3 現在地不明状況遅れ・・!
がんばれ、おれ~。
「きゃあー、たすけてー」
若い女の悲鳴が聞こえる。
「ホントに若いかは、置いといて~どこだあ」
池田は生い茂るブッシュを掻き分け進むと、そこには大きな木の下でヒョウ?らしき動物二匹襲われそうになっている少女だった。女の子は鉈を振り回し身を守っている。
「おらあああ、イチゴが火を噴くぜ!」
池田は小銃を構え、セーフティレバーを単発にし引き金を引いた。
ダン、ダン
ギャーン、ギャン
二匹に命中したがヒョウは倒れることなく、池田目がけて突進してきた。
「おう、さすが野生の王国、でも大丈夫!」
さっとレバーを三点射に切り替え銃を腰に構え引き金を引いた。
ダダダーン キュヒ~ン
ダダダーン グギャ~ン
と、二匹のヒョウが宙に舞う。池田は何気に射撃が得意だった。
「ふ~マンダム」
おっさんにしか解からない事を呟きなら、イチゴの銃口をヒョウに向けたまま近寄る。ピクピクと足が痙攣しているが、死ぬ一歩手前のようだ。
「なんだ、この動物は始めてみるぞ、こんな角の生えたヒョウ見た事ない」
なんか可笑しいどうぶつだった。身体の表面にはヒョウのような柄があり普通だが、口の牙が二本飛び出し、サーベルタイガーみたいだし脚の爪も鋭く、一撃で人間の腹を割いてしまいそうだ。
(本当にヒョウなのだろうか?それともこれがアフリカクオリティなんだろうか?わからん)
う~んと頭を捻っていると声を掛けられた。
「あの、助けていただきありがとうございます」
ぴょこんと頭を下げて少女が礼をした。
「な~に、いいって事よ。渡る世間に鬼はなし、袖触れ合うもアフリカの縁!なんちて!」
「はぁ、あの私ティファって言います。本当にありがとうございます。もうダメかと思っていたのに助けてくれて本当に感謝しています。」
改めてよく少女を見ると本当に綺麗だった。金色の髪をは肩まで伸ばし、顔は小顔で目がパッチリとし青い瞳が印象的だ。そこら辺のアイドルが裸足で逃げ出しそうな美少女っぷりだ。体付きからみて15、6歳位だろう。
(うん、正統派美少女見参、胸は普通かな。)
結構失礼な事を考えながら答える。
「O・Kィー、気にする事ないよ。これも仕事の内さ。」
ちょっと巻き舌でサムズアップしながらニッと笑った。
(おう、決まったじゃあ~ん、子猫ちゃんおじさんに惚れるなよ。)
「ところでお嬢さんここら辺で自衛隊じゃ解からんか、あ、国連のキャンプか兵士の居る場所を解からないかな?」
「こくれんの兵士ですか?こくれんて聞いたことが無いですけど、何処かの国の名前ですか?」
「おうふっ、OKそうだよな。発展途上国じゃ国連と言っても無理か・・そうだお嬢さん君の村か何処かに案内してくれないかな、おじさんちょっと迷ってしまってわんわんわわん、なんちて」
冗談は1㎜も通じて無いようだ。おじさん少し傷つきそう。
「えっとぉティファの村までだいたい10分位で付きます。そこで村長に聞けばこくれんの事も解かると思います。付いてきてください。」
ティファの後を付いていくと、ちょっとした土の道路にでた。それはずっと一本道で、その先には集落みたいな建物が見えた。
(なんだ、こんな近くに集落があったのか。まあ誰か携帯持ってるか電話くらいあるだろう。あれそういえばこの子、服装がアフリカっぽくないなあ、ワンピースに腰巻のベルトだし、足はサンダルだよな~、んんん何か可笑しい。あはははじゃなくて、この子日本語喋っているよ。日本語~)
集落の入り口は板張りの門があり、その隙間から男が声を掛けてきた。
「ティファ誰だい、その後ろの人は?」
「アイルさん、この人は怪しい方ではありません。私がホーンウルフに襲われている所を助けていただいたんです。」
「ティファ何時も言っているだろ!森の奥には行くなって!」
「ごめんなさい、どうしても母さんに薬草を飲ませてあげたくて」
しゅんとうな垂れるティファを横目に、池田は男に尋ねる。
「取り込み中悪いが、誰か携帯か電話を貸してくれると助かるんだが・・」
「けいたい?なんだそれは聞いたことが無いんだが?」
「ジーザス、ノーゥなんてこった。携帯も解からない田舎だったのかあ~」
英語なんか喋れないくせに簡単なフレーズは気取って使う、池田正志53歳独身ちょっとオタク。自分の状況が良く解かっていない男だった。
今日は部屋から一歩も出ていない。
ついでに、電話も・・。