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第八話 vs師匠

間開けすぎてしまいました・・・。ガフ・・・。

「それじゃ、先手必勝ってね。炎神よ、焼き払え『炎球』!」


 師匠が初っ端から詠唱短縮した『炎球』に、無詠唱の『水球』で対抗する。それなりに魔力を込めていたが、水と炎という属性の相性がなかったかのように同時に消える。ということは、あの『炎球』は水を蒸発させる程度の熱量を発せるように魔力を込めてあったようだ。ってか、それ下手すると大やけどじゃねえか殺す気かよ。


「むっ、『水球』と相殺されたか。それなりに魔力を込めてたのに・・・やるねえ」

「普通に当たってたら痛いじゃすまない怪我じゃないですか」


 何でもないように言う師匠に俺は呆れた声で返す。わからないとでも思ったか。


「ま、次はこれかな。炎神よ、仇なす敵を焼き尽くせ、『豪炎』!」

「・・・『濁流』」


 今度師匠が撃ってきたのは、短縮詠唱の、上級炎属性魔法『豪炎』。生半可な家程度なら燃やし尽くすことのできる火力を持つ魔法である。もっとも、この魔練館は防御魔法もかかっているので、燃えはしないだろうけども。直後に俺が発動したのは、上級水属性魔法『濁流』勢いの強い水流を生み出しすべてを流しつくす魔法である。もちろん、水は大気中の水素や、魔力から生み出されている。


 どばどばと中空から出現する『濁流』が全てを押し流すように師匠に迫る。


「風神よ、我に飛ぶ力を!『飛行』」


 しかし、師匠は中級風属性魔法『飛行』を使用し空中に避難する。


「まさか、『濁流』とはね・・・ボクごと魔練館を流す気かい?」

「そんなわけないじゃないですか。そもそも、この魔練館にかけられてる魔法は超級魔法までなら無効化できるんでしょ?なら流れないじゃないですか」

「まあ、そうなんだけどね。・・・あれ?超級まで耐えれるとか言ったっけ」


 ギクリ。


「ほ、ほら前に師匠がワインで酔った時に言ってましたよ!」

「・・・あり?そうだっけ?」


 師匠は悪酔いするタイプである。俗に言う絡み酒であるし、笑いジョウドであるし、泣き酒でもある。・・・つまり、超絶めんどくさい。まあ、酔った拍子にいろいろポロッタリもする。しかもその記憶はないので安心だ。


 ・・・つまるところ一回、体育館に超級魔法をぶち込んでみたら見事に吸収されたから超級魔法の無効化能力を知っているだけなのだが。これでも師匠は自分の屋敷に物凄く愛着を持っている。だから、花瓶一つ割るだけですっごい怖い。だから、バレルのはまずい。・・・まあ、そういうことに関してもクーには甘いんだが。


「さ、さて、次はこっちからいきますよ!」

「え!?ちょ、ま!!」


 考え込んでいる師匠の隙を突き、三つほど『炎球』を生み出し、師匠に放つ。それを師匠は空中でかわし俺に向かって『豪炎』を放ってくる。


「風神ザグリースよ、我が前の障害を吹き散らしたまえ、『風衝』!!」


 そこに敢えて(・・・)詠唱しながら中級風属性魔法『風衝』を放つ。当然ながら、猛々しく燃える炎に生半可な風を送り込めば、さらに燃えるのは確かだ。


「なっ!?何やってんのさ!?自殺行為だよ!?」


 そう言って焦る師匠の声が聞こえるが、すでに俺は炎の中から抜けだしていた。詠唱で発動した『風衝』とともに、無詠唱で発動した中級闇属性魔法『隠密』、及び俺のオリジナル魔法『光学迷彩』により師匠には気付かれないまま背後を取る。


