二宮浩太郎からの挑戦状 其の二
日が落ち、夕日が街を照らす頃、大川千尋はある喫茶店を訪ねた。千尋がここを訪れた理由は、ある人物に呼ばれたからだ。
千尋が店に入ると、中には彼女を呼び出した張本人である二宮が居た。席に座ってペペロンチーノを食べている。
千尋はペペロンチーノを食べている二宮の所へ向かい、彼の席の隣に座る。
「人に雑用を押し付けていながらこんな所でのんびりとくつろぐだなんて、いいご身分なことね」
毒を吐く千尋を気にも留めず、二宮は食事を続けた。
「……それ、何?」
「見てわかるでしょう。ペペロンチーノです」
「なんで甘いものがありそうな喫茶店でそんな辛い物を……」
「さっきスーパーで買ったソフトクリームが、あんまりにも甘かったもんだから」
「いや、キミ確かあの家で勝手に明太子食べてたよね?」
「まあそんな事は良いから。頼んだアレ、教えてくれません?」
千尋は自分の鞄からファイルに挟んだ紙を二宮の前に出した。
「全部あんたの予想通り。詳しいことは自分で読んどいてよ」
ペペロンチーノを食べ終わった二宮は、渡されたファイルの中身を覗いた。
「知ってる? あの作家クン、彼女持ちなんだって」
「知ってます……あ、店員さん、注文します」
二宮が店員を呼ぶと、女性店員が来た。
「注文は」
「コーヒーフロート、グラノーラのトッピングでね」
「二百円です」
二宮が店員に小銭を渡すと、店員はレジへ行った。
「辛い物、甘い物、辛い物、甘い物……って、こんなの悪循環だって。体悪くするよ」
注文をした二宮に千尋は突っ込みを入れた。
「人の食べる物のチョイスなんてどうでもいいでしょう」
「そりゃまあ、そうだけどさ」
千尋がはあ、と溜息をついて二宮を見る。
「で、話を戻すけど作家クンの彼女の件なんだけど、お相手も彼と同じく高校生作家なんだとか」
「……作家?」
「あれ、そこまでは知らなかったの? 倉石京佳ってコで、作家クンと同じくかなりの人気作家なんだって」
千尋が携帯電話を出し、二宮に画面を見せた。
「ほら、”高校生作家カップル、ラブコメ顔負けの恋愛中”だって。モテるんだね、作家って」
「……」
……さて、今回の事件で最も重要なのは、極英フミヤと被害者との関係性です。一見繋がりが見えないこの二人、しかし現場には彼らの関係を暗示する証拠がちらほらと。
その証拠の一つがこの大川さんに調べてもらったこの”カルテ”、これが被害者の素性を明かしてくれます。
そしてとどめに……ここは一つ、極英に罠を掛けてみましょう。彼を自白に追い込むこの罠、仕掛けるのは明日の朝。
これが何を意味するか、もうお分かりですね? 二宮浩太郎でした。