表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚ナイフの罰ゲーム  作者: あかあかや & Shivaji
アンデッドと月にご用心
25/124

24話

【呪い】

 エルフ先生がカウンターから、赤ワインがたっぷりと注がれたガラス製のジョッキを両手に持ってやってきた。両方のジョッキを合わせると1リットル弱はありそうだ。

「サムカ先生の世界の物品は、『呪い』を帯びた状態なのですか? 確かに、闇魔法や死霊術を帯びていると、魔法適性が弱い人には悪影響が出そうですね」


 サムカがエルフ先生に顔を向けて、エスプレッソの小さな白いコップを自身の指で軽く弾いた。磁器特有の涼やかな音がする。手袋をしているので、若干くぐもった音ではあるが。カップは異世界の物品であるので、サムカの魔力で浸食劣化させないようにとのサムカなりの配慮である。

「我々からすれば、クーナ先生たちエルフの持ち物も『呪い』がかけられた状態なのだがね。光の精霊魔法や生命の精霊魔法などを帯びていると、我々に悪影響が出る。我々の世界は、太陽光からして闇の性質を強く帯びているからね。どうしても物品のほとんどが、君たち生きている者にとっては有害な状態になりやすいのだよ」


「ふうん……」と、素直にうなずきながら、エルフ先生がサムカの話を聞いている。

「理屈は理解できます。なるほど、興味深い話ですね。サムカ先生」


 ノーム先生も赤ワインのジョッキグラスを両手に持ってやってきた。エルフ先生のジョッキよりは小さいサイズである。室内なので、今は大きな三角帽子と手袋を外している。

「高度な知性と常識を持つアンデッドと、こうして話す機会そのものがほとんどないからね。テシュブ先生の話は非常に貴重なものなんだよ。いつもは、自我がないゾンビやスケルトンにゴーストが相手だからね。自動で動く人形みたいなモノしか見たことがない……といえば分かりやすいかな」


 そう言いながら、早くも右手に持っている赤ワインが入ったジョッキを一口飲んでいる。

「バンパイアとは先日のように会話ができる場合もあるけど、基本的に発狂状態というか戦闘中だからね。このようなカフェでの会話なんかできないよ」


「ふむ」と、サムカもうなずく。

「そうだな。私もこれほど多くの会話を、エルフやノームとしたことは今までないな。法術神官も同様だ。戦闘中なので会ったら即、攻撃していたよ。故あって、こうして召喚ナイフの『販売促進の駒』にされているが……考え直してみると、そう悪いことばかりでもないな」


 エルフ先生とノーム先生が顔を見合わせる。エルフ先生が少し茶目っ気を含んだ声色で、一口赤ワインを飲んだ。

「かといって、あのハグ人形に礼を述べる気にはなりませんけどね」

 サムカが大真面目な表情になった。

「その点は、完全に同意するよ」



 その間、校長が事務職員に持ってこさせた携帯電話で何か話していたが、それも終わったようだ。サムカに再び顔を向けた。

「コーヒーの生産状況を調べてもらいました。3袋単位、75キロほどになりますが、それで試供品の提供ができるそうです。実取引は30袋単位の発注でお願いしたいと」

 サムカが山吹色の瞳を細めて、頬を緩めた。

「行動が早いな。よろしい、陛下にもそう伝えよう」


 次いでサムカが、エルフ先生が両手で抱えている大きなガラスジョッキに入っている赤ワインを指差した。

「ワインも生産しているのだね。これも需要があると思うぞ」

 ノーム先生がニヤニヤして口を挟んできた。

「やはり酒は種族の境界を越えるか」


 サムカが微笑みながら軽く左手を振った。

「いや。需要があるのはオークだ。我々貴族は、熟成したワインには興味がないのだよ。発酵の最中で、炭酸の泡が大量に発生している段階のワインしか口にしないのだ」


 エルフ先生とノーム先生が揃ってポカンとした顔をしている。

「発酵中のワインって……炭酸ぶどうジュースよ? 確かに甘くて美味しいけれど……」

「驚いたな。ではオークの方が、手間のかかった高級ワインを飲むというのかい?」


 そんな反応に、微妙な笑みを口元に浮かべるサムカである。

「あくまで、微生物の持つ潜在魔力を吸い取ることが目的だからね。ワインを消化する内蔵は持ち合わせていないのだよ。飲んだら、体内で〔消去〕するだけだな。カルト派の貴族連中は除くが」


 校長が首をかしげてサムカに聞いた。

「で、では、コーヒーも消化できないのですか?」

 サムカがエスプレッソをすすりながら、うなずいた。

「そうだ。コーヒーや紅茶は、香りを楽しむためだけだな。焙煎したり熱風乾燥したりしてコーヒー豆の植物細胞が死んでいるから、生気や潜在魔力は残っていない。だから、大量には飲まない。この程度の量で充分だな。『お香』のようなものだ」


 校長が「ふむふむ」とうなずいている。

「なるほど。でしたら、エスプレッソ用の豆と焙煎具合が良いようですね」

 サムカが鷹揚にうなずいた。

「そうだな。それを好む貴族は多いだろう。もちろん、浅い焙煎の香りを好む貴族もいる。品ぞろえは多くした方が良いだろう」


 そして、エルフ先生の大ジョッキを改めて見つめた。

「エルフはアルコールをどれだけ飲んでも平気だと聞いたが、真実のようだな」

 話を振られたエルフ先生が、両手の中の大ジョッキをサムカに見せつける。

「医師ではないから、なぜなのかは知らないけど。そうね。普通に香りの良いジュースとして飲んでいるかな。ワインは発酵熟成すると、香りと味が複雑になるものがあるから楽しいわよ」


 ノーム先生が小さなジョッキに入った赤ワインをチビチビ飲みながら、サムカにウインクした。

「酒の飲み比べではエルフは無敵だから、最初から外されるんだよ。ちなみに僕はドワーフのマライタ先生よりも強いがね。しかし、そうか。テシュブ先生は酒を飲んでも消化できないんじゃ、楽しめないわな。コーヒーなら付き合うよ」


