忘却
誤字脱字の指摘宜しくお願いします。
「貴女は自分の名を知ってますか?」
「はい?」
この人は話の流れというものを知っているのかと心の中で悪態をついた。
「名です。質問を変えます。名を覚えてますか?」
失礼なことには変わってないと思いながらも答えようとした。
「私は、えっ、と、あれ?」
だけど、言うにも思い出せなかった。
「キリシマミサキ。」
「っ!それです!」
言われた思い出した。いや、気付いた方が正しい言い回しだった。
「隠世では、現世の名は忘れてもらいます。ですから、貴女はミサキです。意味のないただのミサキです。」
そう言われると私はずっと前からミサキだった気がした。そこで、私はふと思った。
「あの、あなたの名前は何ですか?」
「僕はエニシと言います。」
その瞬間その人の顔がはっきりとし、私はさっきまでその人を認識してなかったことに気付いた。
エニシ、という名前の人は何というか凄く印象的な人だった。
「、、、、あのもう一つ質問しても?」
「どうぞ。」
「その、、肩に居るものは?」
エニシさんは、肩にオモチャ売り場で売ってそうなワニの縫いぐるみを乗せてた。
「ワニの縫いぐるみです。」
「、、、、、」
「冗談です。」
「(、、冗談)」
この人の目の前で泣いていた私は何だったんだろうと思った。
「これは管理者といいます。私たち隠世の者を管理または手助けをしてくれます。挨拶、蜻蛉。」
エニシさんがそう言うとワニの口が動いた。
「ミサキだっけ?今晩はー」
「こ、今晩は。」
「蜻蛉って言うの俺ー、宜しくー」
緊張感がないというかエニシさんとは正反対な印象だった。
「貴女にも管理者が付きます。」
「えっ!」
「何その反応ー。別に俺とは限らないよ~」
エニシさんは、蜻蛉さんを一瞥すると私の方を向いて言った。
「では、説明は以上です。」
「こ、これだけ?」
「あとは、貴女の教育係に聞いて下さい。」
この人、実は面倒臭いだけじゃ、、私はそう思いながらも従うことにした。
「では、また会いましょう。」
「あ、はい。、、?コーヒーカップ?」
気付いたら私はコーヒーカップの中に居た。エニシさんは乗っておらず、柵の外側に居た。
「そういえば、此処遊園地だった。」
衝撃的な事が有りすぎて忘れていた。ハンドルを私は触れていないのに回っていた。
「っていうか速くなっていく気がするー!」
コーヒーカップの中央にあるハンドルは音を立てながら加速していく。
「わ、私こういうの無理なんですー!いやぁぁあぁあ!!」
必死に拒否を訴えたがやはりエニシさんの表情は変わらなかった。
「あの、一つ言い忘れてました。」
「今ーー!それどころじゃないでーーーすぅー!」
エニシさんが何処に居るかも分からない状況だった。
「大事なことなので、一応。漢字の名の人には関わらない方が良いですよ。」
「な、何故ですかぁーー?」
ついそう聞いてしまった。
「それがルール。ただそれだけです。」
返ってきたのは答えになっていない答えだった。
「、、ん?でも、蜻蛉さんって」
蜻蛉さんって漢字ですよね?そう聞こうとした。だが、その前にコーヒーカップの速度が私の言葉をかき消した。私の意識もそこで消えた。