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一般人遠方より帰る。また働かねば!  作者: 勇寛
2章

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4-間 休息 のち 充填



「はい、じゃあこれで最終チェック入るので、いったん休憩ですー!お疲れ様でーす!!」


 イベントの総監督という肩書を持つアロハの男が手に持ったメガホンで休憩を告げる。

 とはいえ、休憩に入るのはイベントの出演者のみで、音響や映像、細かな演出用の機材の点検などは別のスタッフの仕事となる。

 煌びやかな衣装の少女たちがステージから引き上げると同時に、一斉に微調整や、カメラを持ち出し、スタッフが細かな最後の調整を始める。

 船のデッキ部分に急遽作られたイベントスペースでのリハーサルは一先ず終了となり、今度は船内のダンスフロアに作られたファッションイベントのランウェイの状況を確認しに向かうパピプのメンバー。

 その最後尾の神木美緒はつかれた顔をしながらも、しっかりとした足取りで歩いていた。

 ただし、その内面は疲労感で一杯一杯だった。


「うぅ…疲れたぁ」


 誰にも聞こえない様にぽつりとつぶやくと、太っちょのマネージャー、間島がスポーツドリンクを手渡しに来る。


「美緒、調子はどうだ?」

「どうだも何も。新曲だから皆緊張してるし、ダンスも昨日振りを一部変えたりした分、完璧じゃあないし。しかも音が急に止まったから、中断中断で一曲フルで通しでできた事なかったでしょう?正直、マズイかも」

「……演出ってことでどうにかできないか?」

「カメラワークでごまかしながら、ってことか……。それも失礼な話じゃない?ネット配信するってことはその向こうの人は新曲を期待して見てるんだし」

「お前、仕事に関しては手を抜かないな。……どこまでやるか踏ん切りはついたか?」


 最後は消え入るようにして隣の美緒にしか聞こえなかった。

 それを受けて美緒が答える。


「とにかく、今日のこの仕事が終わってから。今月のビッグイベントはこれで最後でしょう?」


 手帳を取り出し、ページをその太い指で繰る。

 

「……一応そうなるかな。収録とかはあるが、生放送で、というのはこれが最後だ」

「時間も出来るだろうし、今後の事考えるためにもこの仕事は問題なく終えないとね」


 その美緒の横をがらがらと衣装を満載した荷物が通る。

 ファッションショー用の衣装だと思われ、日本人だけでなく外国のすらっとしたモデルと思われるような人もちらほらと見える様になってきた。


「すいませーん!通りまーす!!」


 前方が見えないほどの大きな花束を抱えて行ったり来たりする人や、食事の弁当を各所へと運ぶのに必死の若者、船外の喫煙コーナーへとまっしぐらのタバコと100円ライターを握りしめた一団など、混沌と化している。