「ここっ!」


そして、師匠の背中に今度は無詠唱で『風衝』を放つ。しかし、直前で師匠は気付いて前に出る。おかげで威力は少し下がってしまったが。


「今のに対応しますか?」

「ふっ、ボクは天才だからね!」


気配を薄くする『隠密』に見えなくなる『光学迷彩』の組み合わせだってのに全く。本当に勘が鋭い。

 師匠は、空中で体制を建て直しこちらを見据える。まだ、魔法の効果は続いているってのに、見えてるかのように。まったく。


「でも、気配を消す魔法ならまだしも、姿を消す魔法なんてものもあるんだね」

「・・・一応、俺のオリジナルで人前では初公開のはずなんですけどね。よく見抜きますね」


 フラフラと左右へ揺れるとそれにあわせて師匠の目も揺れる。・・・完全に対応されたようだ。


「どうやって対応してるんですか」

「簡単な話さ。気配を消そうと姿を消そうと実態は消えない。なら、風をあたりに吹かせてみて何かにぶつかる感覚がしても何も見えなきゃそこがキミの居場所さ」


 早い話、ソナーとかそんな感じか。俺はそう納得して魔法を解く。かけっぱなしでは魔力の無駄遣いだからな。


「炎だけに特化してると思ってたんですけどね」

「確かに炎に特化してるけど、炎を勢いよく燃やすには空気を多く送り込むのも必要だからね。風属性は二番目に得意なのさ」


 自慢げにそう語る師匠に俺はげんなりとする。『燃える乙女《バーニング・ヴァルキリー》』、ヴァルキリーって呼ばれるのはもしかして空を飛べるくらいに風魔法も使いこなせるからか。


「考え事なんてしてる暇ないよ?炎神よ、仇なす敵を焼き尽くせ、『豪炎』!」


 ということは、正攻法ではうまくいかないか。


「ま、ここは一つ賭けと行くか」


 目の前に迫る『豪炎』を見据え、無詠唱で無属性上級魔法『反射障壁(リフレクター)』を発動する。すると、『リフレクター』は『豪炎』を吸収し、瞬間、ごっそりと俺の中から魔力が消えて、先ほどの倍の大きさになった『豪炎』が師匠の方へ向けて飛んでいく。


「な!?でかっ!!」


 師匠は大声を上げるが魔法は止まっちゃくれない。そのまま『豪炎』は師匠を飲み込むかに思えた・・・が、


「風神ザグリースよ、我が前の災厄を吹き払いたまえ!『大神風』!」


 俺の知らない風魔法が発動される。すると、それは師匠の眼前の『豪炎』を吹き晴らし、そのまま俺の方へ飛んでくる。


「・・・まじかよ!」


 それを見るよりも感覚で理解した俺は、地面を殴りつけ、土属性上級魔法『建造』を発動。これは簡単な小屋くらいなら作れる魔法であるが、俺はそれにありったけの魔力を込めてカマクラのような形のそれを作る。ただし、入り口も出口も存在しない引きこもる用のものである。


 そして、師匠の魔法と俺の魔法による建造物がぶつかる。がりがり・・・という外壁を削るような音を俺は聞きつつ次の行動を考える。


「・・・ちっ、今ので魔力はほぼ使い切った・・・。こうなれば・・・『水刃』で行くか?」


 ガリガリという音がさらに近くに来たように感じたとき、俺は行動を開始する。足に少量の魔力を込めて、ガリガリと音がするのとは逆方向の壁を蹴り破り外へと転がり出る。


「なっ!?」

「へぇ・・・出てきたね」


 すると、俺の目の前には師匠がいた。


「『水じ・・・』!!」

「ざ~んねん」


 俺が『水刃』を発動する瞬間、師匠はパチンと指を鳴らす。すると、火花が出た。その光は普通のそれよりも明るく俺は意識と目を奪われる。ハッと、我に返った瞬間見えたのは師匠が『風衝』を放っているところだった。


####


「・・・うん・・?」


 俺が目を開けるとそこは俺の部屋だった。いつの間にか寝てたのだろうか?


「おっ、目を覚ましたね」

「え・・?」


 声のした方へ顔を向けるとそこには師匠がいた。ベッドの傍へ椅子に腰かけて。


「もう少ししたらできるから待っておきたまえ」

「何がですか?」


 チラリと師匠の手元を見るとそこにはカットされたりんごがあった。それは皮の一部にスリットが入っている所謂、りんごうさぎというやつだった。


「ほら、口を開けて」


 そして、師匠はカットしたりんごをフォークにさしこちらへと差し出すそれに対して俺は口を大きく開けるとそこへりんごを突っ込む。


「むぐ!?」

「あはは!」


 いきなり突っ込まれたのにびっくりしつつ咀嚼していくとりんごの甘さが口の中に広がる。視界外の笑ってる女は無視して、俺は窓から外を見た。・・・暗かった。


「・・・あれ?師匠、俺って寝坊しました?」

「違うよ、キミは昼のボクとの試合でボクにノックアウトされたんだよ」

「・・・あ」


 師匠にそう言われて昨日の・・・ではなく昼の記憶がよみがえってくる。・・・というか


「師匠、途中で俺の知らない魔法使ってましたがあれ、なんですか?」

「え?・・・な、なんのことかな~?」


 なんか目をそらし始めた師匠を訝しみながら名前を思い出そうと苦心する。


「・・・えーっと、名前なんでしたっけ・・・えーっと、えーっと」

「い、いや、思い出さなくてもいいんじゃ・・・・・」

「ほら、『豪炎』を吹き飛ばした」

「あ、そうだ!ほらほらケインく・・・」

「『大神風』でしたっけ?」

「ふぐっ!?」


 そうそう、『大神風』。あれはとてつもない威力だったから忘れるはずもない。なにせ下手な水魔法でも逆に無効化してしまう『豪炎』をかき消してしまうほどの威力だったから。ただ、それが今や全属性の上級魔法を覚えているはずの俺が知らないのは不可思議だと思った。


