してきた。
感覚は共有される。つまり、今まさに、地上にモンスターがあふれた……ということだ。
地下部隊のメンツの顔に緊張が走る。……嫌な予感があたっちまったか。
どうにも、昔から俺の悪い方の感ってやつはあたってしまうんだよな。
まあ、今はそれは関係ない。
「戻るでごじゃるかっ?」
ナハティガルがうつむく考え込む。
わからんでもない。だが、今は迷ってる暇はない。
俺が代わりに言う。
「戻らない。ボス攻略が優先だ」
「だなぁ。今から戻ってるんじゃ遅い。かなり時間かかるしよぉ」
魔法使いのヒルドラが同意してくれる。
「戻るまでの時間を考えるなら、このメンツでボスをたおした方が良い。ボスをたおせば、ボスが産んだモンスターは消える」
「しかし……」
リーダーであるナハティガルは、地上の連中を気にかけてくれるみたいだ。
冒険者だけじゃ無くて、村のひと……俺の母さんやみんなをだ。
優しいやつだ。好感が持てる。だが、今は迷いは不要だ。
「立ち止まってる間に人が死ぬ。少しでも被害を減らしたいなら、進む一択だ。そうだろう?」
ナハティガルが目を伏せて、やがて意を決したようにうなずく。
「攻略続行だ」
メンバー達はみなうなずく。異論は無いようだ。
俺たちは武器を抜いて、部屋の前に立つ。
「すまない、ディアブロ。私が、未熟なあまりに」
ナハティガルが申し訳なさそうな顔で言う。
リーダーが迷ったことを、反省したのだろう。
責任感の強いやつだ。
俺は彼女の背中をぽんと叩く。
「気にすんな。仲間だろう?」
そう、ここに居る連中はチームなんだ。頼り、頼られて当然なんだ。
俺は笑って言う。
「地上のことは気にするな。俺の仲間が守ってくれてる。それに……キリコもいるしな」
「キリコ……? あの村長どのが? 戦う力なんて持ってなさそうなんだが……」
まあ、ナハティガルがそういうのも無理はない。
本人も、隠してるみたいだしな。
だが……俺にはわかる。勇者として、長く戦ってきたからか。
戦いの勘が告げてるんだ。彼女は、何か力を隠してるんだって。
どうしてなのかはわからない。けど、ピンチになれば必ず使うだろう。秘めたる力ってやつを。
「さ、いこう!」
「ああ!」




