作戦会議
食事を取った後、俺はルーシィ、そしてフィオナと会う。
「ご無事でなによりでした」
「まったくだ」
ふたりは俺の事情、転生した元勇者であることを知ってる、協力者だ。
赤髪のフィオナは、元勇者パーティの一員。
青髪のルーシィは商人だが、二周目のときからお世話になっている。
俺はフィオナの膝の上に載っている。彼女が後ろから強くハグしてて、話してくれない。
「あの……おろしてくれない?」
「駄目だ。ユート。これは罰だ。もう一人で暴走しないように、しっかりと反省するように」
「はあ……」
ただたんに、俺を抱きしめたいだけじゃあないだろうか……?
「ユート君、ナナミさんにいって、しばらくは宿屋の手伝いをしないで良いように手配しておきました」
「いや、でも……」
「そっちは我々に任せて、黄昏の竜の人たちと、鋼鉄アリの討伐に注力してください」
村近くに出現したダンジョン。そこには、鋼鉄アリという、なかなか厄介なモンスターが巣を作っている。
Sランクパーティ、黄昏の竜を含めた冒険者達は、そこに住むモンスターの討伐にやってきてる。
彼らのおかげで、宿屋、ひいては村は活気を取り戻してると言って良い。しかしダンジョンはほっとくとドンドンと範囲を拡大していく。
そうなるまえに、ダンジョンのボス……迷宮主たる、鋼鉄アリの親玉をたおす必要があった。
「パーティメンバーに聞いたところ、ボス部屋は見つけたそうだ。今日明日中には、討伐に向かう」
「なるほど……では、もう終わりは見えているのだな」
フィオナにうなずいて返す。
「ああ。ボスをたおして、それで終わりだ。それまでは……忙しいだろうけど、頑張ってくれ二人とも」
ルーシィとフィオナがうなずく。
「しかしユート君がいない間、鋼鉄アリが地上に出てきたらどうしましょう?」
「あり得んな。ダンジョンのモンスターは、絶対に地上に出てはこない」
「しかし他国ではそういった事例があったと聞いてます」
ルーシィは全国を回る商人なので、いろんなことを知ってる。
「なくはないか……。フィオナ、おまえには俺のアイテムを渡しておく」
「聖剣もか?」
「ああ。もし何かあったら、頼む」
俺は一周目の仲間達からもらったアイテムを、フィオナに預けることにした。
まあ、何事も無ければそれはそれでいい。
何もないといいのだけども。