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2-0 追憶 のち 晴天

 所々がはがれている石畳の上を蔦が覆い尽くしている。

 横を見れば、恐らく住居だったと思しきレンガ積みの建物の跡がいくつも散在していた。

 その住居も石畳を這いまわっている蔦に半ば呑み込まれ、すでにその場所の生活が(とっ)くの昔に消えてしまったことが分かる。

 その中心部。

 道や住居跡の配置から考えるとメインストリートのど真ん中には大きな首が転がっていた。


―そう、あのくそトカゲの首だ―


 その前で「勇者」が剣を鞘に納め、横に立つ「魔王」とハイタッチをしている。

 どこか疲れたように石垣に腰を落とした「聖騎士」が休息を取っており、「軍師」は何かを必死に手元の手帳に書き込んでいた。


―ああ、そうかあの時の―


 古代遺跡、侵入した最初の広場であの真っ黒の羽の生えたくそトカゲに襲われた。

 彼らは何の問題もなくそのトカゲを倒した。

 「軍師」が皆にフォーメーションを指示し、「魔王」が魔力球でトカゲの腹を打ち抜き、「聖騎士」が大剣を振るい、4枚の羽を叩き切る。

 「聖女」は皆に戦士の祝福をかけて援護し、その援護を受けた「勇者」がそのトカゲの首を一閃のもと、斬り落とした。


―そうだ、そうだ―


 「聖女」が自分の元にやってくる。

 微笑んでいる彼女。

 その後ろであのくそトカゲが動く。

 全員が戦闘後で気の抜けたその瞬間に、トカゲ野郎が首だけで動いた。

 虚を突かれ、「勇者」も「魔王」も「軍師」も「聖騎士」も「聖女」も。

 誰も動けなかった。


―だから、俺は―


 迫るトカゲの首。

 トカゲから見て真正面に立っている、後ろを向いていた「聖女」が竦み、棒立ちになる。

 左手で彼女の腕を掴んで力任せに、彼女を投げた。

 腹に熱を感じ、頭に血が昇ったのを感じる。

 そしてそのくそトカゲの濁り始めた眼球に「凡骨」が映っていた。

 閉じられた咢に挟まれた「凡骨」、憎々しげに睨み付けた「凡骨」の姿が映る瞳を鏡映しに見つめ返す。

 自由になる右手で振りかぶった槍が、鏡写しの「凡骨」目掛けて突きこまれる。



―覚えているのは、そこまでだ―






じりりりりりり!!


「んが、んぅぅぅ……」


 もぞもぞと毛布から腕を伸ばし、枕元で自分の存在を全力主張している目覚まし時計を掴むと、文字盤の裏にあるアラームのスイッチを探す。

 目覚めたばかりだとこういうスイッチの位置を一発で探り当てるのは難しい。


「ねみ……」


 茂は上半身を起こして寝床から抜け出す。

 掴んでいる目覚ましのアラームをオフにして、文字盤の時刻を確認。


「6時……。ゴミ、出してこないと」


 ふわぁぁと止まらない欠伸をかみ殺し、寝間着替わりのTシャツとジャージのまま、寝る前に玄関に置いておいたゴミを掴んで外に出る。

 なにか懐かしい夢を見ていた気がするが、何だったかが思い出せない。

 行儀悪くTシャツの腹をぽりぽりと掻く。

 Tシャツ越しに腹に走る傷に指先が引っかかるが、痒いのか少し力を入れて又腹を掻いた。

 キーホルダーが無くなってしまい鍵だけになったスペアキーで施錠すると、ゴミ置き場へぺたぺたサンダルを鳴らしながら向かう。

 7時までに出しておかないと翌週に持ち越しになるのだ。

 流石に異臭のする異世界の普段着と、汚れのこびりついたタオル類を1週間も放置したくはない。


「ああ、今日晴れたじゃん。良い日になるといいなぁ」


 朝の澄んだ空気と、一面の青空。

 ちゅんちゅんと鳴く雀のBGMをバックにゴミ袋片手の杉山茂。

 


異世界帰還2日目の朝が始まった。

うん、触りだけ書いたのでー。

楽しんでくれるとうれしいな、と。

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