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八つ目の不思議

 幽霊を見たのはこれが初めてじゃないし、慣れてるつもりだけどやっぱり少し身構える自分がいる。

 けど幽霊にも色々あって、怖いものと怖くないものがある。

この少女はもちろん後者だ。とてもじゃないが、害があるようには見えない。それを証拠に、少女の方がむしろ驚いたように大きな瞳で僕を見つめている。


「……せ」


 少女が何かを呟いたようだった、がよくは聞き取れなかった。

 なるほど、どうやら会話は出来そうだ。


「何をしにきたんだい?」


 もう一度、刺激しないように僕は尋ねた。

 とはいえ幽霊だ。次の瞬間鬼のような顔で僕を怖がらせるとも限らない。だからなるだけ僕は君の味方だよという雰囲気づくりに努めた。

 想いが通じたのか分からないが、少女はほんの少しだけ頬を緩ませた。

 

「……八つ目の不思議……」


 か細い声だったが、少女は確かにそう言った。


「八つ目の不思議?」

「……はい……」


 一瞬何の事だか分からなかった。だが、すぐにああと思い当たった。それはどの学校にも共通に存在している伝説というか、逸話というか。まことしやかに語られたり、おもしろおかしく脚色されたりするもの。そしてそれは僕の知る限り、数を一つ減らす必要があるものだ。


「七不思議かい?」


 僕がそう言うと、少女はんんーと首を傾げながら頷いた。どうやら半分当たりで半分ハズレのようだ。

 すると、少女はポケットの中に手を突っ込み何かを取り出した。小さな手に握られていたのは一枚の小さな紙だった。

 幽霊もメモなんてとるんだなと思いながら、僕はその紙を受け取り目を凝らして見てみるが、いかんせん暗くてよく見えない。結局僕が「何だいこれ?」と尋ねると、


「この学校の七不思議です……」


 と言った。じゃあ合ってるじゃないかと思った僕の気持ちを見透かしてか、少女はすぐに一言加えた。


「七不思議を見つけたら、八つ目の不思議に出会える……」


 なるほど、そういうパターンか。

 ようやく僕にも意味が分かった。


「つまり、ここに書かれた七不思議を全て確認すれば、隠された八つ目の不思議に出会えるってわけか」

「……はい」


 少女の行動目的は分かった。

 という事はこの少女は生前何かこの学校の七不思議に未練でもあったのだろうか。

 目的を遂げられなかった魂が、いまだに彷徨い不思議を巡る。

 んー何とも切ないものを感じる。


「分かった。じゃあ先生も手伝おう」

「……え?」


 少女は再び驚いた顔をして見せる。

 幽霊だろうと何だろうと、困った子供を見過ごすわけにはいかない。

 それが先生としての務めだ。


「じゃあ、どれから行こうか?」


 そう言うと、少女は再び控えめに笑った。


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