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二宮浩太郎の独断推理ノート 〜高校生探偵の推理〜  作者: スズキ
最終話 「最後のあいさつ」 VS名門女子校生徒会役員/澄川涼香
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四・静かな企み



 磯見と別れたあと、涼香は生徒会室へ行った。部屋を開けると、役員である琴音、瑠衣、冷夏の三人が居た。部屋に入ってきた涼香に最初に気が付いたのは瑠衣だった。


「あっ、やっと来た。今までどこに居たのよ」


「図書室へ返し忘れてた本があったので、遅れてしまいました。すいません」


「すいませんって、こっちは講演会の準備してんだよ」


「まあまあ、そんなに怒ることないでしょう」


 涼香に怒りをぶちまける瑠衣を琴音がなだめた。


「いえ、連絡の一つでも入れておくべきでした。以後、気を付けます」


「うん、気を付けてね」


 そう言われた涼香は自分の席に座り、隣の席に居る冷夏に話しかける。


「今、どんな状況?」


「講演会に呼ぶ警察の大川さんへの質問のリストを作るように頼まれたの。できればチェックしてくれない?」


 質問のリスト――質問された側が答えに困らないようにするために、あらかじめ質問の内容を決めてあるリストだ。


 冷夏は書記専用のノートパソコンの画面を見せた。その画面に表示されている文章を涼香は読む。


「一つ目、『刑事という職業でやりがいを感じるのはどの場面ですか?』二つ目……『天照女学院で過ごした三年間はどのように今の仕事へ活かされていますか?』……へえ、この人うちの学校の卒業生なんだ」


 涼香の声に琴音が反応する。


「ええ、この学校の講演会は毎年OGの方から選ばれて、去年は作家だったんだけど、今年は趣向を変えて現職の刑事さんが選ばれたの」


「へえ。大川千尋警部補二十六歳……この若さで警部補?」


「警部補って、どれくらい偉いの?」


 瑠衣が疑問を投げかける。


「刑事ドラマを見る限り、現場ではそこそこ権力のある人みたいですけど」


「ふーん、それ位偉いのなら、キャリア採用されたか、単にその人がラッキーだったのかなあ」


「そりゃ前者でしょう。この学校の卒業生なんですから」


「どっちでもいいけど、このリストを見てくれない?」


 雑談が盛り上がる涼香と瑠衣の二人の間に冷夏が割り込む。


 あ、ごめん、と言って涼香はパソコンの画面に目を戻した。


「まあ、これなら問題は無いんじゃないかな。会長と副会長も見てください」


 琴音と瑠衣がパソコンの前に立って画面を見た。


「確かに、これなら大丈夫だと思うわ。河野さんはどう思う?」


「いや、ここは一つ、『好きな動物は?』と入れた方が良いんじゃないかな」


「分かりました、入れておきます」


 待てよ、これは――


 冷夏がキーボードで瑠衣が提案した内容を入力した後、マウスを操作して、データの上書き保存のアイコンをクリックした。


「これで大丈夫でしょうか」


「うん、これで大川さんにメールで送ってください」


 琴音がそう言うと、冷夏はコピー・ペースト機能を使って電子メールを作製し、大川千尋のパソコンに送信した。


「じゃあ、この文章を印刷室で十五部ほど印刷してくれないかしら」


「了解です。じゃあ、行ってきます」


「あ……ちょっと待って」


 冷夏が席を立つと、涼香は声を出した。


「私も冷夏と一緒に行ってきます」


 涼香は琴音たちに何でもない顔をしながら、これはうまく行けるかもしれないと頭の中に一つのアイディアが思い浮かべていた。


「……? まあ、いいけど」


 涼香の企みに気付かない琴音は、少々違和感を感じながら返事をした。


「では行ってきます」


 ノートパソコンと、それに付いているマウスを持った冷夏と涼香は生徒会室を出て、印刷室へ向かった。廊下を歩いている間、二人は退屈しのぎに雑談をした。


「マウスも持ってきてるけど、パソコンのタッチパッド使わないの」


「うーん、あれ、どうもあたしには合わないみたいなんだよねえ。涼香ちゃんは使えるの?」


「ノートパソコンを使うときはタッチパッド派だけど」


「よくあんなの使えるね、マウスの方が使いやすいのに」


 話をしている内に、印刷室の前へ来た。部屋に入ると、そこには業務用の大型のプリンターがあった。


「このコードにパソコンを繋げて、印刷のアイコンをポチっと……」


「あ、じゃあこの後は私が紙を持っていくから、冷夏は先に生徒会室へ戻ってていいよ」


「え、いいよそんなの」


「まあいいから。今日、生徒会に出るの遅れちゃったからその分、仕事をしておきたくてさ」


「じゃあ、頼んだよ」


 そう言って冷夏は生徒会室から出ていった。


 その姿を見届けた涼香は短時間で練り上げた、升野日沙里の殺害計画における一番最初の作業を始めた。



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