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北風小僧の寒太郎

作者: 山本山

季節の変わり。

もうすっかり夏置き去りに、町の匂いが変わった。

いや、秋の虫の音の後ろで、未だ小さく鳴く蝉の声がある。生き辛そうだ。

そんな中、冷たい風が町を駆ける、季節はもう秋である。


北風小僧の寒太郎が、吹きぬいて行ったお話し。


北風の小僧に、寒太郎というのがいた。

この監太郎、気ままにあっちの家のこっちの部屋、そっちの家のあっちの部屋と吹き抜けて行く。


寒太郎がいつもの様に気ままそのまま気の向くままに吹いているとその日、突然の雨が来た。


雨は湿っぽくていけない。

寒太郎は山越えの空っ風。


雨宿りすることにした。



雨はもうじき来る。



ふと見ると、寒太郎の知っている女の子が、傘を持たず街角に立っていた。


寒太郎はこの子を知っていた。何といっても風である。自由にあちこち吹いて回る。寒太郎はこの子をよく知っていた。

覗いて回っていたから。


寒太郎はその日もあちこち吹いて回り疲れていた。疲れていたけれどこのままではあの子は雨に濡れてしまう。


寒太郎は空っ風だから、濡れるのは嫌だった。


空は、待ってくれない。



寒太郎は女の子の少し斜め前、女の子の空の上に吹いた。


雨は降って来た。





女の子は悩んでいた。


引っ越しの予定があった。だけどこの部屋が好きだった。狭いながらも風が心地良いのだ。


あの時もこの時も、辛い時、楽しい時、この部屋で風が吹いていた。





そうしてその日、女の子は濡れる事無く部屋まで帰った。




次の日も、女の子は傘を持たなかった。


寒太郎は女の子の頭上で吹いた。



次の日も次の日も



ある日寒太郎が少し疲れて女の子の前を横切ってしまうまで

女の子は気が付かなかった。

雨に濡れないのはたまたまでは無く、そこに吹く風があったという事に。



女の子引越しをする理由が沢山あったけれど

少し引っ越しを延ばした。


今でも、時々気紛れに吹いて来る風に話し掛けている。












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