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04.勇者、料理下手な母の代わりに、ごちそうを振る舞う




 勇者として20年を過ごした俺。勇者を引退し家に帰ると、実家の宿屋は潰れてるし、母親は死んでいるしで最悪だった。


 そんな中、国王からもらった【願いの指輪】が発動。気づけば俺は20年前の、勇者として覚醒したばかりの頃まで戻っていた。


 俺は母さんとこの宿を守っていくことを決意し、まずは1番の邪魔者、魔王をこの世からマッハで葬った。


 これで勇者としての俺の役割は終了。あとは実家の手伝いに力をさける。

 

 今度こそ……俺は親孝行するのだ。


「……と意気込んでみたはいいけど、問題は山積みだよなぁ」


 魔王を倒した翌日、自分の部屋にて。


 俺はベッドの上にあぐらをかいて、ううーん……とうなっていた。


「宿を繁盛させて母さんを楽させる……っつっても、やらないといけない問題がまじで多すぎる」


 俺はヒザの上に乗っている羊皮紙を持ちあげる。羊皮紙は【アイテムボックス】に入っていた物を使った。俺は勇者だった頃のアイテムを持った状態で転生したのである。


 羊皮紙の1番上にはこう書かれている。


【はなまる亭 繁盛計画】


 これは俺が、魔王を倒した後、一晩かけて作った計画書だ。


 うちを繁盛させていく上で、何が障害になっているのか。


 どんな問題をこの宿が抱えているか。


 そしてひいては、【この村】が抱えている問題は何か、ということが書いてある。


「問題抱えすぎだろここ……。いや、この村か」


 問題は大きく分けて、3つある。



1.宿が抱える問題

2.村が抱える問題

3.俺自身が抱える問題



 大きく分けるとこの3つにわかれる。そこからさらに細かな問題が派生する……みたいな。


 宿を繁盛させていく上で解決が必要な問題は、山積されているのだ。


「……一個ずつ潰してくしかないよな」


 細かい問題まであげると切りが無くなるし、頭が痛くなる。今は目の前のできることを、1つずつやってくだけだ。


 そんなふうに頭を悩ませていた、そのときだった。


 ーーコンコン。


 と部屋のドアがノックされたのだ。


「どうぞー」


 がちゃり、とドアが開くと、そこには、小さな赤毛の女の子がたっていた。


「ゆーくん♡ おはよ♡」


 ててて……っと俺に近づいてくる。


 この子はソフィ。俺の幼なじみで、1周目の時は勇者パーティでの仲間だった。


 だが2周目の今この場においては、たんなる年下の幼なじみに過ぎない。いや、妹か。


「えへー♡ ゆーくんゆーくんゆーくん♡」


 ソフィはよいしょっ、とベッドに登ってきて、俺の腰にしがみついてくる。


「ゆーくん何よんでたの?」


 じっ……とソフィの目が、俺の持っていた羊皮紙の束に向く。


「なんでもない。ソフィには関係ないよ」


 俺はベッドの脇に羊皮紙を押しやる。


 するとソフィが……じわり、と目に涙を浮かべた。


「そ、ソフィ?」


 どうしたいきなり……と思ったそのときだった。


「ぴぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」


 ソフィが大声で、わんわんと泣き出したのだ。