「酒が何だって?」

 マライタ先生がセマンのティンギ先生と一緒にカフェにやってきた。相変わらずの大股歩きなので、手足の生えた、赤い毛むくじゃらの樽が歩いているようだ。

 ノーム先生が赤ワインをチビチビ飲みながら、軽く自身の口ヒゲを指で整えて、ドワーフのマライタ先生を迎え入れた。

「テシュブ先生が下戸だということが発覚してね。そのことで盛り上がっていたんだよ」


 サムカとエルフ先生が思わず顔を見合わせた。まあ確かにアンデッドなので、酒を飲んでも消化吸収できず、そのまま〔消去〕されてしまうという意味では下戸である。


 それを聞くなり、マライタ先生が深い深い哀れみを帯びた視線をサムカに向けた。赤毛の太いゲジゲジ眉がことさらに感情を表現している。

「おお……それは不幸だな。酒を楽しめない人生は、さぞ辛かろう」

 そして、サムカの黒い手袋に包まれた左手を両手でぐっと握り締め、黒褐色の真っ直ぐな瞳で見上げた。

「辛いことがあれば、何でもワシに言ってくれよ。ワシは魔法を使えないから、力になれないことも多いだろうが、話すだけでも気が楽になることだってあるからな!」


 サムカが、その山吹色の瞳をパチクリさせていたが……すぐにマライタ先生の心情を読み取り、深くうなずいた。

「心遣い感謝するよ、マライタ先生」


 ノーム先生が何か思い出したようだ。ワインが入ったジョッキをドンとテーブルに置いて、マライタ先生を見つめた。

「そうだ、マライタ先生。テシュブ先生が先日の授業で金星へ行ったと聞いて、何か聞きたいことがあったんじゃなかったかね?」


 ドワーフのマライタ先生が赤いゲジゲジ眉を大きく上下させた。

「おお。そうだったわい」

 そう言って、サムカの藍白色の白い顔を黒褐色の瞳で凝視した。

「金星だが、面白そうな鉱物やら資源はあったのかい?」


 サムカがキョトンとした顔になった。しかし、真面目な質問だったので、真面目に思い起こす。

「……地上へ降りてはいなかったので、何とも言えないな。だが、宇宙空間から眺めた限りでは、これといった魔法場は感じられなかった。現地の大地と風の妖精が暴れているだけだったよ」


 マライタ先生がガックリと厳つい肩を落とした。

「そうかい……まあ、金星だしな。それでも、火星よりはマシだけどな」

 すぐに気持ちを切り替えたようで、白い下駄のような大きな歯を見せてニッカリと笑った。サムカの黒マントの上から肩を《バンバン》叩く。

「つまらない事を聞いて済まなかったな。タカパ帝国が興味を持っていてな。金星の鉱山開拓の話もあるにはあるんだよ。だけど今の金星の環境では、調査班の装備コストが高くなって割りに合わないんだ。鉱物資源自体は、地球とほぼ同じくらいに埋まっているはずなんだけどな」


 ここで、バーカウンターに目を向けた。ウィスキーの在庫量を見てゲジゲジ眉を上下させる。

「今の環境じゃあ、金星で掘って地球へ持ってくると、それだけでバカ高いコストになる。で結局、手つかずで放置ってわけだ。調査もろくにされていないからテシュブ先生の情報でも有難い」

 早口でまくし立てて説明してくるマライタ先生だ。


 サムカがノーム先生と顔を見合わせて、軽く肩をすくめる。

「そうかね。金星で実習授業をする予定なので、その際に気にかけておこう。何か情報が得られるかもしれない」

 マライタ先生がガハハ笑いをして、さらにサムカの背中を《バンバン》叩いた。

「おう、期待しているぜっ。じゃ、残りの〔召喚〕時間を楽しんでいってくれ」

 酒樽のような体を左右に揺すりながらマライタ先生がサムカに挨拶をして、バーカウンターへ向かっていった。


 そのマライタ先生と入れ替わりに、校長が2杯目のウインナコーヒーを「フーフー」吹いて冷ましながら、サムカに向かって歩いてきた。口元のクリームは拭き取られていたが、口元の数本のヒゲの先にはまだクリームの小玉がついたままで残っている。

「私も就業時間が終了次第、新酒の赤ワインを試飲するつもりですよ。それでですね、テシュブ先生。ゾンビを用務員や雑用係にすることが難しくなったので、アンドロイドに置き換えることになった件ですが、何かご注文やご指摘、ご不満などはありませんか?」


 サムカがキョトンとした顔になる。

「? いや、特に何もないが。どうかしたのかね?」

 校長がほっとした表情になった。マライタ先生の方を振り返って見る。ウィスキーをジョッキに注いだマライタ先生がバーカウンターから、ご機嫌な顔で笑みを返してきた。その反応を見て、さらに安堵する校長である。

「これまでゾンビがしていた仕事をアンドロイドに取られてしまったので、ご不興をかっておられないか気になっていました。そうですか、私の杞憂きゆうでしたね」


 サムカが目元を緩めて、校長に優しい視線を投げかける。

「シーカ校長。そこまで気を遣う必要はないぞ。私は時間が経てば、強制的に帰還してしまう契約だ。基本的に無責任なのだよ。無論、出来る限りの対応はするが、それでも常時この世界に留まる事はできない。おのずと責任に関しては、限界が生じるのだよ。そのような者に対して余分な気苦労をするのは、よろしくないぞ」

 とはいえハグ絡みで何度か切れて、校長室を破壊して迷惑をかけているのだが。その点については、謝罪する気はない様子だ。


 恐縮している校長の小さな肩を左手で軽く叩き、マライタ先生の顔を見る。

「マライタ先生作のアンドロイドであれば、私が出しゃばる幕はない。私も多くのアンドロイドを、この目で見ることができるのだから不満など出るわけがなかろう」


 それを聞いて、マライタ先生が白い下駄のような大きな歯をズラリと見せながら笑った。愛嬌はあるのだが、いかんせん樽のような筋肉質のオッサンである。赤い顔を覆いつくす赤い縮れた髪とヒゲの中から、ズラリと並ぶ白い下駄のような歯を見せて笑う様は、ちょっとしたモンスターである。

 これで瞳が赤や黄色だったら間違いなく誤解されるだろうが、彼の瞳は黒褐色で好奇心に満ち満ちてキラキラと輝いている。それを以って、辛うじてモンスターの範疇に分類されるのを防いでいる印象だ。

「ワシも実は少し気になっていたんだよ。そうかい、テシュブ先生も乗り気なら、堂々とアンドロイドを配備するかね。でも、ゾンビも動かしておいてくれよな。ワシにとっては、ゾンビを見る機会そのものが無いんだ。何かの参考になるかも知れねえからよ!」


 そう言って、バーカウンターの脚長イスの上で、短い両足をプラプラさせながらガハハ笑いをした。早くも、1杯目のウィスキーを飲み干したようで、赤ワインをバーテンアンドロイドに注文している。いつもはウィスキー派なのだが、新酒が出たので今日はワインも楽しむのだろう。


 校長が首を少し傾けて考え事をしながら、誰に言うともでもなくつぶやく。

「そうですねえ……夜間巡回と用務員業務の他に、うちの事務職員のデスクワーク補佐の仕事になりますかねえ。ですがこの学校は、地元住民の就職先でもあります。全てアンドロイドにしてしまうと、帝国の就職支援事業の方針と合わなくなります。その按配をどのようにするか……でしょうかねえ」


 サムカがエスプレッソを全て飲み干して、コップを両手の中で転がした。結構満足しているようだ。

「私の領地と似たようなものだな。ゾンビなどの使役兵や意識のある一般兵に任せる業務と、オークに割り振る業務との割合というのは、意外と重要なものだよ。オークへの仕事が多すぎても少なすぎても不満が出る。それが我が領地の治安状況や、畜産農産物の生産量と品質にも直結するのでな」


 そして、ノーム先生と談笑しているセマンのティンギ先生に、藍白色の白い顔を向けた。ティンギ先生は既に赤ワインをグラスで飲んでいる。この時間だと、恐らく4回目の食事の前の、軽い軽食なのだろう。

