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二宮浩太郎の独断推理ノート 〜高校生探偵の推理〜  作者: スズキ
最終話 「最後のあいさつ」 VS名門女子校生徒会役員/澄川涼香
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九・久しぶりの会話



「コーヒー淹れてきました」


「ありがとうございます」


「あとお菓子です」


「どうもすいません」


 現場を一通り見終わった二宮は、生徒会室に招かれて琴音からコーヒーと菓子を振る舞われた。


「砂糖はどこにありますか」


「今、取ってきます」


「お願いします」


 琴音が砂糖をを給湯室へ取りに行った。


「浩太郎、すっかり会長に気に入れたようね」


 二宮の隣に座る涼香が呆れ顔をした。


「そうそう。この二宮氏の事件簿を聞いてからというものの、琴音は彼に夢中だものねえ」


「琴音先輩って、推理小説とかが好きでしたっけ」


「それは知らないけど、意外と漫画とか読んでいるらしいよ」


「そりゃあ、浩太郎と相性ピッタリね。こいつも漫画好きなんだもの」


 琴音が給湯室から戻って来て、二宮に砂糖を渡した。


「すいません。スティック状の物が無かったので容器ごと持ってきたんですけど……」


「あ、それでいいですよ」


 二宮は琴音から受け取った容器から大量の砂糖をコーヒーに入れた。


「あ、あの、そんなに入れて大丈夫なんですか」


「そうよ、そんなの飲んだら味覚神経が無茶苦茶に……」


「そうですよ、糖分過多ですっ」


 動揺する琴音たちを涼香は平然と見ていた。


「大丈夫ですよ。浩太郎、いつもこれ位の量でコーヒー飲んでたんですから」


 そして二宮は涼しい顔でそのコーヒーを飲んだ。


「うん、美味し」


「……美味しいんだ」


 瑠衣が溜息をついて二宮に辟易した。


「そういえばさっきから大川さん見ないけど、あの人どうしたの」


「PTAの会長さんに呼ばれて怒られてる」


「あの人、何かしでかしたの」


「まず部外者かつ男子である浩太郎を、伝統ある女子高であるこの天照女学院に入れたことに関する文句」


「まず、ってことは、まだあるの」


「もう一つ。あの刑事さん、さっきこの学校の講演会に出たんだけど、どえらい失敗したのよ」


「失敗って、なに」


「質問のコーナーで、予定では『後輩刑事のことをどう思っているか』って聞く予定で、その答えも用意してもらったのよ。だけど向こうは『好きな動物は』って思ってたみたいで、答えが確か……」


 涼香が言葉を途切らせると、冷夏が言葉を続けた。


「イヌ、ってあの人答えちゃったの」


「後輩がイヌ、ですか」


「まあ、結果的には」


「そりゃあ、まあ、ろくに話を聞かずにいい加減なこと言った、あっちが悪いかもしれませんけども」


「で、人をイヌ呼ばわりとは何たることだ、って猛抗議を受けてる所」


「あら、ま」


 二宮がコーヒーを飲み終えて、コーヒーカップを机に置いた。それを涼香が片付ける。


「それで? 現場を見て、何か分かったことはあったの?」


「あ、それわたしにも聞かせてください」


 興味を持った琴音が会話に加わる。


「ああ、それですがね、亡くなった方、確か名前は……」


「二年生の升野日沙里」


「そうそう。で、その升野さん。死因は縄で首を絞められたことによる窒息死」


「別に何も変わったことは無いわね」


「ただ、一つ問題が。彼女が持っていたカメラのメモリーカードが抜けてたんです」


「本体側のメモリーに写真を入れてたんじゃないの」


「いや、講演会が始まる直前に升野さん、写真をこの生徒会室で撮っていたみたいですよ」


「気に入らなくて消した可能性は」


「それなら問題ないんですけど、カメラの本体側のメモリーに写真は一枚もありませんでした」


「と、いうことはカメラに入っていたメモリースティックが目当てで犯人は被害者を殺したと?」


 涼香が身を乗り出して言った。


「ま、そうなんじゃないですか」


「凄い、本当に推理漫画みたいな感じです――あ、ごめんなさい。不謹慎ですよね、こんな発言」


「気にしないでください。浩太郎もいつもそんな感じで事件に首を突っ込んでいるんですから……あっ、ごめんなさい。こんな奴と一緒にしちゃ悪いですよね」


「酷いこと言うね。僕にもプライドってものがあるんだけど」


「あんたのようなちゃらんぽらんな男にプライドがあったなんて、全然知らなかったんだけど」


「だけどそんなちゃらんぽらんな男とあなた、付き合ったんでしょ」


「そりゃ、ただの馬鹿じゃなかったからね。いちおう、有能だったし」


「いちおう、はいらないでしょう」


 言い争う二人の様子を見て、琴音がふふっ、と口に手を当てて笑った。


「二人とも、仲がいいんですね。元恋人って聞いたから、険悪な仲だったのかと心配していたんですけど」


 二宮と涼香の会話に琴音が口を挟む。


「そうだ、折角だから二人で散歩してきたらどうですか」


「そんな、いいですよ。もう帰宅禁止令も解除されて、帰ろうと思ってたところなんですから」


「別にいいじゃない。二宮さんはどうですか」


「僕はいいですよ。私立のきれいな校舎、記念に見ておきたいし」


「それじゃあ決まり。じゃ、二人とも、行ってらっしゃい」


 涼香は琴音に背中を押されながら、やれやれ、と呟いて二宮と一緒に生徒会室から出た。



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