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一般人遠方より帰る。また働かねば!  作者: 勇寛
2章

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4-1 合流 のち 決意




「あ、居た居た。おーい!」


 チャリで再び25キロの道のりを疾走して再びの『白石コーポレーション精密機械、IT技術開発拠点・試作機試験場』前の公園までたどり着くと、約束していた2人がすでに待っていた。


「あ、茂さーん!」


 ぶんぶんと小さな体で飛び上がりながら体全体で自身を主張する女の子と、遠目からでもそれを恥ずかしそうに抑えようとする男の姿が目に入る。


「由美、恥ずかしい。物凄く恥ずかしいから。ちょっと落ち着け」

「えー!何、博人自分だけその落ち着いた感じー?」


 頭を抱える「魔王」と姦しい「軍師」がそこに居た。

 博人の横にはバイクが置かれており、由美はヘルメットを持ってそれを鈍器代わりに博人を軽くどついている。


「待たせたか?流石にすぐここまで来れるとこに居候先がないからさ」

「俺たちも着いたのは1時間くらい前で、ちょっとコーヒー飲んでましたし。さすがにバイクで来るってなると東京って遠いですわー」

「博人、一回変なとこで道間違えたんですよ。そんで遅くなったんですけどー」


 にやにやと由美が博人の腹をつんつんと突付く。


「……俺、都会嫌いです」

「……偶然だな。俺も嫌いかも」

「私は結構いろんなものがあるから好きですよ?」


 2:1になってはいるが、疲れた風情の男どもはため息をつく。


「ごみごみしてて忙しないからなー。ゆっくり生きていきたい、俺」

「俺もですかね。何か必要ならネットで買えばいいじゃんって思うタイプですんで」

「えー!何で茂さんも博人もジジクサイこと言ってるんですか!外出ましょうよ!」


 そんなことを話していると、ふと茂が思い出す。

 彼らがここに来るときの“お土産”である。


「そういやメールで連絡のあったお土産ってなにさ?特に何か持ってるふうな様子無さそうだけど?」

「あ、やっぱ気になりますよね」

「ふふふふっ!ここで問題です!さて、お土産の正体とは、なんでしょーかっ!?」


 拳をにぎり、マイクを向けるようにしてずいと茂の前に差し出された由美の手を、そっと手で包み込み、下へと追いやる。


「博人、お土産って何?」

「ずっる!?ずるい、ずるくないですか!答えいきなり聞きます、フツー!?」

「ははは、容赦ないですね。茂さん」


 遺憾を表明する由美を追いやり、博人に話を振る。

 なんと言うかこの朝早くからこの由美のたがの外れた高いテンション。

 正直、ウザイ。


「“深雪さんに会える道筋を作れるか、もしかすると直で本人に会えるかもしれない”チケットって感じですかね。これなんですけど」

「何だそれ?」


 差し出されたそれを受け取ると、目の前に持ってくる。


「乗船チケット?レジェンド・オブ・クレオパトラ?あの豪華客船の?」

「そういうことです。どうもこの船内のファッションショーっていうのか、いろんな歌手のコンサートていうのか、お金持ちの皆さんの世界一周の無聊を慰めるイベントってのが混じりあった不思議なものになってますけど」

「船主が白石関連の海運会社なんですよ。この大騒ぎイベントの共催にも名前が有りまして。深雪さんのおとーさん、昨日までどうも海外で仕事してたみたいですけど、今夜はこのイベントに出るそうです」


 はあ、といってチケットをぴらぴらと振る。

 裏面をみて、紙質を確かめる。


「あの、茂さん。それ本物です。偽物じゃない、本物のチケットですから」

「……証明用のバーコードまで印字されてるし、そうなんだろうけど。どっからコレ、手に入れたんだよ?そんな伝手、あるなんて言ってなかったじゃん」

「いやあ、やっぱり最後は金とコネなんですよー。私、この年で世界の現実って言うのをまざまざと見せ付けられましたわー」


 乾いた笑みで由美が手をお手上げポーズに形作る。

 零れた台詞は諦観混じりだ。


「隼翔の親父さん、今あの試験場の中にいるんですよ。結局隼翔は来れなくなったんですが、代わりに親父さんが来たんで」

「ああ?但馬アミューズメントの社長だっけ?隼翔の親父さんって?」


 こくんと高校生2名が頷く。

 但馬アミューズメントは地方都市の茂の住処辺りではよく知られたデベロッパーである。

 茂の住む県内のみならず、周辺地域にもどんどん進出しているという、茂の住む辺りでは有名な県内企業である。

 視線の先には試験場のゲートがある。


「深雪さんって隼翔の親父さんにも好かれてて、家族ぐるみでの付き合いがあったんだそうで。それが急に東京に拉致られて、ってなりゃどうなってるのか知りたいのが普通の感覚ですって。しかもどうやら自分の息子の家出にも関わるってなると、ねぇ?」

「隼翔君、おとーさんにも異世界に吹っ飛ばされた辺りの詳しい話してないらしいんだよねー。いや、強情強情。そんで、業を煮やして直に話をしに乗り込んできたってすんぽー。その中で私らに協力してもらえるように説得したらしくって。お会いしたのは試験場に入って行く、つい1時間前ですけど」