「ティンギ先生。我が城のセキュリティ向上のために、その知恵をお貸し願えないだろうか。相変わらずセマンの泥棒が城や城下に出没しているのだが、有効な手立てを打てずにいるのだ」

 軽く錆色の後頭部を手袋をした手でかくサムカ。

「セマンのことはセマンがよく知っているだろうから、何か手立てはないかね? そちらの世界のセキュリティ会社と契約とか可能だろうか」


 ティンギ先生が珍しく微妙な表情になって、グラスの赤ワインを2口ほど飲んだ。その後、グラスに残っている赤ワインをクルクルとグラスの中で回しながら、少しの間考えている。

 やがてグラスを回すのを止めて、サムカに黒い青墨色の瞳を向けた。いつも過剰に自己主張している大きな両耳と、ワシ鼻が小さく見える。

「……そうだねえ。いくつか私が知っている会社があるから、打診してみようか」

 サムカの表情が少し明るくなった。

「そうかね。ぜひ、お願いするよ」


 しかし、ティンギ先生は神妙な顔をしたままだ。再びグラスを回し始め、独り言のようにサムカに告げる。

「でもね。死者の世界の者や団体と、警備契約を結んだ会社って聞いたことがないんだ。だから、あまり当てにはしないでおくれよ」

 そして、ワインをもう1口飲んで、口元を引き締めた。

「セマンだから、警備しながら城の情報を別の誰かさんに売る……なんてことも充分考えられるんだ。重要な施設や部屋の警備は、任せない方が良いだろうな」


 サムカが軽く腕組みした。そして、ティンギ先生と同じような真面目な表情になる。

「むう……同じセマンでも、あまり信用ならないかね。分かった、城壁の警備を頼むことにしよう。城内部は私の兵を、これまで通りに巡回させることにするよ」


 ティンギ先生がサムカの考えに同意した。

「それが妥当だな。でも、セマンの警備会社が城壁をうろついている……というだけで、相当な効果を得られるとは思うよ。我々セマンにもプライドというか、そんなものがあるからね。セマンが警備している所に盗みに入る場合、確実に何か盗み出さないと腰抜け呼ばわりされてしまうからね。慎重になるんだよ」


 それを聞いて呆れている、サムカとエルフ先生である。ノーム先生は知っている様子で、口ヒゲを整えながらニヤニヤしているだけだ。

 素直に感想を述べるサムカ。

「ほう。セマンの間にも、なかなか難しい問題があるようだな」


 エルフ先生は、まだ呆れた表情のままだ。

「まったく……セマンの考える事も理解の外だわ」

 しかし、すぐに考え直した。

「……でもそうね。セマンの遭難者が多い地域には、セマンの警備会社を貼りつけておけば、面倒事が減りそうね。ちょっと上司に提案してみようかしら」

 意外と真剣に検討を始めたエルフ先生である。〔空中ディスプレー〕を出現させて、エルフ世界の上司宛に相談メールを打ち始めた。


 そんなエルフ先生をサムカが放置して、ティンギ先生に重ねて話しかける。

「ティンギ先生。死者の世界の様子は、この前の訪問で理解できたと思う。何か要望や指摘することはあるかね? 私で対処できる事項であれば、セマンの警備会社員の待遇を良くすることもできるだろう」


 ティンギ先生が少し首をかしげて考え、すぐに首を振った。

「いいや。特にないな。まあ、強いて言えば、アンデッドとの戦闘経験がほとんどないくらいかな。警備だけだから、対アンデッドや魔族にオークとの戦闘はテシュブ先生配下の兵士に任せて、さっさと逃げるよ」


 ティンギ先生がここで少し間をあけた。何か思いついたようだ。

「そうだねえ……不意の襲撃を受けて負傷する場合を想定して、何か適当なアンデッドと模擬戦闘をしてくれれば有難いんじゃないかな。〔運〕を磨いていれば、そんな怪我をすることなんかないんだけど、怠け者の警備会社員も居るだろうしね」

 サムカが真面目な顔でうなずいた。

「うむ。分かった。確かにアンデッドや魔族相手では、警備会社に対してこちらも期待していない。傭兵ではないからな。我が兵士に知らせて安全な場所へ避難してくれた方が、双方共に良い結果をもたらすだろう」


 そしてちょっとの間、思案するサムカである。

「……そうだな。肉体を持つアンデッド兵相手では、どんな訓練をしたところで無駄だろう。警備員が、何か法術や光の精霊魔法系統の魔法防具を装備していれば充分だ。敵がひるんだ隙に逃げれば良い。かなり敏捷だが、セマンの逃げ足であれば問題なく避難できるだろう」


 ティンギ先生が少し自慢げな表情になった。

「まあ確かに、セマンの逃げ足は特筆すべき速さだね」

 サムカが真面目な顔のまま、素直に同意する。

「そうだな。相手は私が授業で使うようなアンデッドではないからな。殺戮目的で作られているから、関わらずに逃げるのが正解なのだよ。特に生命ある者はな。私の教える生徒たちであれば何とか対処できるが、魔法適性のない一般人は、実際のところ為す術がないというのが正直なところだ」


 エルフ先生とノーム先生からの鋭い視線を感じながら、それでも淡々と話す。

「死者の世界のアンデッドの戦闘能力は、この世界とは比較にならないからな。セマンの泥棒を取り締まる仕事だけしてくれれば充分だよ」

 そして、ティンギ先生に微笑みかけた。

「肉体を持たない幽体のアンデッドは非常に敏捷だから、セマンの逃げ足にも対応できるだろう。では、シャドウ兵とでも模擬戦闘をするように組んでみるかね? シャドウともなると意識があるし、自我のカケラも芽生え始めているので強敵だぞ」


『シャドウ』という単語を聞いて、ピクリと反応するエルフ先生とノーム先生だ。しかし、今は黙っている。

 サムカも2人の警官先生に軽く目配せをして、話を続けた。

「シャドウは、床や天井、壁なども、簡単にすり抜けることができるから、生命ある者にとっては脅威だろう。もちろんシャドウには、相手を傷つけない程度の攻撃しかしないように、最初に命じておく」


 サムカが軽く首をひねって、腕組みの手を上下入れ替えた。

「……そうだな、接触されると四肢が〔麻痺〕する魔法で良いだろう。視線が合ったら恐怖して〔混乱〕する魔法も加えておこう。〔呼吸麻痺〕や〔心臓麻痺〕、〔エネルギードレイン〕や〔石化〕、〔アンデッド化〕などの魔法は使用しないから安心してくれ」

 サムカが山吹色の瞳を、さらに真面目な色にした。

「ただ、通常の攻撃は一切有効ではないから、気をつけることだ。対アンデッド用の武装で臨むことだな。視線を合わせないことと、接触を回避する動作訓練をすることが目的だ」