「ゆーくんがっ、ふぃーを、わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」


 目から大量の泪を流すソフィ。


 そう言えばこの子、小さいときはこんな感じだったなだったなと思い出す。


 まさか将来、俺のことを【貴様】とか言うふうに育つなんてな。人生はわからないものである。


「なんで泣いてるんだよ?」


「ゆーくんがぁあああああ!! ふぃーを、ふぃーを、わぁああああああああああああああああ!!!」


 と大声でソフィが泣いていた、そのときだった。


「ソフィちゃん~。どうしたの~」


 がちゃり、とドアが開いて、俺の義母、ナナミさんが入ってくる。


「ななちゃーん!」


 ソフィは母さんを見やると、パァッ……! と表情を明るくし、母さんめがけて走って行く。


 母さんの足下までいくと、ぴょんぴょん、とその場でジャンプ。


「ななちゃん、ななちゃん!」


「はいはいだっこね~。よいしょ~♡」


 母さんはソフィを抱っこする。


「ななちゃんのおむねふわふわでだいすき~♡」


 ソフィが嬉しそうに、母さんのふくよかな乳房に顔を埋める。ぐりぐり、頬ずりする。


「ありがと~♡ ママもソフィちゃん大好きよ~♡ すりすり~♡」


「すりすりー♡」


 母さんはソフィのほっぺに頬ずりする。ソフィも母さんに頬ずりして返す。


 ややあってソフィはすっかり機嫌をなおす。


「ソフィちゃん、どうした~? さっきはどうして泣いてたのかな~?」


 するとソフィは俺を指さし、


「ゆーくんがふぃーをなかまはずれにしたの~」


 目を><にしながら、ソフィが言う。


「あら~? 本当に~?」


 ナナミさんはポワポワ笑いながら、ん~? と首をかしげる。


「でもソフィちゃん。ユートくんはそんな悪い子じゃないよ~? あっちいけとかいってた~?」


 ソフィは「ううん」と首を振るう。


「そっか~。じゃあちがうよ~。本当に仲間はずれにしてるなら~。あっちいけって言ってるはずだよ~?」


「そ、そうかなぁ……」


「そうだよ~♡」


 母さんが俺に視線を向けてくる。そうだよね、と確認をしてきたので、俺はうなずいた。


「ほらユートくんもそうだって~♡ ほら、ソフィちゃん、仲直りしてましょうね~」


 母さんが抱っこしていたソフィを下ろす。

 赤髪幼女はとことこと歩いてくると、俺の前で立ち止まる。


「ゆーくん、ごめんねぇ~……」


 だきっ! とソフィが俺に抱きついてくる。


「ふぃーね、ふぃーね、ゆーくんだぁいすきなの。だからふぃー、ゆーくんにきらいっていわれて、とってもかなしくなったの。きらいにならないでー……」


 ぐりぐり、とソフィが俺に頬ずりしてくる。俺を離すまいとぎゅーっと、子どもの力で抱きしめてくる。


「ソフィ。別に俺はおまえを嫌いなんて思ってないよ」


 俺が彼女に言うと、ソフィは「ほんとー!」とパァッ……! と明るい表情になる。


「えへっ、えへへっ、えへへへへっ♡」


 ソフィは俺から離れると、再び母さんの元へ行く。「んっ!」「は~い♡」


 ソフィは両手を母さんに伸ばす。母さんは嫌がることなくソフィを抱き上げる。


「あのねななちゃん、きいてきいてっ!」


「な~に? おしえてソフィちゃん~♡」


 耳元にソフィが口を近づける。


「ゆーくん、ふぃーのことあいしてるって」

 