「すごいな、隼翔。さすがに国のお偉いさんと交渉したりするだけはあるか。そんで、このチケットどう関係あるわけ?」

「これ、イベント関係者が企業向けに配ったチケットだそうで。大イベントで参考に出席するためってことで但馬アミューズメントに割り当てられてたものらしいです。本当はもらったけど行くつもりはなかったらしいんですが。こんなことになると思いもしなかったんでしょうよ。主催の白石雄吾氏の出席は不可避。逆に深雪さんがこの試験場にいるかどうかよくわかんないんでしょう?」



 メールで昨日の結果はすでに報告済みだ。

 ぴらと片手で持ったチケットが急に輝いて見える気がした。


「最悪、白石雄吾って最大の壁はありますが、深雪さんの一歩手前まで案内してくれるチケットです。この騒動でゴタゴタしてる中なら、件の家出娘も一緒の会場に呼ぶんじゃなかろうかと」

「茂さんの「気配察知:小」頼みでここで張ってるってのも一つの策ですけど。どうします?」


 そんな話をしていると、試験場の中から白い軽自動車が出てきた。

 ゲートで首から外したゲートパスらしきものを返却し、そのまま外へとでてきた。


「あ、但馬のおじさんの車。出てきましたね」

「え?但馬アミューズメントの社長さんだよね?」

「そうですけど?」


 トコトコと音をさせながらゲートから走ってきたその軽自動車が茂たちの横へと停車する。

 後部座席のドアには「但馬アミューズメント」のロゴが染め抜かれている。


「なあ、杉山茂君、でいいんだよな!?隼翔が世話になってるって話の!?向こうのコーヒーショップで話をしよう!」


 運転席から首だけを出して、50そこそこの男が大きな声で叫ぶ。

 勢いに押されて、茂が頷くと、男は首を引っ込め、右手を出してサムズアップをすると車を発進させた。


「……豪快なお父さんだな」

「……豪快ですね」

「……ごーかいっていうか、ごーいんって言うんじゃないかな?」


 3名は軽自動車が向かった公園に併設しているコーヒーショップに向かってバイクとチャリを押しながら歩きだすのだった。




「いや、駄目だ駄目だ!話にならないな!まったく」


 コーヒーショップにたどり着くと、先着した人物が注文を終え、先に着席していた。

 そこに合流するとほぼ同時に注文した皿が届く。

 ブラックコーヒーとアメリカンクラブハウスサンド。

 クラブハウスサンドに被りつきながら、但馬隼翔の父、但馬アミューズメント社長、但馬真一がおおきな声で話し出す。


「深雪ちゃんに会うのに東京まで来たって言うのに、ほとんど門前払いだよ。お会いできません、雄吾様の許可がないので、を繰り返すだけでね?まあ、アポとれない時点でそうなるだろうな、とは思ったけどね」


 真一はコーヒーを啜り、またサンドウィッチに被りつく。

 スモーキーなベーコンとレタスがすこし固焼きなパンとともにしゃきしゃきと音を立てて咀嚼されていく。


「但馬さんは、それなのにここまで来たんですか?仕事も有るんじゃないですか?」


 おずおずと話しかける茂。

 それに向かって微笑み返す真一。


「心配無用!一応今回のは出張扱いだからね。個人経営の社長なんでこういう融通は利くんだよ。レジェンド・オブ・クレオパトラのイベントの視察。まあ、体裁は整えるのに良い言い訳だからなぁ」

「但馬アミューズメントってそういう規模の会社じゃないと思うんですけど」


 地方の雄と言えるほどの規模の会社だ。

 それはそれはいろいろな決裁事項もあるはずで、こんな急な出張など本来有り得てはいけないことのはず。


「部下が優秀でね。まあ、明日の夕方には会社に戻る必要があるけど。こっちにも支社はあるから、最悪そっちで仕事をすることも出来る。車はそこで営業車を借りたんでね」

「運転手とかいないんですか?俺、社長ってそういうもんだと思ってましたけど」


 博人が率直な疑問をぶつける。


「地元で会合とかに行くときとか、役所関係に行くときはね。さすがに格好つかないこともあるし。でも、基本的には自分で運転して出歩くかな。そのほうが早くて楽なんだよ」

「そんなものですか」


 ぱくついていたサンドウィッチがなくなるときを見計らい、茂が話しかける。


「あの、隼翔、じゃない。息子さんの失踪の件ですが……」

「話してくれるのか?」


 ほんの少しトーンを落としまわりに聞こえないようにした。

 それに合わせて真一も声を落とす。


「どういうふうに聞いていますか?」

「……アイツもだんまりでね。正直、親としては監督不行き届きを言われて仕方ないかとも思うんだがね。里奈ちゃんも家にきてさ、2人で僕に君に協力してくれというんだよ。隼翔だけならしかりつけるだけなんだが、里奈ちゃんもとなると話は別だ。詳細は君が“話して良いと思うなら”聞いてくれといわれたんでね?」

(丸投げ?俺に、丸投げ?それは酷くないかい?「勇者」に「聖騎士」よ)


 どうするかと顔を横に向けると、「軍師」「魔王」ともに困った顔をする。

 よく考えると、ここでぶちまけると一番影響が出るのは杉山茂だけである。

 そこもあり、自己責任でお願いすることにしたのだろう。


「……仕方ないですし、お話しします。ただ、ここじゃ何なんで別の場所でお願いできますか?」



早めに書きあがったので、とりあえずアップします。

仕事が少し忙しくなるので、その分ペースダウンするかもです。

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