 エルフ先生が冷や汗をかいてサムカの話を聞いている。

「『シャドウ』ですか。確かに強敵ですね。私たち機動警察部隊でも、損害なく仕留めることは至難の業です」

 ノーム先生も表情をこわばらせて同意する。

「バンパイアよりも強敵だな」


 サムカも真面目な表情のままで、2人の先生の反応を見る。

「そうだな。そもそもバンパイア自体が低級アンデッドだからな。自我があるので会話はできるが、魔力は私の配下の使役兵ゾンビより少しマシな程度で、軍事作戦では使えないのだよ。せいぜい、オークや魔族の用心棒や傭兵程度の仕事しかできない」

 そして、意外と平然としているティンギ先生に視線を戻した。

「〔運〕の加護があるから、恐らくシャドウ相手でも回避できるだろう。その程度を見て、シャドウによる飛び道具の使用を許可するかどうか決めるよ。これも回避できるようになれば、そこそこ生存率は確保できるだろう」


 ティンギ先生がそこまで聞いて、何か考えついたようだ。好奇心でキラキラしている大きくて青墨色の瞳をサムカに向ける。

「そうだ、テシュブ先生。そのシャドウを私の授業で使わせてもらえないかな?」


「は?」

 サムカがキョトンとした顔をする。エルフ先生とノーム先生は口をあんぐり開けたままで、表情が固まっている。

 ティンギ先生が構わずに話を続けた。

「私の授業はウィザード魔法の占道術だろ。〔占い〕というか〔未来予知〕の各種魔法を高速で行わせる授業を、どうするかずっと悩んでいたんだよ」

 口元を緩めて、赤ワインをもう1口すする。

「空中浮遊したボールや火の玉なんかを乱舞させて、その軌道を〔予知〕して避けるっていうのが教育指導要綱の内容なんだけどさ。それって、実用性が皆無だろ? 第一、私がつまらなくて退屈して寝てしまいそうでね」


 エルフ先生がジト目になった。

「機動警察官の訓練を否定するとは、大したものね。かなり危険な訓練なんですよ」

 ノーム先生も銀色のあごヒゲをかいて、垂れ眉をひそめている。

「左様。風の影響や、意図しない魔法場の〔干渉〕もありますからな。ケガをする訓練生が多く出る訓練ですぞ。とても、一介の生徒にやらせる負荷ではない」


 しかしティンギ先生はニヤニヤしたままで、全く聞き入れようとはしなかった。それどころか、ますます目をキラキラさせ始めている。スリルが高まれば、安全性は二の次、三の次なのだろう。

「で、シャドウに生徒を襲わせて、生徒がそれを回避する授業にすれば面白そうだと思ったんだ。シャドウにはカケラ状態といえども自我があるんだろ? ただの火の玉を相手するよりも、はるかに有意義だよ」


「話を聞けー!」とエルフとノーム先生が文句を言い始めた。サムカも首を傾けたままで、ティンギ先生に疑問を投げかける。

「それであれば、普通の低級ゴーストで充分ではないかね? 確かにゴーストには意識も自我もないが」


 ティンギ先生がウインクして返す。エルフとノーム先生の抗議は全く耳に入っていないようだ。もしかすると、〔遮音〕しているのかも知れない。

「それなら、ただの『物体』だろ。火の玉と同じだよ。相手にも思考能力があって、その行動を私の生徒たちが未来〔予知〕する……というのが欲しいんだよ。我々生者とは違って半実体化しているアンデッドだから、その考えと行動を〔予知〕するってのは、かなり難しいはずだよね」


 それを聞いて、サムカが「なるほど」と、うなずいた。

「ふむ。了解した。確かに未来〔予知〕をする相手としては良いかもしれぬ。ゴーストは襲撃行動の術式の通りにしか動作しないからね。そんなものを〔予知〕したところで、確かにつまらぬ。ハグと相談して、どの程度のシャドウであれば余計な『化け狐』を引き寄せずに済むか検討してから、ティンギ先生に返答しよう。それで良いかね?」

 ティンギ先生が満面の笑みでうなずいた。顔の中央で目立つ、大きなわし鼻が膨らむ。

「結構、結構。良い返事を期待しているよ」


 サムカが軽く腕組みして考え事を始める。

「そうだな……シャドウか。私の授業でも使用してみるか」


 赤ワインがたっぷり入った大きなガラスジョッキを、エルフ先生が傾けて飲みながら、ため息をついた。本当にジュース感覚でワインを飲んでいるようだ。

「後遺症が生徒たちに残らない程度で、お願いしますよ。サムカ先生」


 サムカが校長からエスプレッソのおかわりを受け取り、鷹揚にうなずく。

「無論だ。〔エネルギードレイン〕魔法を使えるようになれば、その実戦相手として都合が良い。だが、床や壁を素通りするから、また騒動にならなければ良いが」


 エルフ先生がジト目になって、警告を入れてきた。

「そんな真似したら、問答無用で撃ち落しますよ。止めなさい。運動場に出て実戦訓練をすれば良いでしょう。適当にウィザード幻導術や招造術で〔立体迷宮〕を運動場に作って、その中でシャドウ相手に訓練すれば効果的ですよ」

 サムカが「なるほど」と、うなずく。

「そうしよう。さて。先ほどから、また1人の生徒が我々を覗き見しているのだが、どうしたものかな? ティンギ先生」


「おお、そうだった。うっかり忘れていたよ」

 わざとらしい、大げさな身振りで驚いたポーズで取り繕うティンギ先生である。

「ラヤン・パスティさん、こっちへ来なさい」




【ラヤン・パスティ】

 すると、竜族の女の子が植え込みの影から姿を現して、カフェに向かってズカズカと歩いてきた。どうやら彼女1人だけのようである。以前にペルの隣の席に座って、法術のマルマー先生と口論をした2年生だ。

 相当待たされて怒っている。ムンキン君と同様に竜族と自らを呼称しているが、どうみても直立したトカゲである。やはり紺色の目をギラギラさせながら、文句をセマンの先生にぶつけてきた。

「もう! 忘れてたって、何ですかソレ! そろそろテシュブ先生の〔召喚〕時間が切れる頃なんですけどっ」


 やはり怒っている。頭を覆う赤橙色で金属光沢を放つ細かいウロコを膨らまして、尻尾を《バンバン》と床に叩きつけた。トカゲ頭なので、大きく開かれた口が一際よく目立つ。ムンキンと比べて小柄ではあるが、よく動いていて動作もなかなかに俊敏である。


 ティンギ先生が全く悪びれずもせずに、彼女をサムカに紹介した。

「2年生のラヤン・パスティさん。法術専門クラスだ。私のウィザード占道術も選択しているよ。魔法適性が結構あってね、占道術が実質2番目の専門になってる。もちろん他の選択科目にも加わっているけれど、テシュブ先生の選択科目は履修していないんだ」