 まじめくさった顔でソフィが言う。


「ふぃーのこと、およめさんにしてくれるって!」


「ま~♡ よかったわねソフィちゃん♡ ユートくんを幸せにしてくれるかな~?」


「いいともー!」


 ひしっ! とソフィが母さんと抱き合っている。


「さてユートくんのお嫁さんかっこかりが決まったところで~」


 にっこりと母さんが、ソフィを抱っこしたまま言う。


「ユートくん、おはよ~♡」


 大輪の花のような笑顔を、母さんが向けてくる。とても心が癒やされる。この笑顔のためなら頑張れるって、本気でそう思う。


「おはよう、母さん」



    ☆



 さて母さんのために頑張るぜ……と奮起したは良いけど問題は山積み。


 具体的にどんな問題があるかをまずは目で確認していくとしよう。


 俺は朝食を取りに、ソフィと一緒に食堂へと向かう。


 この【はなまる亭】は2階建ての建物だ。


 一階はフロント。東ブロックには食堂。西ブロックには個室が4つ。


 二階の東ブロックには2人部屋が2つ。西ブロックには4人部屋が1つ。


 この2人部屋のひとつが、俺の部屋になっている。客が満杯になったらどくことになっているが、まあ満杯になることはないため、ほぼ俺の部屋と化している。


 一階へ降りて、俺たちは食堂へと向かう。


「じゃあユートくん、ソフィちゃん、いまママが美味しいスープを作ってくるから、まっててね~♡」


 そう言うと、食堂の奥にある、調理場へと引っ込んでいった。


 この食堂は、この宿に泊まるひと用に開かれている食堂だ。


 丸テーブルにイスがいくつかあるのだが、その全てがカラである。


 ただ勘違いしてはいけないのだが、別に客がいないから、食堂ががらんとしているのでは、決してない。


 現に、


「ナナミさーん!」


 と、二階から泊まり客が降りてきて、食堂に顔を出す。冒険者のようだ。というかここの客は冒険者しかいない。


 なぜならこの村、ダンジョンのすぐ真横にある村だからだ。そのダンジョンに訪れた客=冒険者、というわけである。


 冒険者の青年は母さんに声をかける。


「あら~。おはよ~♡」


 と母さんが料理を作りながら、笑顔を浮かべる。その笑顔を見た冒険者が、「はうっ!」と心臓を抑える。


 母さんのぽわぽわと笑う姿、そして母さんのふくよかで大きなおっぱいを見て「おはようござまーすー……♡」とデレデレとした笑みを、冒険者が浮かべる。


 青年があいさつした後に、ぞくぞくと冒険者の男どもが、二階の部屋からおりてきて、「おはようございます!」「ナナさんおはよう!」「てめえナナさんとか気安く呼んでんじゃねーぞ殺すぞ!」


 と軽い騒動になる。


 かあさんは「みんな仲良くね~♡」というと、客が「「「はーい!」」」と返す。子どもかあんたら。


 このように客はいるのだ。そこそこだけど。今日の泊まり客は4人か。そこそこだ。


 そして客のひとり、最初に来た青年は、食堂に入らず、


「それじゃ、ナナミさん、いってきます!」


 とあいさつする。今は朝だ。起きがけで腹が減っているだろうに。


「ナナさんいってくるぜ! めっちゃ稼いでくるから!」「ナナさん俺、この冒険が終わったらあなたにプロポーズしますから!」「ばかやろう! ナナさんは俺の物だ!」


 と、残りの客も、全員が食堂に寄らずに出て行く。かあさんに声をかけただけで出て行く。


「あら~……。残念。今日もみんな、おなかいっぱいなのかしら~。残念~」


 しゅん、と母さんがスープを作りながら落ちこむ。


 見ればわかるだろうが、あの冒険者どもは、母さんにぞっこんだった。


 そりゃそうだ。母さんはこの時代、まだ23。若い。その上未亡人。


 そして胸は大きく腰はくびれて、おしりも大きく、男を殺すためにあるような体つきをしている。


 さらにその上、いつも明るい笑顔で出迎えてくれるのだ。これで惚れない男はいない。


 あの客たちは、母さんとお近づきになりたいいっしんで、この村の宿を利用している。


 ここに通い詰めて、あわよくば美しい未亡人と結婚したい。……と。そうでなきゃ、おそらく彼らは、この宿には決して泊まらないだろう。


 その理由の一端は、すぐに出てくる。もうすぐ母さんが、理由の一端を持って、やってくるだろう。


「ふたりとも~。おまたせ~♡」


 そう言って母さんは、スープの入ったお皿を、俺たちの座るテーブルの上に乗せる。


 皿の中には…………7つの色をした、スープが入っていた。


 …………。


 いや、うん。まあ、そういうことだ。


「か、母さん……。今日は何を入れたの?」


 虹色かつコポ……コポ……と泡が出ているスープらしき物を指さして、俺が尋ねる。


「今日はね~。自信作だよ~」


 ふふん、と母さんが得意げに語る。


「隠し味にね~。チョコレートいれたんだ~」


「ちょ、チョコレート……? す、スープに?」


「うんっ♡」


 母さんがめっちゃ良い笑顔になる。


「さ、めしあがれ~♡」


 こぽこぽいってる謎の物体を、だらだらと汗をかきながら見やる。


 こ、これにチョコレート入ってるのか……? でもチョコらしさはまるで感じられないンですけど……。


 いやでも、奇跡的に。


 奇跡が起きてめっちゃくちゃうまいスープが出来上がってる……とか、あるかもしれない!


 俺はスプーンでスープを掬って、一口食べる。


 ……。

 …………。

 ………………。


 口の中が、痛い。ぴりぴりする。なんか、舌が、しびれる……。


「どうかな~?」


「い、いいひゃない? おいしいよ、かあひゃん……」


 舌が痺れて、ろれつが上手く回らない。


 体が拒否反応を起こしている。これ以上スープを食ったらあんた死ぬよと。

 

 それでも俺は、涙を呑んで食べた。だって母さんがせっかく作ってくれたスープなのだ!