「楽屋、というか宿泊用の船室が用意してある。ショーのランウェイの確認終わったタイミングで一度戻ってすこし休むことにしようか?」

「さっきのダンスの映像、もし焼ける様だったらDVDに落としてほしい。休憩中にもう一回見ておきたいから」

「確認しよう。後は何かあるか?」


 手に持ったスポーツドリンクを一気に飲み干し空にすると、それを渡すようにして間島に近づく。

 かすかなウィスパーボイスで間島の耳元に美緒の声が届いた。


「……さっきのデリバリーの中華っぽいお弁当、すごいおいしそーだった。取りあえずお部屋に3つ確保で」

「お前、さっきケータリングでバジリコのパスタ食ってなかったか?」

「もうその分のカロリーは消化し切りました。アタクシ、もうすぐガス欠でやんす。間島さん、お助けくだせぇ」


 間島から離れて美緒はくすくすと笑う。

 間島がジト目で見つめる美緒のスタイルは、あれだけの暴飲暴食をしている人間の体とは思えない。


「1つは俺のでいいんだよな?」

「あ、それなら4つ。4つ確保でお願いしますー」


 ぱたぱたと駆け出した美緒の後姿を見て間島がため息を吐く。


「スタッフさんにまたあのデブ、バカ食いしてやがるって思われるんだろうなぁ……」


 神木美緒のチーフマネージャー間島。

 最近ダイエットを開始し、食事も低カロリーのダイエット食に変えたというのに、人は見た目で人を判断するのだ。

間島は外見はやはり大事なのだということを、美緒のマネージャーになってからひしひしと感じるのであった。






「組対二課から応援を増員してもらえることになった。指揮系統の確認も含めて急ぎで準備中だ。さすがに根っこや本体までは無理だろうが、枝葉の馬鹿どもを一斉に引きちぎってやるぜ」


 昨日と同じく喫煙者という肩身の狭いステータスを持つ老刑事、石島はぷかぷかと煙をくゆらせながら満足げに語りだす。

 にやつきが止まらないのは、これから始まる徹夜のカチコミに向けてやる気がぐんぐん充填されているからだ。


「あのねーちゃん、すげえよ。上からの指示って話で、どうなるんかと思ったがあれは相当ヤバい橋わたって来てるぜ。取り調べのアドバイスも、弁護士相手の交渉もドンピシャ。結構ギリギリの線から金と兵隊引っ張って来てくれたからな。情報漏えいの可能性があるからって速攻で手弁当で兵隊の用意まで仕上げてくると思わなかったしな!」

「別組織って話ですけど。「光速の騎士」「骸骨武者」の対策関連部署らしいです。所属があいまいな分統率の問題もありますが。まあ、今回の件は本当にあいつらが関係してるのかわからないですけど……」


 隣でぼやく中年の加藤刑事。

 石島はばしばしとその背を叩くとこう続けた。


「いいんだよ!何でも使えるもんは使うってことで。火嶋教授も言ってただろ?「騎士」は建前で構わない、クスリの撲滅が結果として出来るんなら成果として報告できるからって。民間と共同ってとこが心配だったが、力ずくで押しこみゃある程度成果も出る」

「危険な香りがしますよ?最悪ヤクザですむかと思ってたのが、大元が海外資本の闇社会って、予想の上行きましたし」

「まあな。だからこそ、って課長も思ってるんだろうさ。家の中に入ってきそうな涎たらした狂犬を玄関先でおもっくそ蹴飛ばしてやる。これが出来りゃ、後々相手に効いて来るさ。運び込むルートの再検討に、協力する反社会勢力どもの調整に、根回し。動きがありゃ地方の警察の情報網に引っかかる可能性も増えるからな。ここで徹底的に粉みじんになるくらいにぶちのめしてやる」

「ですね。それ、最高に楽しいですよね」

「おおよ!最っっっ高に決まってんだろ!!」


 タバコをもみ消して灰皿に放り込む。

 腕時計を見ると16時を回っていた。


「やるぜ、加藤。しっかり飯食って、歯ァ磨いて、きっちり正装して、パトカーずらりと並べて参上仕ってやるぞ!この国の中で、クソ以下のヤクの元締めをのさばらせるなんざありえねェかんな!!」

「いいっすねぇ、石島さん。定年間近のおっさん刑事には見えないですよ」

「あったりまえだろうが!こういう"最後は拳骨"ってので大切なのはな、自分が20のガキだと思い込むことだ!青春真っ只中、石島参上ってな!!」


 喫煙コーナーを出ると、ちょうど岡持ちをもった近所の飯屋の出前が帰るところだった。


「お、言ってたら来たぜ。飯だ、飯!」

「石島さん、何頼んだんですか?」


 加藤に尋ねられ、石島がにやりと笑う。


「俺ぁなぁ。当然、かつ丼に決まってる。医者に血圧が高いって言われようが、看護師に塩分控えめにって言われても、ここ一番にはかつ丼一択だぜ!」



よい子はお医者さんの言う事を聞きましょう。

悪い子でもお医者さんの言う事を聞きましょう。

それが大切です。


あと警察ってきっとこんな感じじゃない気がする。

これはフィクションです。うん、フィクションです。

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