 エルフ先生が手元に〔空中ディスプレー〕画面を呼び出して、彼女の情報を見ながらサムカに補足説明してくれた。

「パスティさんは精霊魔法の適性が低いので、もっぱらウィザード魔法や法術の授業に熱心です。総合成績は2年生の中で、中の上というところですかね」

 ノーム先生も同様に〔空中ディスプレー〕を手元に呼び出して、その画面を横目で見た。

「だな。君は、精霊魔法は苦手だろ? どうしたんだね?」


 容赦なく自分の成績を暴露されて、さらに不機嫌になっているラヤンである。尻尾が床を叩くリズムが速くなってきた。16ビートに達しているようだ。

「先ほどのゴースト襲撃では先生方を含めて法術の生徒たちが、ほとんど何も対処できなかったんです。それに危機感を抱いたので、こうして質問に来たんです」


 そうして「キッ」とした紺色の視線をサムカに投げかけた。頭を覆う赤橙色の細かいウロコを膨らませて睨むと、かなりの迫力が出る。

「テシュブ先生。私は警察官になりたいと思っています。アンデッドやゴーストを退治する部隊を志望しています。ですが、あのゴーストですら手も足も出なかった自身に、無性に腹が立っているんです」

 ラヤンの紺色の瞳が更に鋭い光を帯びた。頭のウロコもキラリと光を反射している。

「今からでも、テシュブ先生の選択科目に加わることを許可してくれませんか? 今のままでは、役に立たない魔法や法術しか使えないまま卒業、就職することになりそうで、気に食わないんです」


 それを聞いていたサムカだったが、「ふむ」と、一言つぶやく。

「では、君の魔法適性を見てみよう。頭の上に手を乗せるので、我慢してくれ」

 サムカがラヤンのトカゲ頭の上に、黒い手袋をつけたままの左手を乗せた。思わしくない表情になるサムカである。

「むう……残念だが、君の魔法適性では私の授業にはついてこれない。魔力自体も、それほど強くないな。私の授業での実習では怪我をする恐れが高い。履修しない方が良いと思うが」


「ええ~!?」

 不満を思い切り表現するラヤンである。床を叩く尻尾のリズムが更に高速になっていく。


 ノーム先生が少し厳しい表情で、ラヤンの肩を抑えた。

「魔法適性は努力では変えられないんだよ。魔力のバランスを保つためであればいいが、適性の乏しい科目を学んでも得るものは少ないぞ」


 エルフ先生も巨大ジョッキを両手で抱え持ちながら、ラヤンに優しく諭した。

「そうですよ。サムカ先生の実習では、かなり強力なアンデッドを使用することになりそうですからね。あなたでは何もできないと思いますよ。シャドウ相手では、たちまち接触されて〔麻痺〕状態に陥るのが見えています。ウィザード魔法や法術でもアンデッドに対しては『それなり』に使えますから、それらをきちんと学びなさい」


 サムカが短く切りそろえた錆色の頭の後頭部を無造作に左手でかき上げながら、ラヤンに付け加える。

「元々、私はペルさんやレブン君のような、希少な魔法適性を持った生徒の教育のために〔召喚〕された身だ。そんなに気に病むことはあるまい」

 サムカの口調が穏やかなものになっていく。

「この世界は闇の精霊場や死霊術場が弱いから、強力なアンデッドはいないはずだ。ウィザード魔法や法術でも効果を得られるだろう。タカパ帝国が『化け狐』どもと、事を構える事態にもならないだろうしね」


 エルフ先生も同意する。

「そうですね。私がるところでは、この世界にはゴーストしかいないはずですよ。あの法術では〔浄化〕〔消滅〕は無理ですが、追い払うくらいはできます。現にペルさんの子狐ゴーストを、運動場へ追い払うことができたではないですか」

 エルフ先生が1口赤ワインを飲んだ。

「それに私のクラスのミンタさんやムンキン君でも、サムカ先生の授業内容を習得するのに四苦八苦しています。精霊魔法の適性そのものが弱いあなたでは、残念ですが時間と労力の無駄に終わりますよ」


「ぐぬぬ……」

 うつむいて悔しそうな顔で、紺色の両目を濁らせてウルウルしているラヤンである。

 そこへ『満を持して』というか意地の悪い『絶妙な間』で、ティンギ先生がニヤニヤしながらラヤンの肩に右手を乗せた。

「そう思うかね? なぜ彼女が、私の授業も受けていると思うのかな? 先生方は」


 サムカが少し驚いたような目をした。山吹色の瞳が好奇心でキラリと輝く。

「〔運〕……かね?」

 ティンギ先生が「ふふ」と、含み笑いをした。赤墨色で癖が強い短髪の先が意味深に揺れて、わし鼻が膨らむ。

「でなけりゃ、ここまで連れてこないよ。確かに〔運〕は、魔法適性では調べられないからな。分からなくても仕方がない」


 そう言って無造作に、ポケットの中から時限爆弾を取り出した。既に起動している。

 周りの先生方と校長が驚きで硬直しているのを無視して、ティンギ先生が話を続ける。

「もちろん本物だ。でもまあ、大地の精霊魔法を使えるノームのラワット先生にかかれば、こんなもの子供だましだけどね」


「ほれ」と、その時限爆弾をラヤンに投げ渡した。

「あ」

 ラヤンが受け損なって、時限爆弾が床に落ちてしまった。《ガチャン!》と音がする。


「!!!!」

 エルフ先生とサムカが慌てて大型の〔防御障壁〕を展開するが……何も起きない。ラヤンも恐怖で硬直している。

「????」


「あらあら、落としてしまったかー」

 わざとらしい声と仕草で、ティンギ先生が落ちた時限爆弾を拾い上げた。中身を開けて回路を一目見る。

「ああ……落下の衝撃で回路が潰れてしまったね。幸運だったねえ、皆さん」

 そのまま時限爆弾を自分のポケットに押し込んで、気楽な顔でサムカに微笑みかける。


「どうかな? 彼女は法術では〔解毒〕や〔回復〕系統がそれなりに上手だ。それと、見ての通り、罠の〔解除〕でも才能があると思うが。実習での後方支援で役に立てないかな」


 エルフ先生が空色のジト目視線で、ティンギ先生を見た。

「でも、〔運〕ですからね。当たり外れが大きすぎます。失敗すれば罠によっては即死しますよ。まさかその時は、マルマー先生の〔蘇生〕法術で対処するつもりですか」


「そのつもりだが、何か?」

 ティンギ先生の『あまりにも』明け透けな返事に、キレかかるエルフ先生である。腰までの真っ直ぐな金髪から何本か静電気が走って、3、40本の金髪がはね返ってくる。

「あなたね! 生徒の命をなんだと思っているんですか! その法術も完璧ではないのですよ。エラーが生じたらどうするんですか。ましてや爆死したら、体が粉々に四散することがあるのですよ! その状態からの〔蘇生〕は不可能です。もっと高度な〔復活〕法術を使わないといけなくなるんですよ。とにかく! 〔蘇生〕も〔復活〕もエラーが発生しやすいというのに、このセマンは全く!」


 しかし当のサムカは腕組みをして考えている。ティンギ先生とパスティの顔をじっと見つめてから口を開いた。

「……確かに。後方支援に徹するのであれば、それほど危険ではなかろう」

 エルフ先生の抗議を聞き流して、サムカが話を続ける。

「罠も授業では、安全装置を必ずかけているからな。ペルさんや、レブン君、ジャディ君が実習でアンデッドと戦う際に魔法支援や法術支援をしてくれると、私としても都合が良い。安全性を維持したままで、より強力で大量のアンデッドを敵として出すこともできるだろう」