 食え! 無心で食うんだ!


 俺はガツガツガツ、と舌が痺れるスープを、涙目になって食べる。


 あの冒険者たちが食堂を利用しない理由は、これだ。


 この宿の主である母さんは、ものすごく、料理が下手なのだ。


 しかもたちの悪いことに、自分が料理へたである自覚がない。チョコレートを入れたら甘くて美味しくなるよね、と言う感覚でチョコを入れるのだ。悪気はない。


 本当にこの人は料理が下手なのだ。だから、冒険者たちはこの宿には泊まるけど、食堂を利用しなかったのだ。


 母さんという、超美人な宿屋の看板娘がいても、宿がいまいち繁盛しない理由の50%くらいがこれだ。


 宿屋なのに、出される飯がまずい。


 ゆえに宿に泊まりはするけど、飯は食べないという客が非常に多い。みんな母さんの飯マズっぷりはわかっているからだ。常連であればあるほどな。


 ただ勘違いして欲しくないのだが、別に料理がまずいって理由だけで、この宿が繁盛してないわけではない。


 あくまで大きな要因のひとつに、母さんの飯がまずいという事実があるだけだ。


 とりあえずはここをまず改善しないと。小さな問題を、ひとつずつ潰していくと決めたのだから。


「か、母さん!」


 ソフィが「まずいよぉ……」と半泣きになっている傍らで、俺が声を張る。


「あら、なーに♡」


「えっと……」


 ここで、【俺が料理を作っても良い?】と言って、チートアイテムを使って料理を作る展開はできない。


 無理だとわかってる。


 だがあえて、俺は言う。


「もし良かったらさ……。俺に、料理作らせてもらえない?」


 万が一の確率にかけて、俺は決意を込めて言う。俺が料理を作れるようになったら、宿の抱える問題のひとつが改善され、客が少し増えるだろう。


 あくまでも……母さんが了承してくれたら、の話しだが。


 俺の言葉に……母さんの表情がみるみる険しくなる。


「だめよ~」


 いつもの柔らかい声だ。だがそこには、ハッキリとした、拒絶の意思があった。


「な、なんで……? 母さん知らないだろうけど、俺結構料理の才能あるんだぜ?」


「だめだよ~」


「なんでだよ……?」


 すると母さんは、ニコニコしながら、しかし眉をつり上げて言う。


「火を使うの、あぶないでしょ~?」


 ……そう。


 そうだ。確かに10歳の俺が火を使った料理を作ったら、あぶない。だから火を使わせない。料理を作らせない。


 それは母親としては正しいし、10歳の息子にする反応としては正しい。


 いくら俺の中身が30のおっさんだからといって、母さんから見たら俺はまだまだ子ども。


「料理を作ってあげるってきもち、とってもうれしいわ~。けどユートくんがやけどするのは嫌だよ~」


「…………うん、そうだよね」


 母さんはそう言う人なのだ。優しい人。再婚相手の血のつながらない息子を、女手ひとつで育てようっていうんだから。優しいに決まっている。


 だが優しさがあるがゆえに、俺は自由に、表だって手伝いができない。


 ……おそらくこの種の悩みは、今後手伝いをすすめてく上で、常につきまとってくるだろう。


 だがここでへこたれていてはダメなのだ。俺は決めたんだ。俺は、この宿を繁盛させるんだと。母さんを楽させるんだと。


 俺は1度イスから降りる。


「ちょっとトイレ行ってくる」


 と言って食堂を出る振りして、高速で調理場へと移動。勇者の強化された脚力なら、食堂を出た振りをして一瞬で調理場へ行くのは容易い。


 調理場には寸胴鍋が置かれている。


 鍋の下には魔法コンロ(魔力に反応して火が出る魔法のコンロ)が敷いてある。


 鍋を覗くと、そこには虹色の謎のスープが入っている。


「…………よし」


 俺は意を決して、アイテムボックスを開く。


「クック。力を借りるぜ……」


 俺はアイテムボックスの中から、ひとつの鉢巻きを取り出す。


【食神の鉢巻き】


 勇者パーティでは料理人として働いてくれていた仲間からもらった、チートアイテムだ。


 これはいかなる料理でも作れるようになる、という魔法の鉢巻きだ。


 俺は鉢巻きを巻く。


 そして念じる。


【このまずいスープを、とっても上手いスープにしてくれ!】


