気分
空はどんよりと雨雲が覆って時間帯が分からない。今にも降りそうだが傘を持っている人は居ない。そもそも人が居なく住んでる気配も無かった。また、ビルは沢山あるがどれもまともに建っておらず今にも崩れそうだ。窓は殆ど割れている。まさに崩壊都市を再現した場所だ。そんなビルとビルの間の大通りを歩いている者がいた。コツコツと靴を鳴らしながら歩いていた。中性的な顔立ちで歳は15、6に見えるが顔に表情がないため更に上にも見える。肩にはワニのような縫いぐるみを乗せてあるが、顔と合っていなくいかにも不審者だ。不気味なその人物は、歌を口ずさんでいた。
「ん~~♪」
「よっ!流石エニシ。上手いねぇー」
エニシと呼ばれたその人物にワニの縫いぐるみは合いの手を入れる。
「ありがと蜻蛉。でも、歌詞を忘れたから適当なんだ。」
「エニシは忘れぽっいもんねー」
「んー、そうかも」
エニシと蜻蛉と呼ばれたワニの縫いぐるみは会話をしながら一つのビルへと入っていく。
「続きは歌わないのー?」
蜻蛉は尋ねた。
「気が向いたらかな?まあ、でも」
階段を上り、何階か過ぎるとエニシは上るのをやめ廊下を歩く。
「でも?」
少しするとドアが見えエニシはドアノブに手をかけた。
「そうだな。歌詞を思い出したら歌うよ」
ドアを開ける。
「あっ!おっかえりーー!」
テンションの高い声がエニシたちを迎える。
「ただいま~」
蜻蛉だけ返した。
「エニシはー?俺っち悲しい~」
「、、ただいまアマツ。」
相変わらずドライなと小声で文句を言うアマツと呼ばれた少年。歳はエニシより少し上に見える。事務用の椅子に持たれ、雑誌を片手に寛いでいた。
部屋の中は事務所を思わせるただ住まいだがソファーや本棚など私物らしきものが沢山置かれている。
「アマツ、ナツキは?」
「えっとー、確かさっき出てと思うけど。急に仕事だとか。」
そこで一回切ると何か思いついたようにニヤリと笑う。
「何何エニシちゃんー?ナツキちゃんに用?可哀想に~ナツキちゃん。泣いて喜ぶだろうに。仕事かー」
さも可哀想と思ってない顔でエニシに言った。
「僕、その呼び方好きじゃない。」
「そこに反応?つまんないな~。で、本当の所何の用?」
「別に。ただちょっと頼みたい事があって。」
「ふ~ん。」
そこまで聞くとアマツは興味無くなったように視線を雑誌に戻した。
エニシも会話の終わりが分かると止まっていた足を動かした。一番窓側の所に他の机より大きめの机があり書類が沢山積まれていた。
そこには、人が死んだように机に突っ伏していた。エニシはそこに向かって歩く。