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二宮浩太郎の独断推理ノート 〜高校生探偵の推理〜  作者: スズキ
第三話 「完璧すぎたアリバイ」 VS人気生配信者/堀部唯
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六・夜食はバーガー



 放送開始三十分前の午前零時三十分。いつもなら期待に胸躍らせているのに、今夜の唯は妙な不安と、苛々が混じった気分で機材の準備をしていた。


 全く、自分から来たいと言った癖に、まだ来てないとは一体どういう事なんだろう。まあ、いっそのこと来ないでくれたら有難いのだが。


 そんなことを考えながらもうかなりの時間が経った。そして午前零時四十七分。玄関のチャイムが鳴る音が聞こえた。


 唯は部屋を出て、玄関の扉を開けた。玄関には紙袋を持った二宮の姿があった。


「遅かったじゃない」


「いやあ、すいません。仮眠してたら寝過ごしちゃって」


「とにかく、今準備中だから邪魔しないでね」


「判りました。ではお邪魔します」


 そう言って二宮は家へ入り、唯に連れられて彼女の部屋に入った。部屋に入るまでに二宮は唯に話をした。


「午前中、いや昨日会った時と比べて随分とキャラクターが違いますね。やっぱり、お父様が居なくなって、自分らしくやっていこうと思ったんですか」


 唯はそれを聞いて、そうだろうねと呟いた。


 部屋に入った二宮は唯のベッドの上に紙袋を置いて座った。


「その紙袋は何」


 唯は紙袋を指差して言った。


「マックでバーガーを買ってきました。日付変更時刻を過ぎても、まだ朝マックにはならないようです。初めて知りました」


 二宮はそう言って、紙袋からバーガーやドリンクを出し始めた。


「ええとですね、バーガー類はビックマック、ダブルチーズバーガー、てりやきマックバーガー、フィレオフィッシュ。サイドメニューにマックフライポテトとチキンマックナゲット。ドリンクにスプライトとプレミアムローストコーヒーです」


 机の上に出した大量のバーガーとサイドメニューを見て、唯は呆然とした。


「買いすぎなんじゃない?」


「あなたの好みが判らなかったので、色々買ってきちゃいました」


 唯はバーガー類からフィレオフィッシュ、サイドメニューにポテト、ドリンクからはコーヒーを選んだ。


「じゃあ、僕はてりやきマックバーガーとチキンマックナゲットとスプライトですね。ええっと……」


 二宮は残ったビックマックとダブルチーズバーガーを見て、困った顔をした。


「残ったやつは朝ごはんにでもしましょうか」


 二宮はそう言って、包み紙を開いてバーガーを食べ始めた。


 フィレオフィッシュを片付けた唯は、コーヒーを飲みながら、レポート用紙に書いた進行スケジュールを読んだ。


「あの、何を読んでいるんですか」


「二宮さん」


「はい」


「人に話しかける時は、口にあるものを喉に流し込んでからにして」


 そう言われた二宮は、あ、すいません、と言って口の中にあるバーガーを呑み込んだ。


「で、その紙には何て書いてあるんですか」


 聞かれた唯は二宮に侵攻スケジュールを渡した。


「今日の放送の進行スケジュール。一応二宮さんも読んでおいて」


「どうも」


 二宮は返事をして、渡されたスケジュールを黙読し始めた。


 零時五十六分、そろそろスタンバイをしなければ。唯はヘッドホンと仮面を顔に付けた。


「昨日の放送、拝見しました」


 二宮がスプライトを飲みながら、放送の開始時刻の設定をしている唯に声を掛かけた。


「それはありがとう」


「しかしまあ凄いですね、三時間もずっと休まずに喋りっぱなしなんて。僕には到底真似できません」


「最初はちょっときつかったけど、慣れれば結構楽しいわ」


「そうですか、大したものです」


 零時五十七分、開始三分前、唯は予告のツイートをした。


「そういえば、お父様が睡眠薬を飲んだ時刻と昨日の放送の時刻、丁度重なっていますね」


 それを聞いた唯は心の中でガッツポーズをした。予想通りの質問だ。


「言われてみれば、確かに」


 唯は不自然に思われないように、素っ気ない返事をした。


「しかし言い方は悪いですが、お父様が睡眠薬で自殺したのはあなたにとってラッキーでしたね」


「確かに父が死んで晴れ晴れとした気分だけど」


「そうじゃなくて、もし自殺の方法が切腹とかだったら父親殺しと疑われていた所ですから。いや、しかし……」


「そう、二宮さんも判っている通り、わたし、父が自殺した時放送でずっとこの部屋に居たのよ。どのみち心配する必要無かったわね」


 唯はそう言って時計を見た。もう開始三十秒前だ。


「さて、もう始まるから静かにしててね」


「ああ、始まる前に一つ聞いておきたいことが」


「ストップ、そこまで」


 唯が二宮の話を遮った。


「開始十秒前、絶対に邪魔しないでね。数千人が見るんだから」


 やや脅し気味に言われた二宮は、部屋の片隅に逃げ込んだ。



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