 サムカの話に「ぐぬぬ……」と押し黙るエルフ先生であった。

 サムカが改めてラヤンの顔に視線を向けた。リーパット主従と違い、彼女はサムカの目を直接〔見て〕も大丈夫のようだ。

「ラヤンさんにとっては、生徒に対する迅速な〔治療〕と法術支援を訓練できる点で有用だろう」


 ラヤンの赤橙色の顔が明るくなった。頭と尻尾を覆うウロコが金属光沢を放ち、尻尾で一際強く床を叩く。

「で、ではテシュブ先生!」

 サムカが微笑んでうなずいた。

「うむ。座学への参加は意味がないだろうが、実習授業であれば、後方支援があると便利な場合に限って参加を許可しよう。君が学んだ法術やウィザード魔法を実習授業で使ってみなさい。その経験を後で、法術クラスの君の仲間に〔共有〕してあげれば良いだろう」

「やった!」

 大喜びするラヤンである。頭の細かいウロコが膨らんで、さらにキラキラと輝いている。


 それを見て、エルフ先生が空色の瞳に微妙な光を浮かべて頬を緩めた。

「サムカ先生……ちょっと生徒に甘いですよ」

 サムカも錆色の髪を左手でかき上げながら、軽く両目を閉じた。

「済まないね。我ながら、甘いと思うよ。まあ、模擬戦闘での話だし、後方支援だから怪我をする恐れは少ないだろう。それに〔運〕を強めるためには、ティンギ先生いわく『崖っぷちに立たないといけない』ようだからね」

 ティンギ先生がサムカにいたずらっぽい青墨色の視線を送る。

「感謝するよ、テシュブ先生。これで、私も占道術の対アンデッド用の実験が色々できるよ」


 エルフ先生が完全なジト目になって、冷ややかにセマンの先生に言い捨てた。

「まったく。先生には、つくづく向いていませんよね、あなた。生徒で実験するなんて外道のすることですよ」


 が、セマンには通じなかったようだ。満面の笑みで返事をするティンギ先生である。ほどよく焦げた干し藁色の顔色が余計に癪に障る。

「それは、この上もない褒め言葉だな。ははは」




【カフェで酒盛り】

 ラヤンをさっさと追い出して寄宿舎へ向かわせるエルフ先生。

 それを見ながらマライタ先生が、巨大なジョッキに大量のウイスキーを入れたものを両手に2つ持って戻ってきた。赤ワインだけでは物足りなかったようだ。何かの干し肉のようなツマミが、大きな口の中にぎっしりと詰まってる。どうやら胃の中で、ウイスキーとツマミを合わせるつもりのようだ。

「おう。じゃじゃ馬が、じゃじゃ馬を連れ出しているな。結構、結構。がははは」


 エルフ先生がラヤンをカフェから送り出して、マライタ先生に顔を向けた。

 彼の口にはツマミが詰まっているので、マライタ先生の声はかなり聞き取りにくかったのだが……『悪口は良く聞こえる』という、ことわざは当たっているようだ。かなり冷ややかな視線である。

「あら。お酒に弱いのに、そんなに飲んでも知りませんよ」


 マライタ先生は慣れているようで、一向に気にしていない様子である。瞬く間に口の中にぎっしりと詰まっていた酒のツマミを、ウィスキーと一緒に胃の中へ流し込んだ。

「酔えないなんて、なんと可哀相な種族だろうな。酒の楽しみの半分ほどを知らないのと同じだぞ」


 マライタ先生の言い返しを完全に無視するエルフ先生であった。仕方がないのでマライタ先生が、サムカに赤ら顔を向けた。

「テシュブ先生よ。アンドロイドなんだが、補助動力源を膝に装着しているんだ。今の授業で生徒たちが作成しているやつだよ。運動した際に生じる膝への衝撃エネルギーを使って、発電して蓄電する器械だな」


 サムカが感心した声を出した。

「ほう……それは便利だな。そういえば、アンドロイドの動力源は何かね? あのスリムなボディには燃料タンクや発電パネルの類が一切見当たらないので、気になっていたのだが」

 確かに、カフェで働いているアンドロイドたちは完全に人間型だ。燃料タンクなどを背中に背負ったりしていない。


 マライタ先生が「ガハハ」と笑った。ツマミの山はすっかり胃の中へ送り込んでいる。

「我々と同じさ。飯を食って、それでエネルギーを発生させて動いている。まあ、我々と消化方法が違うから、排泄物は炭みたいなものだけどな。皮下脂肪に相当する一時貯蔵機能も付いているんだぜ。おかげで一日一食で充分だ」

 サムカばかりでなく、エルフ先生やノーム先生、セマン先生まで驚いている。

「ほう……ほとんど生物だな」


 マライタ先生が「グビ」とジョッキに入ったウィスキーを喉に流し込んだ。

「生殖はしないけどな。遺伝子も持っていないし。エルフ先生くらいの背丈でも体重が10キロちょっとしかないから、そんなにエネルギーを消費しないんだがね。まあ、それでも走ったり、重いものを運ぶには補助エネルギー源があった方が便利だからな。それで膝につけてあるんだ」

 そして、そのままサムカにニヤリと笑いかけた。

「それで、だ。この装置を我が生徒たちにも装着させるつもりだよ。無論、補助動力源としても使えるが、魔法補助にな。発電した電気を魔力に〔変換〕する。この場合は膝ではなくて、足裏に貼って装着するタイプになるだろうな。膝だと関節サポーターみたいで、見た目が悪いんでね」


 サムカが驚いた表情になった。

「マライタ先生。『器械で魔力を生み出す』ということかね?」

 マライタ先生が少しドヤ顔になる。

「ワシたちドワーフは魔法を使えないから、あまり自慢できないんだがね。精霊魔法やソーサラー魔術、妖術なんかは無理だ。だけどウィザード魔法と法術は、人為的に魔力を集めた『サーバー』から得ているだろ。その術式さえ入力してしまえば、機械化できるんだ」


 ウィスキーをガブ飲みする。早くもジョッキの半分を飲んでしまっていた。

「特にこの世界では、ウィザード魔法や法術のサーバーの能力が低くてね、接続が悪い上に途中で切れやすいんだよ。そのサポートをする目的がある。特に、忙しく動いている間は通信が乱れやすいからな」

 また、ここでウィスキーを喉に大量に流し込んだ。

「先生方も最近は、魔力場や法力サーバーの強化増強に励んでいる。なので、こんな補助器械は間もなく用済みになるだろうけどな」


 サムカが重ねて感心する。

「ほう。優れものだな。通信が途切れ途切れになっているのを、この装置で擬似的に連続状態にするということか」

 マライタ先生がニヤリと笑った。

「お。察しが良いな。勉強しているみたいで結構、結構。ぶつ切り状態の通信を、埋め合わせてつなげる機能だな。これで、通信途絶のせいで起きる術式エラーを防ぐんだ。遅くても、エラーに陥らないギリギリの速度を維持すれば、術式が起動するわけだからな」


