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一般人遠方より帰る。また働かねば!  作者: 勇寛
5章

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213/365

1-了~2-始 とあるパートの 吉田さんの おうちの いつもの 朝の 一幕

 こんこんこん!


「朝だよー。おきなさーい」


 軽く控えめにノックしたドアの向こうへと声を掛ける。


「ふぁぁぁい……」


 部屋の向こうから起きているのか起きていないのか、いまいちわからないような返事が返ってくる。

 少々不安になりドアをそっと開くと、上半身を布団から出してぼさぼさになった髪の毛に半開きになった目をしぱしぱさせている我が子の姿。

 もぞもぞと布団から抜け出し、とてとてと呼びに来た母親の元へと歩いていく。


「おはようございます」

「ん、おはよーございます……くぁぁ」


 半分脱げたパジャマのズボンを引きずりながらぺこりと頭を下げる息子。最後まで耐えられずにあくびが出るところが微笑ましい。

 保育所で先生から教わった丁寧な挨拶が息子の局所的マイブームとなっている。


「ほら、洗面所にパパがいるから。顔洗ってきなさい」

「うん、わかったー」


 屈み込んでずり下がったズボンを引き上げてやると、息子は寝ぼけたままで上半身をふらふらとさせて洗面所へと向かっていく。

 じぃぃぃぃ、と電気シェーバーの音が聞こえるそこへと息子を向かわせると、自分の仕事に取り掛かる。

 朝食の準備に、そして夫と息子の送り出し。昼のパートまでに軽く掃除と洗濯、そして冷蔵庫の在庫チェック。

 そのほかにも色々と細々とした雑事がある。吉田家の朝は忙しい。

 とはいえ朝から忙しいのはどの家庭でも同じようなものだ。

 テレビを入れると、朝のニュースが流れている。ちょうど地方版から全国版に変わるタイミングで注目ニュースが流れた。


『…先週…市郊外の住宅街の……で発見された……』


 それなりに年のいったキャスターが事件の概要を読み上げている。

 ニュースをBGMに、キッチンへと向かう。

 こぽこぽと音を発てるコーヒーサーバーの横を通り過ぎ、火にかけていた鍋を見るとちょうど沸騰したところだった。

 火を弱め、先ほどまで刻んでいたシメジやエノキのキノコ類を半分ほどそこへと落とし込む。

 味噌汁用と、軽くバターでベーコンと炒める予定のものだ。

 てきぱきと朝食の準備を整えていく。


「ほら、けーちゃん。お着換えしてきなさい」

「はーい」


 洗面台から戻ってきた夫が息子のけーちゃんを部屋に誘導する。昨晩のうちに夫の会社の事業内保育所に行くための普段着を準備してあるので、それに着替えてもらうためだ。


『……現場の状況から殺人事件の可能性もあると……』

「うへえ、怖いなー」


 ワイシャツの袖を留めながら、さして怖そうなそぶりもなくそういいだす夫。

 まあ、同じ県内でも生活圏が全く離れていたりすれば感想などそんなものだ。


「会社の近くじゃないの?」

「いや、通勤の時に車で通るけどさ。別にそこで降りるんでもないし」

「へぇ、そっか」


 雑談をしながら夫は食卓へと妻が作ったサラダや、取り分け皿、箸にスプーンなどを並べていく。

 その間に出来上がったキノコとベーコンのソテーや、味噌汁も。


『……死亡していたのはこの……有者の親族……で、長船吾……ん、四十歳と判め……』


 茶碗に軽く米を盛り、それをテーブルに持っていく。


『あまり近所付き合……く、仕事上のトラブ………降は、自宅にこもり……』


 テレビで被害者の詳細がボードで説明されているところで、けーちゃんが着替えを終えて部屋から出てきた。


「朝ごはんにしよっか?」

「うん!」


 ぱっちりと目覚めた様子のけーちゃんが椅子によじ登り、自分の席に座る。

 ネクタイを締めた夫も席に座るのを見て、茶碗にご飯をよそう。


「「いただきます」」

「いただきます!」


 夫婦のいただきますに合わせて、けーちゃんが大きな声でいただきますと、柏手を打つようなぱぁん、という合掌をして、朝食が始まる。

 小さな自分のキャラクターものの子供用の箸をぶきっちょに握って、朝ごはんに取り掛かる。


『……さん、これはどういうことが考えられます……』

『…室内が物色さ……いう場の状況から、……ただ、近隣…のトラブルの多…もあり、…察が人間関係のトラ………恨の線も調べて……』


 事件の現場となったの住居の図が示されて、元警察のコメンテーターが解説を始める。

 そんなこんなしていると、夫がまず食べ終わり、けーちゃんが妻に世話をされながら食べ終わる。


「じゃあ、歯磨きして保育所に行く準備をしてください」

「はーい!」


 ぴょん、と椅子から降りて元気よく返事をするけーちゃん。

 とと、と洗面台へと駆け出していく。


「今日は昨日と違って素直だねぇ」

「ずっと今日みたいなけーちゃんだったら楽なんだけどね」


 夫婦そろってあはは、と笑う。

 今日はいい子のけーちゃんだが昨日は行きたくない、と駄々をこねる大怪獣をやらかしてくれたのだ。

 まあ、虫の居所が日々変わるのが子供というものだが。


「それで、今日のパート。時間外頼まれて、遅くなりそうなんだ?」

「あ、そうなの。バイトの杉山君がちょっと用事ができたから、って話で」

「ああ、インフルの時に代理で入ってもらった人だっけ」

「そうそう」


 妻のパート時間が長くなる確認をして、その理由を確認しておく。


「まあ、前に迷惑かけたし。その借りを返すってのもあって。ごめんね? 買い物お願いしてもいい?」

「うん、大丈夫だよ。会社終わりにけーちゃんとスーパーに寄るから。……今日はそんなに急ぎの案件もないから。早めに仕事片づけるよ」

「じゃあ、お願い。昼までに足りないものリストにしてスマホに送っておくから」

「わかった」


 自分とけーちゃんの食器をシンクに運んで、食後のコーヒーをずず、と啜る夫。

 妻はけーちゃんの世話を終えてようやく自分の食事に取り掛かる。

 テレビの右上の時刻を見ると、いつもならあと五分ほどで家を夫とけーちゃんが出ていく時間である。


「あら、ちょっとゆっくりしちゃったわね。ほらほら急いで」

「あ、本当だ。じゃあ、お仕事頑張ってね」

「あなたも、ね。あとけーちゃんもお願いね」


 そんなどこにでもある、会社員とパートの夫婦に小さな子供が一人の普通の家庭の朝の一幕。

 テレビはようやく地方都市で発生した事件性の高そうなニュースのまとめに入っている。


『……捜査の進展が待たれます。……では、次はエンタメ一直線のコーナーです!』

『はい、おはようございます! 先日電撃発表のあった元パピプグループの神木美緒さんたちのコンサートへの参加……』


 日常はそうやって過ぎていくのだ。

ちょっと変わった感じで書いてみました。

ええ、思いついたので勢いとノリで書きました。

わはは。

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― 新着の感想 ―
[一言] ハゲデブメガネ…うそだろ…?
[一言] オークションで落札した人は・・ 既に偽物に変わっていた可能性があるのか・・
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