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二宮浩太郎の独断推理ノート 〜高校生探偵の推理〜  作者: スズキ
最終話 「最後のあいさつ」 VS名門女子校生徒会役員/澄川涼香
36/43

五・記念撮影



 涼香の計画が始まって、一週間が経った。その日の昼放課の生徒会室には、生徒会のメンバーと、午後からの講演会に呼ばれて訪ねてきた、県警の大川千尋刑事が居る。


「いやあ、まさか母校から講演を頼まれる日が来るなんて、思ってもみなかったなあ」


 部屋の椅子に座って千尋がはしゃぐ。


「そりゃあ、この若さで警部補ですもの。学校に呼ばれるわけですよ」


 琴音が千尋に向かって微笑む。


「うーん、ただラッキーなだけだった気がするけどね」


「そんなに謙遜することないですよ」


「いや、何だか最近自分に自信が無くなってきたような気がして……」


 千尋の顔が俯き気味になって、少し曇った。


「あの、悩み事でもあるんですか」


 冷夏が千尋に訊いた。


「最近、仕事中にあなたたちと同じ位の年の男子高校生に振り回されまくってさ……何だか自分が虚しくなってきて、もう刑事止めちゃおうかな、なんて」


「えーっ、そんな人の人生を狂わせるようなヤツ、最低ですね。いつも千尋さんに何してるんですか?」


 話を聞いた瑠衣が話に入る。


「いつも捜査現場に乱入して場を混乱させては、平気な顔して人に迷惑をかけるのよ」


「何ですかそいつ。早いこと逮捕した方がいいですよ」


「いや、それはごもっともだけど、そいつ、いつの間にか知らないところで真犯人を突き止めて事件を解決しちゃうのよ……何だろ、わたしの存在意義って」


 千尋の話を聞いて、琴音がうっとりとした顔をした。


「だけど、何だかその人、推理小説の探偵さんみたいですね。一度、その人に会ってみたいです」


「止めた方が良いって。あんな偏屈なヤツ、会わない方が幸せよ」


「……」


 涼香が千尋の話を聞いて黙りだした。


 勝手に捜査現場に入り、事件を解決する男……もしかしたら――


「どうしたの、澄川さん。そんな神妙な顔をして」


「大川さん、その男子高校生なんですけど、もしかしたら……二宮とかいう男なんじゃないですか?」


「えっ」


 部屋中の人間が涼香に注目する。


「二宮浩太郎、そうなんじゃないですか?」


「そ、そうだけど、あなた、ニノを知ってるの?」


 千尋が涼香に問いかけると、部屋の扉が開いて、人が入ってきた。升野日沙里だった。


「すいません。新聞部の升野ですけど、大川さんの写真を撮りに来ました」


「あっ、三脚とかその辺に立てといてください」


 琴音が対応すると、日沙里は三脚を立て、その前に椅子を一脚置いた。


「え、これからわたしの写真を撮るの?」


「はい、大川さんを中心にその周りを生徒会メンバーが囲むような感じで」


「判りました。カメラの前に、っと……」


 千尋が三脚に取り付けられたカメラの前の椅子に座り、涼香たちが千尋が座った椅子の周りに立つ。


「はい。では三、二、一……で撮りますから」


「ええ。じゃあ、お願いします」


「はい、笑って」


 カメラの前の四人がカメラに向かって笑顔を向ける。


「では撮りまーす。三、二、一……はい、チーズ!」


 カメラがカシャッ、とシャッター音を鳴らした。


「撮れましたよ」


 四人がカメラの周りに集まって、写真を確認した。


「うん、結構いい感じに撮れてる」


「じゃあこれを学校新聞に使いますから」


「お願いします」


 分かりました、と言って日沙里はカメラを片付け始めた。


「いやあ、緊張するなあ」


「例の質問の答え、ちゃんと考えてくれました?」


「大丈夫、家で全部暗記してきたから」


 千尋や琴音たちはさっきまでいた席に話をしながら戻った。


 残った涼香はカメラをしまう日沙里の耳元でひっそりと話しかけた。


「……あなたに話したい事があるんですけど」 


「やっぱり。ここに呼んだからには、何か用事があると思ってた」


「講演会が始まって最初に質問コーナーが始まるので、その頃に体育館を出て、一階の東側のトイレに来てくれませんか」


「詳しいことはそこで?」


「ええ。では、また後で」


 そう言うと、涼香は千尋たちの居る場所へ戻っていった。


「では、ご協力ありがとうございました。では、失礼します」


 日沙里はカメラと三脚を持って生徒会室から出ていった。


「学校新聞って、どれぐらいの大きさだったかなあ」


「今年は去年より、二倍ほど面積が広くなっているはずです」


「じゃあ写真が大きく張られるのかなあ。あ、そうだ。ここらで一度練習しない?」


 千尋の提案に琴音が頷いた。


「そうですね、じゃあ最初の質問のコーナーから……」


「いや、別に大丈夫だと思いますよ。大川さんならぶっつけ本番でもやれるはずです。そろそろ体育館のほうの準備もしなきゃいけないし」


「えっ」


 千尋が涼香の発言で固まった。


「それもそうですね。練習しなくても、大川さんなら大丈夫じゃないかなあ」


「えっ、えっ」


「うん。じゃあ、期待してますよ!」


「え、え、え」


 瑠衣、冷夏の言葉で千尋の顔が急速に青ざめた。


「は、ははは……じゃあ練習せずに完璧にやって見せようじゃない」


 千尋は年上としてのプライドからか、わはははは、と笑いながら強がって答えた。


 千尋の笑い声に重なって、壁にかけてあるスピーカーからチャイム音が昼放課の終わりを告げた。


「もうこんな時間。じゃあ、体育館へ行きましょう」


 一行は部屋を出て、体育館へ向かった。


 千尋たちと廊下を歩く涼香は、スカートの右側のポケットに手袋と、もう片方の左側のポケットに細い縄があることを確認して、深呼吸をした。



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