 そして、バーカウンターでジョッキグラスを洗って働いているアンドロイドに命じて、片足を上げさせた。素直に命令に従って、右足を上げるアンドロイドだ。その間でもグラス洗浄は継続している。

 その右膝には、マライタ先生が装着した関節サポーターのような物が、黒ズボンの上に巻かれているのが見えた。

「この器械自体で魔力を生み出すこともするから、より高度な術式が使えるようになるぞ」


 エルフ先生とノーム先生も、マライタ先生の説明に感心している。

「魔法が使えないのに、よくもまあ……そこまで詳しくなれるものですね」

「ノーム世界では想定していない環境だな。確かに、この世界のサーバー速度は苛立たしいほど遅い。そのせいで僕は、リアルタイム発動の術式をそれほど使っていないよ。前もって術式を組み上げておいて、使用する際に〔発動キー〕を入れる方式だな。〔遅延発動〕の術式も多用している」


 サムカも感心しているが、改めて考え直しているようだ。少しの間カフェの天井を見上げてから、視線を戻した。

「私の場合は、魔法を全て自力で発動させている。そうか……他の異世界では、サーバーから分けてもらうのだったな。気をつけてはいるのだが、どうも、つい忘れてしまいがちだ。留意しておこう」


 マライタ先生が更にいたずらっぽい表情になった。

「だけどな、テシュブ先生。こいつは大地の精霊系統だからな。闇の精霊魔法や死霊術との相性は良くないんだよ。何とか使える程度だな。魔力の〔変換〕損失が相当にでかいから、推奨はできない。というわけでペル嬢やレブンには、残念ながら装着させてもウィザード魔法以外には意味はないな」

 サムカがガッカリした表情になった。

「うむむ……そうかね」




【地震と式神】

 《どろろろろ……》

 地鳴りが再び床の下から響いてきた。軽い横揺れもゆっくりだが伴っている。

 しかし、もうこの頃にはサムカも揺れと地鳴りに慣れてしまっていた。特に何も言わず、先生方と談笑を続けている。

 地鳴りの雰囲気は、ちょうど大きなパワーショベルの重機が荒地をキャタピラ走行している際のような感じだ。不規則な重低音と、たまに突き上げるような大地の揺れが、自然現象の地震の揺れとは明確に違っている。


 いったん姿を消していたティンギ先生が、法術のマルマー先生を半ば強引に引っ張ってカフェに戻ってきた。早速サムカにいたずらっぽい視線を投げかける。

「やあ。そろそろテシュブ先生の帰還時間だな。今回は、この先生を連れて行ってもらえないかな?」


 サムカが素っ気なく拒否する。

「いや。残念だが、私と共に死者の世界へ転送される空間は、現在ではかなり狭くなっているのだよ。小人や生徒ならまだしも、私と同じ背丈の人間を一緒に転送できる空間は『今は』もう無いぞ。クーナ先生やパリーくらいの背の人までが上限だ」


 しかしティンギ先生は、それを承知済みだったようだ。サムカの返答に構わずに、堂々とした笑みを見せつける。

「大丈夫だよテシュブ先生。そもそも、法術使いが生身で死者の世界へ入ったら精神汚染されて、戻ってきても神官として使い物にならなくなるよ」


 それを聞いたサムカが素直に納得した。

「うむ。確かにその通りだな。では、何か別の物で『代用』するのかね?」

 ティンギ先生がニヤリと笑った。そして、彼が引っ張ってきた法術先生に顔を向ける。

「ほら、マルマー先生。さっさと出しなよ。もう残り時間があまりないんだ」


 マルマー先生が渋々という表情で、豪勢な神官衣装のポケットから紙片を取り出した。そして、何か法術式を唱える。と、その紙が<ポン>と破裂して立体になり、人の形に成長した。

 背丈は20センチほどしかなく、神官の姿を小さくしてデフォルメしたような姿である。で、やはり表情は偉そうだ。言葉は発することができない仕様のようである。


 ティンギ先生がニヤニヤしながらサムカに説明した。

「〔式神〕だよ。法術は生命溢れる魔法だからね、こうして紙を擬似生命に仕立て上げることができるんだ。魔法使いが使うゴーレム、テシュブ先生が使うゾンビみたいなものかな。コレは、死者の世界を探査するための〔式神〕だね」

 ティンギ先生がマルマー先生の横顔をチラリと見てから、再びサムカに視線を向ける。

「3つある法術宗派が共同で1つの〔式神〕を出せば良かったんだけど、そうはならなかったようでね。面倒だけど、3つ連れて行ってくれないかな」


 3つと言われて、法術先生の顔の横あたりの空中に2つの小さな〔空中ディスプレー〕画面が発生した。いつもの別宗派の神官の気難しそうな顔が映っている。そして、〔ディスプレー画面〕から、紙の〔式神〕がそれぞれニュッと出てきた。確かに、これで3つになる。


 神官と法術先生は、ぶすー、としたままだ。サムカに視線を向けもせず、不機嫌な表情で押し黙っている。

 ティンギ先生が鼻歌混じりでサムカに説明を続けた。こちらは結構、上機嫌のようだ。

「ついこの間、彼らは再訓練を受けたばかりだったんだけどね。ペル嬢のゴーストにすら、満足に対処できなかった失態を見せてしまっただろ。これでは、この世界で教師としている価値が揺らいで布教にも悪影響を及ぼすと、上層部が危機感を抱いたんだ。それで死者の世界へ、これら探査〔式神〕を送り込んで情報収集することになったんだよ」


 サムカが、ややジト目になって話を聞いている。『それで』以降の文脈が理解できない様子だ。

「ずいぶんと身勝手な行動だな。死者の世界と何ら関係ないではないか」


 それを合図に、一斉に神官先生たちがサムカに抗議し始めた。が、ティンギ先生が難なく収拾する。どうやら相当に、このセマンの先生に負い目があるようだ。

「テシュブ先生やその仲間たちに、迷惑をかける事にはならないよ。単に闇魔法場や、死霊術場の濃度の〔測定〕をするだけだから」

 充分に迷惑だと思うのだが……

「だけど〔式神〕とはいえ法術がかけられているから、そのままでは魔法場〔干渉〕が起きる恐れがある。死者の世界の闇魔法場に当てられて焼けてしまうとか、壊れてしまうとか、そんなところだよ。そこで、私たちセマン族が開発した、この『アタッチメント』を〔式神〕に装着してもらおうか」


 そう言ってティンギ先生が、ポケットからアクセサリーを取り出した。細かいビーズを糸でつなげた、小さなネックレス状だ。

「これを装着した物や人の〔運〕を、劇的に向上させる魔法具だよ。有効時間は1時間ちょっとしかないけれど、充分だろう」


 サムカが口元を少し緩めた。

「なるほどな。セマンが作った魔法具の販売促進か」


 ティンギ先生がニヤニヤしながら、ビーズのネックレスを小さな〔式神〕の首に手早くかけていく。

「最新型の製品らしいよ。テシュブ先生の城の警備をするセマンの警備会社員の安全向上のためにも、この魔法具の効果を確かめておきたいようだ。まあ、実用試験だね」


 サムカが鷹揚にうなずく。

「うむ。そういう方便もあるか。構わぬよ。この程度の大きさであれば、3体でも問題なく死者の世界へ持っていくことができるだろう。1時間ほどすると、自動的にこの元の世界へ戻される。その際に、この紙人形を回収すれば良いだろう」