「で、師匠。あの『大神風』はなんだったんですか?」

「え、えーっとね・・・」

「正直、俺もすべての上級魔法をマスターしたと思ってたんですが、あんなのは知らないです」

「あ、う~ん・・・」

「あ、もしかしてオリジナルですか?」

「う、ぐ・・・・」


 なんとか教えてもらおうと言葉を重ねていく途中、ふと師匠の様子がおかしいような気がした。・・・まさか、と一つの予想にたどり着く。


「まー、師匠は超スゴイですしオリジナル魔法の一つや二つ持ってると思いますよ!」

「・・・うう・・・」

「や、師匠ってば超絶スゴイですし。まさか、上級魔法だけで追い込められるとは本当に勉強になりました。魔法も使い方次第なんですね!」

「・・・うっ」

「いや~、ま、確かに俺はまだ四歳ですし知らない魔法も大量にあるでしょうし!」

「・・・うぅぅぅ・・・」

「まさか、試合の最初に上級までと制限していた師匠が超級とか使うはずないですし・・・ね」

「・・・ぅぅ」


 満面の笑みで師匠をあおること何分。ついに師匠はキレた。


「ううううう!!!仕方ないじゃないか!!!あんなでっかいの、超級じゃなきゃ消せないじゃないか!!!!!」

「・・・いや、そこは躱すなりなんなりしましょうよ?」

「ううううううう!!!!」

「実戦では制限がない・・・ですがね」

「うう・・・うええええん!!」


 ついに師匠が泣き出す事態になったのでこれ以上いじるのは危険かと思いつつ、泣きっ面の師匠に超級の魔導書の貸与を約束させてから使用人の人々に引き渡した。彼らも苦々しい顔をしていながらも「いじめてはいけませんよ」との軽い注意のみで終わったのは師匠が悪いとみんな分かっていたからだろう。


 まあ、それはともかくとして。


「ふははは・・・ついに見えたぞ魔導書よ。くふはははは!!!」


 時間巡り翌日。師匠は使用人たちにかなり絞られて真っ白になってたので師匠の訓練はなし。なので俺は魔導書を読み漁る決心をした。

 そんなわけで俺の個人部屋の机の上にはデンと大きな魔導書がある。名前は『炎の魔導書』。その名のとおり炎属性の魔法がたくさん載っている魔導書である。ちなみに著者は誰かは知らないがクレメンスとか言う名前らしい。魔法を教えてクレメンス!・・・なんちて。


 ちなみに、超級魔法とは結構種類が少ないらしく、目の前にデンと鎮座する百科事典を嘲笑うような量が信じられないが、それには初級からいろいろなレベルの魔法が含まれているからだ。・・・それにしてもかなり分厚いと思うのだが。中にはめちゃくちゃ長い詠唱を要する炎属性の魔法もあるらしい。パラパラっとみて分かった。


「ふーふーむ、色んな魔法があるんだな」


 俺も知ってる魔法から、俺の習った魔導書に載っているモノより程度の低い知らなかった魔法、そして魔法の理論とかも載ってる。くくく、我が脳内の記憶力が刺激される。


「え~っと、とりあえず載ってる超級魔法は『煉獄』、『爆炎陣』、『獄炎』・・・・ふむふむ。やっぱり攻撃的な魔法が多いよな。なんでかね?」


 俺はパラパラとそれをめくりながらふと思った疑問を口にした。よくよく見れば、ランクが上がるに連れて攻撃的な魔法が増えている。何故か?それはやはり、この世界・・・というより世界が弱肉強食であるからかもしれない。敵を多く撃滅できる魔法、あるいは強い敵すらも屠ってしまうほど強い魔法であればるほど難易度も高く、逆に日常に根付く極論魔法がなくてもできることは簡単なのかもしれない。


