表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
故に、青春とは脱出ゲームである。  作者: ナヤカ
【第二章】葉加瀬瑠璃は妄言を語る
18/34

ゲーム セーブ【5】

はい。待ちきれず更新

 暗い部屋。そこで静かにそのゲームを起動する。無論、友人の『脱出ゲーム』である。


 葉加瀬から不思議な話を聞いたあと、この世に存在するはずのない幽霊について考えていたのだが、不意に、その存在を忘れようとしていたこのゲームのことを思い出したのだ。


 前回は、選択肢を間違えてしまいゲームオーバーとなった。その事自体は、別に気にするようなことではないのだが、そのゲームオーバーの過程があまりにも気に入らず、忘却の彼方へ追いやろうとしていた。


 もちろん幽霊とゲームは違う。だが、このゲームは現在僕しかプレイしていない。ということは、エンディングも僕しか見ることが出来ないということになる。そう考えると、なんとなくプレイせずにはいられなかった。


 データをロードする。すると、前回挫折した選択肢の画面が写し出された。


 そこで、『ネット探偵に依頼する』という選択肢をクリック。


――ネット探偵に依頼をした。依頼達成を達成するまでの期間は三日。その間、相手が自殺をしてしまわないように時間を稼げ!


 瞬間、ゲーム画面がバトル画面へと変わる。


「……は?」


 軽快な音楽と共に、ドット絵で映し出される自殺サイトの相手。


 その下には、四つの選択肢が現れた。


『たたかう』

『行動』

『アイテム』

『みのがす』


「……なんだよ、これ」


 それは、脱出ゲームの枠をぶち抜いたあり得ない展開だった。まるで、バトル要素が需要あるからといって『無理やり』闘技大会編をねじ込んでくる駄作小説かのような……。


 いや、敢えてそこは問題視しないでおこう。需要があるなら供給するのは至極当然の流れ。だが、このゲーム画面は、もう一つの重大な問題を抱えている。


「これ……某ゲームのパクりじゃ……」


 それは、いつか友人が興奮ぎみに話していたPCゲーム。ストーリーは、モンスターの世界に落ちてしまった主人公の冒険RPG。

 

 その友人があまりにも興奮しながら話すため、暇潰しにと始めたゲームだったが、悔しいことに友人の言葉通り、それは正しく神ゲーと呼ぶに相応しいクオリティだった。


 その神ゲーと酷似した画面が、今、目の前に映し出されている。言い逃れなど出来まい。これは、パクりだ!


 そして、そのゲームと全く同じ選択肢。そのゲームをプレイした感覚から、『たたかう』ではなく『行動』をクリック。


『未来の希望を話す』

『自殺の原因を追求する』

『自殺の計画を話し合う』

『世間話を話をする』


 取り敢えず、最初の選択肢『未来の希望を話す』をクリック。


 すると、ドット絵の相手から吹き出しが現れた。


――そんな未来、私にはないっ!


 次の瞬間、画面に弾幕攻撃が現れ、こともあろうか相手は自らを攻撃し始めた。

 相手の体力がみるみる減っていく。


 違ったか。次のターン、『自殺の原因を追求する』を選択。


――どうしてそんなこと知りたがるの? 死んだらそんなの関係ないでしょ?


 不規則に迫り来る弾幕攻撃を掻い潜り、もう一度同じ選択肢をクリック。


――どうして? もしかしてあなた、私を救おうとか高慢なこと考えてるの?


 そして――相手は『逃げだした』。


――あなたは、相手を救えなかった。ゲームオーバー。



「……ワケわからん」


 だが、諦めずにもう一度コンテニューをする。元ネタのゲームでも、選択肢が案外難しく、これだと思う選択肢でもクリアに至らなかった経験があった。そこら辺はよく出来ていると思う。……パクりだけど。


 取り敢えず、『自殺の計画を話す』は論外だと結論付けて『世間話を話す』をクリック。


 だが。


――引きこもりだから、世間を知らなかった。ゲームオーバー。


「……世知辛過ぎるだろぉぉ」


 もはや、なんでゲームオーバーになったのか意味不明なレベル。仕方なく、というか疑心に満ちながら残った最後の『自殺の計画を話す』を選択。


 すると。


――山奥での自殺を提案した。


――ごめんなさい。私、山には登れないの。


 全くこちらを傷つける様子のない弾幕攻撃が襲う。それを掻い潜り、もう一度同じ選択肢をクリック。


――海での飛び降り自殺を提案した。


――ごめんなさい。私、遠出が出来ないの。


 尚も、次のターンで同じ選択肢をクリック。


――薬での心中を提案した。


――それなら……近くに薬ならたくさんあるから。でも、揃えるには少し時間がかかりそう。


 すると、弾幕攻撃は止んで、新たな吹き出しが表示される。


――準備が出来たら連絡するから、LINEのIDを教えて。


 そして、『行動』の中に、『連絡先を教える』という選択肢が現れる。


 これが正解かよ……。


 ようやく、正規っぽい選択肢をクリックした。


――LINEのIDを教えた。相手に怪しまれず、時間を稼いだ!


 そしてようやく、既視感のあるバトル画面が消える。


「いや、良くできてるんだが……」


 何だろう。この納得のいかない感じは。物凄くモヤモヤする。その原因はきっと、ゲームのギミックがパクりだったから。


 それならそれで別に構わないのだ。同人ゲームなどネット上には幾つもあり、それを楽しむのも一つのゲーム性だとは思う。


 しかし、だからと言って、いきなりそういった要素をねじ込んでくるのはどうなのだろうか……もしや、この考え自体が間違っているのだろうか……。


 わからん。


 分からないから、もうそのまま保留することにした。ゲームをセーブして画面を閉じる。


 気が向いたらまた、やるか。


 そんな気持ちを捨て台詞にして、僕はパソコンをシャットダウンさせた。


作者の成長の為、忌憚のない意見をもらえると有難いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