 すると鉢巻きが俺のリクエストを受け取る。俺はアイテムボックスから、【万能調理具】を取り出す。


 こっちも料理人のクックからもらったアイテムだ。包丁、鍋、あらゆる調理器具になれるという魔法の調理道具。


 鉢巻きが効果を発揮し、俺は飛ぶように動く。調理場にあった食材を駆使して、俺は瞬く間にスープに手を加えていく。


 万能調理具は、包丁へ、お玉へ……とどんどんと変化し、俺は神業とも言えるスピードで、鍋の中身に食材を足したり、煮たり、あくを取ったりする。


 ややって完成したのは……上手そうなビーフシチューだった。


 鍋の中には茶色いとろりとしたスープが入っている。スープの中にはゴロゴロとした大きな肉が入っており、ほかには野菜がほどよく大きくカットされていた。


 匂い立つ湯気を嗅ぐだけで、ヨダレがだばだばと出てくる。


 これなら……!


「ねー、母さん。スープお代わりして良い?」


 勇者の敏捷性と、【食神の鉢巻き】のおかげで、あっというまに料理を完成させた。


 母さんは「良いわよ~」と返事をする。


 俺はビーフシチューの入った皿を持って、母さんとソフィの前へと戻ってくる。


 ソフィは半泣きで「まずいよぉ~……」と悲しい顔をしていた。


 なのだが、俺がビーフシチューを持ってやってくると、「!」と目を大きくする。


「ゆ、ゆーくん……それ、なぁに?」


「ん? 母さんのスープじゃん。ほら、チョコが入ってるから茶色だろ?」


 俺はソフィの前に皿を置く。


 するとソフィは、鼻先がくっつくんじゃないかってほど、スープに顔を近づける。


「なにこれ……よだれがとまらないよぉ……」


 爛々と輝く瞳で、スープを凝視するソフィ。鼻をヒクヒクとさせ、ヨダレが垂れて、スープにぽたぽた落ちている。


「食べるか?」


「うんっ!」


 ソフィは即答し、スプーンを持つと、ビーフシチューを掬う。


「あら~? お肉なんていれたかしら~?」


 と母さんが首をかしげていた。


「いれてたよ」と俺が言うと、「そっか~♡ ユートくんがそういうならそうね~♡」とあっさり認める。


 息子のこと信用しすぎでしょ……。


 それはさておき。


 ソフィがあんぐりと口を開けて、チートアイテムによって作ったビーフシチューを、ぱくり、と食べる。


「…………」


 咀嚼して、飲み込む。


 するとーーー


「う、」

「う?」


「うまぁあああああああああああああああああああああああいい!!!!」


 ソフィが満面の笑顔を浮かべて、そう叫んだ。がつがつがつ! とスゴい勢いで、スープを食べていく。


 さっきまでの暗い顔はどこへやら。ソフィはあっという間にシチューを平らげる。


「おかわりー!」


「はい~♡」


 母さんがシチューをついで戻ってくる。ソフィは一瞬でビーフシチューをからにする。


「美味しい! ナナちゃんの料理、はじめておいしくかんじるの!」


 ソフィが笑顔でそんなことを言う。


「ありがと~♡ たくさんたべてね~♡」


「うんっ!」


 がつがつと食べるソフィを見ながら、安堵する。


 よし、チートアイテムはきちんと使えてるようだ。母さんに見つかると怒られるから、こっそとりとしかできないが、それでも。


 こうやって料理に手を加えれば、ちゃんと食べれるものになってくれる。


 ありがとう、クック。さんきゅー。まじ助かった。


 俺はクックに感謝しながら、ビーフシチューを食べる。


 うん、美味い。めちゃくちゃ美味い。俺はクックに心からの感謝を捧げながら、料理を腹に入れるのだった。



お世話になっております。こんな感じで宿の問題をあげていって、チートアイテムで問題解決する、みたいな感じを今後繰り返していく感じになります。今回はお試し版みたいなものです。


料理事情の根本的な解決にはまだなってませんので、料理問題は今後も取り上げていきます。


次回もよろしくお願いします!


もし可能であれば下の評価ボタンを押していただけると嬉しいです!励みになります!


ではまた!

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