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故に、青春とは脱出ゲームである。  作者: ナヤカ
【第二章】葉加瀬瑠璃は妄言を語る
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入宮の強気な弱み

 この一年間、僕は努めて平凡であることを望んできた。平凡な日々、平凡な成績、平凡な友達。それら全ては、僕自身が自由を手にするためのもの。自由とは即ち、何にも囚われないこと。囚われないためには、目立たず・はしゃがず・歯向かわず。この三原則だけを掲げて守ってきた。


 だが、それらに執着するあまり、僕は限りある日々を無駄にしていたのかもしれない。もしかしたら、自由になることを諦めていたのかもしれない。


 なぜなら、自由なんて最初からどこにもないから。無意識のうちに、それを肯定してしまっていたから。


 どうしようもないアホだと思う。だが、それと同等にどうしようもない想いがあったことも否定はできない。


 僕は、どうすることもできないでいた。


 だからこそ、屋上で無為な時間を過ごした。屋上はいつも穏やかな時が流れていた。だから、そこに自分を置くことで、迫りくるタイムリミットから少しでも逃れようとしたのだ。


 そんなことをしても、時間が遅くなるわけではないのに。だが、そうする以外の方法を、僕は見つけられないでいたのだ……。


「毎日毎日、昼休みを屋上で過ごして悲しくならないの?」


 そんなことを考えながら、やはり屋上でぼぉっとしていると、入宮が現れ近づいてくる。


「そういうお前だって似たようなもんだろ。友達はいないのか」


 そう返すと、彼女はフッと笑う。


「友達? あぁ、有限ある時間を無意味なお喋りに費やすためのアイテムのこと?」

「アイテムって……」

「だってそうでしょう? 彼らが話をしている内容なんて、あれがしたいとかこれが欲しいとか、そんなことばかり。だったら、話なんかしていないで行動すればいいのにって私は思ってしまう」

「なんだよ。お前だって、その有限な時間を、ここで無為に過ごしているじゃないか」

「無為じゃないわ。私はここで部員探しをしているのよ」

「なんで屋上なんだよ……」

「言ったじゃない。屋上に来る人たちって、人間的に弱い人ばかりだもの」

「堂々と人の弱みにつけ込もうとする発言をするなよ」

「あら、弱みってつけ込む為にあるんじゃないの?」

「それをなんの躊躇もなく言えるお前には脱帽だよ」

「もしかして褒めてくれてる?」

「疑問の通りだ。けなしてるんだよ」

「あっそ」


 入宮は気にした様子もなく僕の言葉を一蹴する。


「取りあえず、あなたはもう天文部なんだから放課後は屋上にきて。そこで今の天文部が抱える問題と、あなたを入部させた理由を話すから」

「今話しても問題ないだろ」

「問題よ。だって、それは私の弱みだもの。弱みはつけ込まれるためにあるもの。なら、それを説明するのは最後の最後にとっておくのが一番いいのよ」

「秘密兵器みたく言うなよ。知りたくなくなってくる」

「それでいいのよ。せいぜい、放課後まで震えておきなさい」

「言い方が完全に弱みじゃなくなってるな。……というか、今日の放課後は無理だ。既に予定が入ってる」

「予定?」


 そう言って、入宮は眉を吊り上げた。


「昨日、授業を無断欠席したせいで、補習をすることになっているんだ」

「補習なんてバックレなさいよ」

「お前は鬼か。お前と高尾山に行ったせいで、そんなことになってるんだぞ?」

「補習と天文部、どっちが大切なの?」

「天秤にかけるなよ。そしてかけたら、圧倒的に補習だろ」

「自由を欲した口で、よくそんなことが言えるわね」

「お前は無法と自由を履き違えてないか?」

「そんなことに囚われているからあなたはいつまでも不自由なのよ。今日の放課後は屋上にくること、わかった?」

「あっ、ちょっと待て!」


 だが、入宮は僕の返答を待つこともなく屋上から出て行った。その態度は、まるで独裁者のごとく。彼女は、僕の自由を奪おうとしているのではなのではないかと疑いたくなってくる。


「……まじかよ」


 どうやら、僕が一年間逃げ続けたこの屋上さえも、魔の手が侵食してきているらしい。

作者の成長の為、忌憚のない意見をもらえると有難いです。

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