村長の変化
元勇者ユートたちが、ダンジョン攻略へ行ってる、一方そのころ。
地上、ユートたちの村には、冒険者の一団が待機していた。
ユートのもとパーティメンバー、赤髪のフィオナもまた、武器を携えて、時が来るのを待っている。
そこへ、村長のキリコが近づいてきた。
「なんだ?」
「いえ……随分と、皆さん気を張ってますね」
フィオナは内心で首をかしげる。たしか、この村長はよそ者をあまり歓迎していなかったはず。ユートたちはなまる亭で働く従業員たちへのあたりも強かったはずだ。
向こうから声をかけてくるなんて。
警戒するフィオナを見て、キリコが首を振って言う。
「別に他意はありません。村を守ってくださってるんですよね?」
「……なぜそれを?」
「【ユート君】から、聞きました」
「ユートが?」
冒険者ディアブロならまだしも、ユートから聞いたというのに引っ掛かりを覚えた。
キリコは二周目ユート、そしてはなまる亭の人間を嫌っていたはず。
会話するとは、とても思えないが……。
なにか心境の変化でも、あったのだろうか。
だとしたら、村とはなまる亭との間にあった確執を、取り除いたのだ。
あんなにキリコは嫌っていたのに。すごいことだと、フィオナは感心した。
「そうだ。敵が来る」
「ユート君は、来るかもって言ってましたけど?」
「来る」
一周目のときからそうだったが、勇者ユートの勘は、なかなかに鋭い。
彼が来るかもというのなら、確実に来る。ともに旅をしてきたからこそ、ユートの勘を、フィオナは信頼できた。
キリコはしばし黙考した後につぶやく。
「わかりました。では、村人たちに言って、私の家に避難するよう触れて回ります」
フィオナがきょとんとした顔になる。今まで協力を拒んでいた彼女が、外部の人間を受け入れているのだから。
「なんですか? 一か所にいたほうが守りやすいでしょう?」
「いや……まあそうだな。助かる」
キリコが頭を下げると、その場を後にする。
人嫌いの村長の心を動かしたのは、まず間違いなくユートだろう。何をしたのかわからないが。
「さすがだな、ユートは」
恋人が活躍したことがとてもうれしかった。よし、自分も頑張ろうと、フィオナは思うのだった。




