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一般人遠方より帰る。また働かねば!  作者: 勇寛
4章

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6-1 朝 は 洋食で

同日の連投のため、すごく短いです。

蛇足っちゃ蛇足なんですが、まあ箸休めにどうぞ。

「……悪趣味だとは思わんか。日本人というのは敗者を嬲るなど、唾棄すべき行為だという精神性を持っていると聞いていたがね?」

「そういう意図はない、と認識していただきたい。これはむしろ友好的融和を目指した関係性の再構築を目的としたもの。第一、被害者側の我々が休息できる場と医療資源の提供を行っていることを忘れては困る。あの場で打ち捨てられて困るのはそちらだったはず。善意の行動を悪趣味と表現されるのは……」

「ふん、被害者か……。どの口がそのようなことを」

「少なくとも“彼”に関して専門的な救命措置ができる医療設備が準備できたとは思えないが? それとも、どうにかできたならばそれを提示するべきでは」

「まずその状況下に陥ったきっかけがどちらかということを考えるべきではないか?」

「なるほど、ではまず昨日の朝の件、そしておとといの神社での一件についての釈明を戴けるという事ですな」

「……君とは仲良くなれそうにない、という事だけは十分に理解したよ」

「それは残念。どうにか歩み寄れないものですかね」


 テーブルの座席配置上で正面に座った門倉とホワイトラン博士が、料理に手も付けずに舌戦を繰り広げる。

 剣呑以外の何物でもない雰囲気ではあるが、敢えてその間に入ろうという勇者は現れない。


(……つーか、朝からそんなに頭に血ぃ昇るようなことしなくてもいいじゃん。穏やかにやろうよ)


 ずず、とクルトン入りのコーンスープを啜りながら茂は静かな言い争いを他人事のように眺めている。


(あ、美味しい。インスタントじゃなくて、パック入りのちょい高い奴かなぁ)


 インスタントの粉末を溶かした時、特有のダマのない舌触り。クルトンも後入れのようで前歯で噛むと、まだしっかりと硬さを残している。最後に少しスープマグをかたげてみても底に溶け残りがないことからそう判断した。

 普段は手を出さないワンランク上のそれを堪能する。

 口の中をコーンスープで潤すと、フォークを手に、スクランブルエッグに取り掛かる。

 皿の端にはちょん、とトマトケチャップ。

 だが、やはり最初はプレーンにそのままで一口。

 普通のスクランブルエッグと思ったが、口に入れたときにふわりと香るチーズ。

 バターと塩コショウだけで仕上げるより、幾分油気が増すので、好みの差はあるとは思う。

 だが、茂はそこはどちらでも問題ないというスタンス。

 隣にあるカリカリベーコンも口にするとほんのりまだ暖かい。

 もしゃもしゃと卵と肉を味わい、そのあとでサラダボウルからみんなに取り分けたサラダ。レタスに千切りの大根、海藻類をベースにした海鮮サラダ。ほぐしたカニカマがいいアクセントになる。

 酸味の強い和風の梅風味のドレッシングで、さっぱりとした印象に。

 しゃくしゃくとした大根の水分が朝方の水分を欲する体に心地よい。すこし油気の強いメインの皿の箸休めとしてはベストな選択だろう。


「ですが、まずは体制の立て直し。次に拡充を、という計画です。そちらの意見を組み込んだサポートは……」

「それを実現できる施設を準備……」


 やんややんやと怒鳴りあうことはないが、徐々に語気は強くなるという門倉たちは、まだ料理に手を付けてはいないようだ。

 彼ら二人以外はもう半分くらいは食べ進めているのだが。


「……茂さん、俺ミーティングだって聞いてきたはずなんですか? なんか色々大変なことになってますけど」


 隣の席の博人がコップの水を飲みながら視線を門倉たちに向ける。


「大変なことになってるかどーかは知らん。取りあえず、食べるだけ食べちまえ。聞いてたのは食後にコーヒー啜りながらって予定だしな。というか、俺よりも、隣に聞け、隣に。アイツの方が今回は詳しいはずだ」

「はぁ」


 気のない返事をして博人は横に視線を向ける。

 そこには、バターロールをちまちまとちぎりながら口に運ぶ由美の姿。

 話を振られて顔だけはそちらへと向けて来る。


「どうしていくかの素案は出来たけどね。……私たちだけで完結しない問題が多すぎてさぁ。どう世間が反応するかの結果待ちで動くのもあるし。……まぁ、基本スタンスは、待ち?」

「だとさ」


 茂もパンに取り掛かる。

 バターロールを手に取り、半分位にちぎる。ほんのりと温いそれに、バターナイフで小分けのバターをぬりぬり。

 それを大口を開けてぱく、と加えて噛み千切る。

 もしゃもしゃと咀嚼してふわりと柔らかな食感に、薄く融けたバターの香り、噛みしめることで増す小麦の独特な甘みを堪能する。

 トーストされた食パンの外かりかり中ふわり、というのは違う、バターロールの柔らかな外ふわふわ中ふっくら、という食感。

 どちらも甲乙つけがたい美味しさがあるが、茂の個人的な偏見を言わせてもらうと、トーストは仕事や学校に行く忙しい朝に見かけるパンで、バターロールは静かな落ち着いた休日の朝にいただくような印象を受けている。

 いや、あくまで偏見であるので、個々の意見に一切の反論をする気はない。

 休日にトーストを喰らおうが、忙しい朝にバターロールを喰らおうがそれは個人の自由である。

 だが茂は今日、バターロールでの朝食がぴったりな心持ち。

 それはどういう事かといえば。


(もう、ぎすぎすしないでくんないかなぁ。こっちはゆっくりと休みたいんだから)


 一昨日から何から何までやるだけやらされて、もう気合も根性もありはしない。

 そう、この杉山茂。だらけきった格好からもわかる通り、完全な仕事オフラインモードに突入していたのである。


(ああ、レーズン入りの方もおいしい。やっぱ、レーズンは暖めると格別に美味いよね)


 温めたレーズンパンにバターを塗りたくり、その美味しさに小さな幸せを感じる茂であった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずご飯の表現が素晴らしくて、空きっ腹にはたまらんです……ぐぬぬ。 あぁ〜美味しいパンが食べたいぃ( ;꒳; )
[気になる点] 拙者レーズンパンはどうしても苦手マン!(超私信)
[気になる点] >……(略)茂の個人的な偏見を言わせてもらうと、トースターは仕事や学校に行く忙しい朝に見かけるパンで、(中略) >休日にトースターを喰らおうが、忙しい朝にバターロールを喰らおうがそれ…
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