6-■■■-■■■ ■が手■優し■■を■■
本日二本目です。
暗闇の中、ぎしぎしと体を沈めた椅子が軋む音がした。
『―――――! ……からって、…ん……が許……!!』
PCのモニタだけが暗闇の中で光っている。
そこには会議用の通信アプリが起動していた。
複数の参加者が参加しているようだ。
『……―――――! ――――が、―――だ……ょう!!』
音量はギリギリまで絞られていて、PCの前に座る者以外には小さくしか聞こえない。ただ、参加者はひどく興奮しているのか時折音は途切れ、そして一部だけが鋭く響く。
それに合わせてPC前の人物も声を潜めている。
「でも、――は判っているじ―――か。誰-やり――はない。やり―――なんて――いないってこと―。こ――正しくはないのは当―――。……でも、さ」
『――――――! ――――――!!』
『………。……話を、……士」が、必……』
「そうだよ。……――、やるべきだ。…――時間―――いんだ」
そう言うとどこからともなくカギを取り出し、PCの置かれた机の足元にある引き出しを開ける。
がらら、と引き出したその中には音楽雑誌や漫画、古い教科書に使い込んだノート類。
その引き出しを最大まで引きだすと、腕をその引き出しが出てきた奥へとさらに突っ込む。
べりべりべり、と何かが引き剥がされる音と、机のフレームに何かがぶつかったガチン、という金属音が響く。
ごとん……。
鈍い音とともに、PCのカメラの前にガムテープが引っ付いたスーパー袋が置かれた。中には新聞紙に包まれたモノがある。
ゆっくりと新聞紙を剥ぎ取り、その中に二重で油紙に包まれたそれをモニタ前に露わにする。
『―――――――!!?』
『!? ―――!?』
画面の向こうからの音声が乱れる。
そこから聞こえるのは困惑だった。
置かれたそれは日本国内では所持することすら禁止されている物。
大型の自動拳銃である。
しかも国内で違法に流通するような粗悪なコピー品ではなく、軍用のそれ。
そんなものを、なぜ、いや、一体どうやって彼が入手できたのだろうか。
『―――?』
「……正解、あの時に一丁だ――。……心配し――で。こ――丁だけ――よ」
『………――――』
拳銃の上に手が置かれる。
それを再び油紙と新聞紙、そしてスーパー袋に戻して机の裏へと隠す。
最後に机のカギを締める。
「……時間が、ない。間に合―――ら、引き伸―――ら! ……でも、もう限―――い……」
『――――』
『――――?』
「……ダメだ。彼らに―――――ない。これは、――――達、……人だ―――――だよ。だから」
机の前で肘を突き、両手で顔を覆う。
「だから、「光速の騎士」の為じゃなく、あの人のために。そのために、―――は、――――は」
ゆっくりと顔を上げる。
指の間から見えるブルーライトに光る瞳にはうっすらと涙がうかぶ。
だが、その瞳には小さく力が籠っていた。
それは決意、そう呼ばれる類のもの。
「……彼を、「光速の騎士」を殺すしかない……。それしか、ない……。でも。まだ、もう少しだけ。もう……少しの間……」
だがこぼれた声に、その決意はまだ遠く。
声色は揺れていた。
こんこんこん
「はーい」
とたとた、と部屋の中から足音がする。
「あ、お兄ちゃん」
「ん? どうしたんだ?」
ドアを開けて、廊下に出てきた兄はどこか疲れたような顔をしている。
顔をくしくしと、特に目の当たりを眠たげに擦っている。
ふと覗き込んだ部屋の中は真っ暗で、PCだけがONになっていた。
「どうしたの、こんな暗い中で? 目、悪くなるよ?」
「あ、ああ。ちょっと映画でも見ようかな、って。雰囲気が出るんじゃないかなって思ったんだよ」
「ふーん……」
なんとなく釈然としないが、まあこの兄が言うのならそうなのだろう。
少しばかりブラコン気味の妹が、無理矢理に自身を納得させる。
妹とてすでにミドルティーン。
年頃の男の子が暗い中でこそこそ夜に、となれば聞きかじった友人たちとの会話からナニをしていたのでは、と思うことも仕方ないだろう。
ただ、まあ服装が乱れているわけでもないし、“恐らく”そういう事をしていたわけではなさそうだが。
「ココア」
「ん?」
「ちょっと眠れなくて、ココア淹れたんだけど一緒にどうかなーって」
「ああ、そういう事」
にこり、と笑うとその周りにぱっ、と光でも飛んでいるのではないかという笑みを浮かべる。
「ありがとう。……そうだな、僕ももらおうかな」
「うん!」
とたとたと駆け下りる妹。
兄はその後を追いかける。
そんな騒々しい足音で、起きてしまったのだろう。閉じられていたドアが開く。
階下へと向かう兄に、家主である父が声を掛ける。
「おいおい、お前たちは休みでも俺は明日も仕事なんだよ……。もう少し静かにしてくれよ」
「ああ、ゴメン。もう夜だもんね」
ふう、と謝ってきた息子に、父が声を掛ける。
「あまり夜更かしせずに、早く寝ておきなさい、“隼翔”」
「わかった、父さんもお休み。起こしてごめんね」
謝りながら下りていく息子但馬隼翔を見送り、父は、但馬真一は寝室に戻って行った。
今度こそ本章終了です。
長かったー。
もう少しコンパクトにしないとね。
無駄に長くなるところ、横道に逸れる所、そのあたりがやっぱり今後の課題ですね。