 ということは、だ。最高難易度の魔法は世界を何回も滅ぼせるのかもしれないな。本当に笑えない。


 ちなみに、今まで説明することがなかったことであるが、ここで簡単に魔法の難易度分けについて語っておこうと思う。


 簡単な方から、初級(下級)、中級、上級、超級、天級、災級、神級である。・・・とは言えど、普通の魔法使い的には、上級まで行ったら才能ある魔法使いなのだとか。超級とかそれ以上行くのは才能とかいうよりは神の祝福レベルらしい。つまり、師匠とかはそのレベルだということだ。しかし、そんな師匠ですら王宮魔法使いの筆頭ではないというのだから恐れ入る。


 というのも、筆頭王宮魔法使いは使える魔法のレベルが高い・・・もしくは模擬選で最も良い成績を収めた人物が任命される。まあ、メインが王族の警護などなのだからそれは当たり前っちゃあ当たり前である。とは言えど、師匠は副筆頭というか、サブリーダーというか・・・次席?みたいなものらしいが。


 ・・・え?そんなのに勝てるわけないじゃんって?そりゃ、普通に考えればそうだけれど、普段の生活見てるとなんか行けそうな感じがするんだよなあ。まあ、気のせいだったが。そりゃそうだ。こんな四歳児にあっさり負けてる魔法使いがこの王国で二番目に強いだなんて、王族の守りがゆるゆるじゃないか。それがたとえ、使わないと言った超級魔法によるものでも、実戦では制限なんてかけるほうが馬鹿なのだ。


 まあ、それはさておき、今は目の前の魔導書だ。正直な話、文字は読めるようになったといえど元の世界と言い回しが違ったり、なまじっか科学と魔法という世界の中心となる技術が異なることもあるので、元の世界には存在ししない言葉もあったりするから辞書が必要だったりするんだが・・・手元にないんだよな。ま、存在するかもしらないんだが。図書館とかにならあるかもしれないな。・・・もっとも、その図書館すらあるかも知らないのだが。


「・・・仕方ない。知らない言葉は師匠に聞き出すとかしよう。とりあえずはメモかな」


 この世界は製紙技術がそこまで発達しているわけではないので紙は貴重ではあるが、貧乏貴族よりか金を持っている王宮魔法使いの師匠であるのでまあ、黒板とチョーク的な何度も書き直しできたりする書きグッズはある。問題はでかすぎるために部屋から移動できないことなのだが・・・ふむ、製紙技術か。


「製紙技術、ねえ・・・。見たところ、この本に使われてる紙はどこだっけ・・・西洋のどっかで昔使われていたものだっけ?・・・っつーことはそれくらいの製紙技術はあるわけか。大規模な製紙工場でも作ればいいんじゃないかね?・・・・ふう、そんな知識ないけどな」


 どこかに元の世界の製紙技術のことを知ってる奴でもいないかな~ってね。はあ。


「無い物ねだりなんかしてる暇はない。さっさと覚えよっと・・・って」


 チラリと周りを見渡す。そこにあるのはちょっと少ないかなって程度の家具と机と黒板(+チョークセット)とベッドのある我が部屋。とても・・・魔法の練習に向いてるとは思えないな。魔力を体に巡らせる訓練くらいならできそうだが・・・。


「魔練館なら超級使ってもブッ飛ばさないみたいだし、そこ借りるか」


 そうと決まれば。ガチャリと部屋のドアを開ける。すると


「あああ・・・・・・ケ・・・イ・・・・ン・・・・」


 バタンとドアを閉める。


 おかしいな。今、ドアを開けたら死にかけのような真っ白な師匠がいた。今師匠は引きこもりまっさかりだったはずだ。


 再度開ける。


「あ・・・ああ・・・・・ああ・・・・ケ・・・」


 バタン。


「いやあれ誰だよ!?」


 虚ろな目をした燃え尽きた感ある師匠に似た誰かがいた。・・・いや、師匠か。


「一体何があったんだよ!?」


 そう言いながら扉を開ける。すると、師匠は床に伸びていた。


「師匠ーーーーーーーっ!!!!」


####


 その後、師匠はメイド・執事部隊に運ばれていった。どうしてあんなことになったのか俺は知らない。ただ、連れていかれるまでが大変で、メイド・執事部隊に引き渡そうとする俺と、引き渡されたくない師匠による仁義なき争いが繰り広げられた。二日連続で戦うハメになるとは。おかげで、現在の俺の顔にはひっかき傷だらけである。イケメン顔になんてことしやがる・・・と顔をしかめると傷が痛む。あいたたた・・・。


 お蔭で、魔練館を使いたいといったときにクリフにかるくチョップされしかもそれがミミズばれをおかしていたところなので痛みに転げまわったら今日は禁止された。はあ。まあ、いいか。と俺は思う。時間ならまだまだある。なんて言ったって俺は四歳児なのだから。

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