仕事
「リン、仕事終わったよ。」
エニシはリンと呼ぶその死んだような男に声をかける。
「、、、、、、ん、ご苦労」
何テンポか遅れてその男は返事した。
「鈴鹿~また徹夜ー?いやぁ責任者様は忙しいねぇ。」
蜻蛉は茶化すような口振りで鈴鹿を労った。
「あー、鈴鹿さん五徹だったらしくてちょっと寝かしてあげて。」
アマツは雑誌に目線をおきながらも鈴鹿の代わりに返事をした。
「言うだけ言えば~?エニシがあとで報告してないって言われても言いました!って言えるじゃん。」
「うん、そうだね。」
「、、それって駄目なやつじゃん。」
アマツは正論を述べるが聞くエニシでもなくそれ以上反対するアマツでもなかった。
「新しい子“時計塔”入ること決定したよ。」
「したーしたー」
「ミサキちゃんだけ?可愛い子だといいなー。何支部に入るのー?」
反応するのはやはりアマツだった。
「多分、、西か東。」
「うわっ!ヤな所じゃん。西とか無理だね。俺っちあんな所じゃ死んじゃう~」
「.....」
「あ!エニシ今それも良いかもとか思ったでしょ!」
「いや、別に。ただ、」
「ただー?」
「西に連れて行こうかなって思った。」
「ひっど!」
ギャアギャア騒いでると(主にアマツだが)むくっと鈴鹿が顔を上げる。
「、、寝れない」
「あー!起きたぁー」
先に気付いたのは蜻蛉だった。
「、、おかえり」
「ただいま」
エニシが言うとすかさずアマツが叫んだ。
「あー贔屓だー!俺っちには嫌々ただいまって言うのに~」
「アマツのはなんか腹立つから。」
「あれだね、差別じゃなくて区別だ!ってやつ」
蜻蛉が言うとアマツが文句を言う前に鈴鹿が言った。
「眠い。」
鈴鹿は立ち上がると両手を上に上げたり軽く柔軟した。背は高く手は天井にぎりぎりつかない程度だ。学ランみたいな服を着ているが歳は分からない。二十歳と言われても納得でき、三十路と言われてもあぁとなる見た目だ。また、腰に日本刀をさげていた。
「入ったのか?」
「うん、南ではないよ。」
「アキの所だろ」
「そうだね。」
そこまで話すと鈴鹿の眉間に皺がよった。ほんの少しよっただけでよく見てないないと気がつかない程度だった。
「疲れたな。」
「?まぁ、そこそこ。」
エニシは意図が読めず困惑しながら答えた。
「これから夜になるよな?」
「は?」
アマツは話す機会がなく黙って雑誌を読んでいたが何やら面白い展開になってきたと思い聞き耳を立てる。
「いや、寝る時間だと思って。」
「はぁ?」
「、、、、依頼、もう一件」
「嫌。」
エニシは速答だった。
「俺は、眠い。」
「僕も眠い。」
終わりそうもないこの攻防戦に鈴鹿が奥の手に出た。
「あまてらすのケーキ」
エニシの目の色が変わった。
「いくつ?」
「食べたいだけ」
「行ってきます。」
エニシは書類を鈴鹿から貰うとすぐに依頼のあった場所へと向かった。
事務所を出る前にぼそっと蜻蛉が言った。
「ちょろいよ~俺のご主人」