襲撃
ユートが地下に行っている一方、地上では敵に備えての準備が行われていた。
村長キリコのおかげで、村人の避難はスムーズに進んだ。
女子供は村長の家に集められ、村の男衆は、土嚢を積んで村の守りを固めている。
「ふぇーん……だるいですよぉう、ふぃおなさーん」
小太りのエルフ……えるるが、実にめんどくさそうな顔をフィオナに向ける。
えるるは、ユートの元仲間だ。一周目の仲間達がこっちの世界にきたさい、元の世界に戻らず居残ったのだ(仕事が無いという理由で)
エルルには、ユートから預かった弓ホークアイが握られてる。
こんなぽちゃっとした見た目でも、弓の達人。そんな彼女にホークアイを装備させれば、周辺の警備は万全だ。
しかし当の本人は働きたくない様子。
「わたし必要なんですかー? 来る気配がないですよう?」
「来る。ユートが来ると言っているのだから」
「うう~……絶対無駄ですってぇ、こんな警備して馬鹿みたい……きゃいんっ」
フィオナがえるるの尻を蹴り上げる。
恋人の勘を馬鹿にされたので怒ったのだ。
「いいから黙って警戒をしろ」
「ふぁーい……」
そこへ、村長のキリコ、そして商人エルフのルーシィが近づいてきた。
「村の周りに土嚢を積み、簡易防壁の設置完了です」
「……村人も避難させたわ」
よし、とフィオナがうなずく。地上の戦力は、フィオナ、えるる、そして冒険者達。
上に残った冒険者は、戦えはするが、しかし地下部隊と比べると若干ランクが下がる。
この場で最も強いのは、元勇者パーティの剣士フィオナ、次点で弓使いえるる。
この二人+冒険者で、何かあったときは戦う必要がある。
「村人さんにも協力してもらうのはどうですかあ?」
「だめだ。彼らは戦闘訓練を積んでいない。何か起きたとき足手まといになる」
「でも、わたしとフィオナさんだけじゃ正直、鋼鉄アリがたくさん来たら、対処しきれませんよぉう」
「がんばれ」
「ふぇーん……」
えるるが周辺を見回す。ホークアイを装備したえるるには、鳥のように上から見下ろす視界を得る。
「だ、大丈夫……地下でユートさんが頑張ってるんだ。地上に敵なんてこないですぉ……絶対!」
と、そのときだった。
えるるの視界に、見たくないものが写ってしまった。
こわばるえるるの顔を見て、フィオナが剣を抜いて声を張る。
「みな! 敵が来る! 総員警戒態勢!」
「ああもぉ、来ないでって言った矢先に~!」