 サムカがティンギ先生から3つの紙製の〔式神〕を受け取り、マントの中に放り込んだ。たちまち消滅したかのようにどこかに収まってしまう。やはりマントや衣服に膨らみは全く見られない。魔法場の〔干渉〕も全く生じていないので、感心するサムカである。


 校長が配下の事務職員に命じて持ってこさせた、果物詰め合わせセットが収められた箱も続けて受け取り、マントの中に入れる。やはりこれも消え去ったかのように見事に収まるのを見て、校長が首をかしげた。

「毎度毎度、不思議に思うのですが……大きな荷物でも、そのマントに包まれると消え去ってしまいますね。それも魔法でしょうか?」


 サムカが平然とうなずき、黒マントの裾を優雅に揺らした。

「うむ。闇魔法の〔収納〕魔法だ。見た目は魔法使いが使う「結界ビン」と似たような魔法だな。しかしこれは、別の空間へ〔転送〕するのではなくて、闇魔法でいったん完全に〔消去〕している。その〔ログ〕記録を保存しておいて、必要になったときに〔ログ〕を基にして消した物体を〔復元〕させているのだよ。ドワーフの言う『物質の情報化』というモノかな」


 ティンギ先生が少し残念そうな表情になった。

「我々のような人間や獣人を、先生のマントで消して持ち歩くことは、無理なのかな?」

 サムカが山吹色の瞳を細める。

「いったん『殺す』ことになるからな。人道上の理由で無理だろう」

 そして、懐から懐中時計を取り出した。

「うむ。そろそろ戻る時刻か」




【古代遺跡の発掘品鑑定】

「あ……すいません、テシュブ先生。戻るまでの間に遺跡発掘品の鑑定を、お願いできないでしょうか?」

 校長が考古学部のアイル部長を引っ張って、カフェに戻ってきた。アイル部長は大きめの台車を引っ張っており、その台車の荷台の上には発掘したばかりの意味不明な品々が並べられている。


 遺跡とは出自不明の古代遺跡の通称で、この世界に結構たくさん残されているようだ。遺跡から発掘された品々は、どれもサムカや魔法使いくらいの背丈の人間が使うサイズである。当然、狐族や竜族、魚族には大きすぎる。

 そのため今は絶滅したか等で、『いなくなった連中』が遺した物品であろう……という見解だ。


 アイル部長は相変わらず、野外での発掘作業を指揮しているのだろう。狐族なのだが校長と比べても毛皮の日焼けがひどく、毛並みも荒れている。その分、野性味が強く出ていて筋肉質な体つきになってはいるが。

「すいません、テシュブ先生。前回の巨人アンデッド地雷の件で、教育研究省の指針として、まずテシュブ先生に鑑定してもらうようになりまして……」

 アイル部長が日焼けした狐顔に愛想笑いを浮かべて、サムカに説明を始める。とたんに野性味が、きれいさっぱりと消失してしまった。


 サムカも(そんな事だろうな……)と予期していたので気軽に応じた。バーカウンターのウェイターアンドロイドから、コーヒーが入ったカップを受け取る。

「構わぬよ。私としても巨人ゾンビが封じられた地雷は欲しいのでね。今回は、どのような品が発掘されたのかな」


 台車の荷台に乗せられている発掘品をサムカが見て回る。コーヒーをチビチビとすすりながらであったが、その表情がすぐに曇った。

「ん? 剣に盾に鎧? 槍もあるな。古代遺跡の主人たちは、死者の世界のような時代錯誤的な装備を好むのかね。魔法使いたちの世界のように、銃器や魔法具を使い、魔法を帯びた戦闘服や防具で身を守るものとばかり思っていたが」


 それを聞いてエルフ先生が思わず頬を緩めて、軽く吹き出した。腰まであるまっすぐな金髪の先がリズミカルに揺れて、ベルトに留めてある若草色の草で編んだポーチが上下に跳ねる。

 相変わらずの機動警察官の制服姿なので、その仕草とのギャップが大きい。危うく、ワインが入ったジョッキを落としそうになっている。

「ご自身で時代錯誤って言うものではないと思いますよ。死者の世界では光や炎の精霊魔法が使いにくいのですよね。ウィザード魔法の力場術も」


 サムカがうなずく。

「そうだな。闇の魔法場が特別強い世界だからな。光や炎の他に、電子精密機器との相性も悪い。銃砲や光学兵器が使いにくい世界なのだよ。レーダーのような電子探査器もな」

 貴族が使うウィザード魔法では、魔力源が魔神ではなく貴族本人であるために、個人差が大き過ぎて規格の統一ができていない。ソーサラー魔術でも同様だ。

 従って、武器の量産やオーダーメードが難しくなり、原始的で単純なものになってしまうようだ。そんな武器や魔法具の性能が低いデメリットを『貴族の魔力で補っている』というのが現状らしい。


「逆説的になるが、私がマライタ先生の魔法具やアンドロイド作成に興味があるのも同じ理由だな。精密機器の仕組みを理解すれば、私のような闇の者でも扱える分野ができるかもしれないと思ってね」

 そう言ってサムカが、荷台の上の発掘品の数々からガラス質の物体を2つ取り上げた。コーヒーをすする回数が、ゆっくりになっている。

「これも地雷だな。封じられているのは……うむ、巨人のアンデッドだな。前回と同じ型だ」


 校長が非常に残念そうな表情になった。上毛を含めた口元と鼻先のヒゲ群が、全て力を失って垂れる。白毛交じりの両耳が軽く前に伏せられ、同じく白毛交じりの尻尾もデレンとして動かなくなった。

「ああ……そうですか。用務員の役職は用意できませんから、廃棄するしかありませんね」

 校長の感情が見事にヒゲや耳や尻尾とリンクしている様に、内心で感心しつつサムカが、山吹色の目を少々輝かせて校長に提案した。

「それであれば、私にこの2つの地雷を譲ってくれないかね? 1つは陛下に献上しなくてはならぬが、もう1つは、私の城で使うことができるだろう」


 校長とアイル部長が互いに顔を見合わせる。 

 すぐにアイル部長が、愛想笑いではない普通の笑顔で同意してくれた。日に焼けて精悍そうな顔なのに、笑顔になると土方のオッサンみたいに見えてしまう。

「そうして下さると、教育研究省としても手間が省けて助かります。こちらでの処分中に、また暴走してしまうと面倒ですからね。2つもあると、この学校の校舎全てが破壊されてしまうかもしれません」

 オークとの付き合いが長いサムカにとっては、こちらの笑顔の方が馴染みがあるようだ。涼しげな山吹色の瞳が、心持ち細く緩んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