快復
遅くなってすみませんでした。
俺はゆっくりと目ざめる。
体をぐいっとのばす。体のだるさは失っていた。
上体を起こして、額に触れてみる。
「……うん。熱く、ない」
目ざめた俺は、これまでのことを振り返る。
俺はユート。転生者だ。
転生……というか歴史をもう一度繰り返している。
元々は勇者だった。長い旅を終えて魔王をたおした。
けれど、母さんが倒れてしまった。
そのことを悔いていると、魔王をたおしたアイテムが発動。気づけば過去の世界に戻ってきた。
魔王を討伐した俺は、実家である宿屋【はなまる亭】を手伝うことになった。
……そして今は、村の近くに鋼鉄アリというモンスターのダンジョンが発見された。
冒険者達が来るようになったのだが、村人達はよそ者を排除する傾向にあった。
そこで村人と冒険者、どっちも楽しめるように、俺たちはビアガーデンを開くことにした。
俺は宿屋の手伝いと、冒険者ディアブロ、どっちも頑張った。
頑張りすぎて、過労で倒れた……というわけだ。
「……何やってんだ俺は」
母さんは過労で死んだ。そのことを知ってるのに、俺が同じ失敗をしてどうする。
過労は、死の病だって、誰よりもわかってるはずなのに。
「……次からは、気をつけよう」
俺は決意を新たに、活動を再開したのだった。