それぞれ
「これからどうするのー?」
蜻蛉の質問に少し考えてからエニシは答えた。
「、、、とにかく兎を、、探すかな?」
「兎ねぇー。美味いのかな~」
ワニの人形みたいな見た目だが涎は出るらしく目を輝かせて言った。
「さあ?でも、僕もお腹空いたよ。」
「別に食べなくても平気じゃん~エニシたちは。死んでるんだしー」
「まあね。でも、人は欲望に抗えないんだよ。蜻蛉。」
「何でさぁ?」
「欲望あっての人だからさ。」
「大変だね~人って。」
「僕もそう思うよ。」
エニシと蜻蛉が雑談しているとエニシが前にあるものに気付いて足を止める。
「これって、もしかして、、」
「嗚呼。俺っちは一人かー帰ってもいいけど後で怒られたくないしなー」
アマツは後頭部に両手をあてて不満を漏らした。
「てか、この洞窟何処まで続くのー。暇」
そう言うとポケットから折り畳み式の携帯を出し片手で開けると耳にあてた。黒がベースで一本黄色線が入ってる携帯だ。
「もしもしー姫さん?あっ出た。ちょいと暇なのー話相手になってくれない?えー素っ気ないなー、俺っちの管理者でしょ。構ってよーえっ嘘、切らないでー!」
アマツは声を反響させながら電話をしていた。だが、相手の声は聞こえず傍から見ると携帯を耳にあてデカイ声で独り言を言ってる人だ。つまり世間で言うヤバイやつとなる。
「ふぅー切られなくて良かった。え、な、何でもないよ?うん、そうそう。エニシが松明持ってるから。えっ俺っちなら無くても大丈夫だって?いやー嬉しいなー俺っち誉めらて伸びるタイプだから。え?そんなこと言ってないって?またまたー」
アマツは松明を持っておらず携帯の僅かの光で道順を判断していた。
「面白い話?少しは面白い話をしてみろ?んーそうだなー」
考えるニュアンスの言葉を言うが顔をあまり悩んでなく、むしろ楽しそうに笑っていた。
「あっそうだ!今日のことなんだけど~エニシに鈴鹿さんが仕事頼むときが凄く面白かったなーあの人いつも落ち着いてるつーか表情筋が仕事してない人じゃん?まあエニシと似たような感じ?」
居ないことをいいことに好き勝手に言い放題のアマツだった。
「だけど今日は眉間に皺寄せて頑張っていたねーえ?知ってる?眉間に皺寄せてるのはいつものこと?ハハそれはあの人の目つきの悪さの問題。、、まぁ、でも」
そこまで言うとおちゃらけていた雰囲気がなくなり空気がピリッと締まった。
「鈴鹿さんとエニシ付き合い長いからな。変わるんだよね、あの人も。・・・なーんてね」
しんとなった空気だったがアマツが笑うと緊張感がなくなり元に戻った。
「えっ?前?」
すると話し相手が前を見ることを指示したらしくアマツは目を凝らす。
「んー?見えないよー?生きてるもの?だったら暗くても気配で分かるけどー」
止まることなく歩くとアマツはあるものが目に留まった。
「あっ地面になんかある。って人?」
人が一人地面に倒れていた。うつ伏せになっており生きているか分からない状態だった。だが、アマツは顔色を変えることなく近付く。そして、指先でつんつんと呼び掛ける。
「おーい。元気ー?」
如何にも寝てるわけではない人に向かって元気と聞くのは常識的ではないがツッコミ役が居なかった。
「姫さんーこいつやっぱり調査団のやつじゃね?ほらここにバッジがある」
仰向けにして胸ポケットにあるバッジを指差す。倒れていたのは二十代後半ぐらいの男だった。アマツは首と耳で携帯を器用に固定し両手で男の服を漁っている。男の服は冒険をしています!と主張をしているような服でポケットが沢山あった。暫く漁っていると男に変化があった。
「ん、う、」
「あっ起きたー?」
すかさずアマツが反応すると男は後退りした。
「うっわゎゎー出たー!!」
「えーと?大丈夫?君。元気、だよね?」
アマツが言うと男は意識がしっかりしたのか呼吸が落ち着いてきた。
「はぁはぁ。え、あ、兎じゃない。・・だ、だれだ?」
「兎?俺っちが兎みたいに可愛いってこと?知ってるー何、姫?早く進めろ?はいはいー」
まだ恐怖が消えていない男と目を合わせた。そして、ニコリと笑うと恭しく中世の貴族を思わせるような礼をした。
「今晩はー俺っちは時計塔の者ですー君は調査団の人?」
「と、時計塔。俺は、、助かったのか、、?」
「そうだねー君が調査団だったらねー」
質問を答えない男にアマツは嫌みな言い方で返した。
「へ?あ!俺は調査団だ!調査団のナオ!」
「ナオくんね。別に名はどうでもいいけど。じゃあやっぱりこっちがハズレであっちは当たりかー」